BMWが誇る「3シリーズ」が改良を受けた。新型の中で特に注目を集めているのがPHVだ。今回、モータージャーナリストの竹花寿実(たけはな・としみ)氏が2日間試乗し、その実力を徹底チェックした!!
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■最大56.4㎞のEV走行が可能
竹花 BMW「3シリーズ」の新型に、ようやく試乗することができました。
――昨年9月に導入されたマイナーチェンジモデルですね。
竹花 そうです。「G20」と呼ばれる現行の7代目は2019年デビューなので、4年目での改良です。今回は内外装のデザインがアップデートされたほか、インパネに横長のカーブド・ディスプレイを採用しました。
――そもそも3シリーズってどんなモデル?
竹花 BMWの中核を担うミッドサイズセダン/ステーションワゴンです。初代は今から半世紀近く前の1975年に登場し、2019年の時点で世界累計は1500万台以上。現行モデルは改良前までに110万台以上が売れたそうなので1600万台超ですね。
――へぇー。
竹花 ドイツ車らしい質実剛健で上質な仕立てと、優れた実用性、そしてBMWの「駆け抜ける喜び」を体現したスポーティな走りが人気の秘密です。日本でも、SUV人気が高まる中、今でも3シリーズはBMWブランドで最も売れています。
――今回試乗したクルマは?
竹花 PHV(プラグインハイブリッド)です。3シリーズにはガソリンとディーゼルのほか、セダンのみにPHVが設定されているのですが、今回はその330e Mスポーツというクルマに試乗しました。
――いつ登場したクルマ?
竹花 3シリーズのPHVは、先代F30に2016年に追加されたのが最初です。現行モデルには発売当初から設定されています。BMWは基本的にさまざまなパワーソースの選択肢を用意する「パワー・オブ・チョイス」の方針を継続しながら、CO2削減を進めているんです。
――なるほど。で、今回は2日間試乗したんですよね?
竹花 はい。合計で300㎞ほど走ってみたのですが、とても上質感にあふれた乗り味で、非常に完成度の高いクルマという印象を受けました。
――具体的には?
竹花 330eは、ガソリン車の320iと同じ184PSと300Nmを発揮する2リットル直4ターボエンジンと、109PSと250Nmを発揮する電気モーター、これに8速ATを組み合わせ、トータルでは292PSと420Nmという性能を実現しています。
車両重量は1820㎏と、320iより270㎏も重いのですが、発進時からモーターが力強くクルマを押し出してくれるので加速はとてもパワフルです。
――ほお。
竹花 またBMWのこだわりである前後重量配分50:50を実現した後輪駆動モデルということもあって、ハンドリングも俊敏で正確。先代の330eは、若干重心が高い感覚があり、なんだかいまひとつな印象があったのですが、最新バージョンはそういうネガティブさは感じられません。
――乗り心地は?
竹花 いいですよ。Mスポーツは足回りが引き締められているのですが、硬さの中にもしなやかさがある絶妙なセッティングで、まったく不快感がない。5シリーズに負けない快適性が感じられます。
――PHVであることのメリットは?
竹花 最大56.4㎞のEV走行が可能な点です。自宅で充電できる人なら、日常の移動は、ほぼエンジンを回す必要がありません。最高時速140キロまでEVモードで走れ、高速道路も問題ありません。
――逆にデメリットは?
竹花 トランク下部に12kWh(グロス)のリチウムイオンバッテリーを搭載している関係で、トランク容量が375リットルと、320iの480リットルより105リットル小さい点です。ただしゴルフバッグは入るよう工夫されています。
――どんな人にオススメ?
竹花 自宅で普通充電ができる人なら、このPHVを選ぶべきだと思います。価格は710万円と少々お高いですが、国や自治体からの補助金や減税措置で、100万円ほど安くなります。すると、320i(646万円)より安い。
さらにベーシックな318i Mスポーツ(604万円)とほぼ変わらない金額で購入できてしまう。330eはコストパフォーマンスもバツグンなのです!
●竹花寿実(たけはな・としみ)
モータージャーナリスト。自動車雑誌の編集者を経て2010年に渡独。ドイツ語を駆使し、現地でもモータージャーナリストとして活躍。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員