2001年にデビューしたホンダの2代目ステップワゴン。売れ筋グレードの価格は209万8000円 2001年にデビューしたホンダの2代目ステップワゴン。売れ筋グレードの価格は209万8000円
新型コロナウイルスの感染拡大や、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、世界的に資材や資源が高騰。その関係で国産・輸入車問わず新車の値上げラッシュが止まらない。だが、そもそもの話をすると、国産の新車はこの20年で1.2~1.5倍近くも爆上がり。一部では輸入車との価格差がなくなってきている。では、なぜそうなったのか? カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が特濃解説する。

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近年の日本車の価格は上昇傾向にある。20年前の2003年を振り返ると、2代目ホンダステップワゴンで売れ筋になる「I」が、209万8000円で販売されていた。当時の消費税(5%)を加えると220万2900円だ。

昨年フルチェンしたホンダ6代目ステップワゴン。価格は305万3600~391万2700円 昨年フルチェンしたホンダ6代目ステップワゴン。価格は305万3600~391万2700円
それが6代目の現行ステップワゴンは、価格が最も安い1.5Lターボのエアでも消費税(10%)を含めて305万3600円になる。20年前の220万2900円に比べると、現行型の価格は1.4倍だ。

トヨタプリウスは03年に2代目にフルモデルチェンジされた。この時の価格は最上級のGツーリングセレクションでも257万円で、消費税(5%)を加えると269万8500円であった。

現行プリウスは5代目で、消費税(10%)を含めると、売れ筋になる中級グレードの「G」が320万円だ。2代目の最上級グレードと比べても1.2倍に値上げされた。

2003年に2代目にフルモデルチェンジを受けたトヨタのプリウス。最上級グレードの価格は257万円 2003年に2代目にフルモデルチェンジを受けたトヨタのプリウス。最上級グレードの価格は257万円 今年1月10日発売となった5代目プリウス。売れに売れている。価格は320万~460万円 今年1月10日発売となった5代目プリウス。売れに売れている。価格は320万~460万円
このように15~20年前と現在で、同じ位置付けの車種同士で価格を比べると、おおむね1.2~1.5倍に値上げされている。大半の日本車にこの値上げ率が当てはまる。

その一方で日本の平均給与所得は、1990年代の中盤から後半をピークに下がっている。2013年以降は回復傾向にあるが、それでも2023年4月時点でピークの頃には戻っていない。

つまり車両価格は値上げされ、平均給与所得は減った。そうなると新車に乗り替えるとき、車両価格を高めることは困難で、以前と同程度の値上げされた車種やグレードも買えない。乗り替える度にクルマの大きさやエンジンの排気量を小さく抑える必要があり、必然的に「ダウンサイジング」のトレンドが生まれた。

ちなみにファミリーユーザーは、新車を買う時に価格を200万円と想定することが多い。20年前ならミニバンのステップワゴンを買えたが、今は軽自動車のホンダのスーパーハイトワゴン「N‐BOX」になる。ちなみに2022年の国内新車市場では、軽自動車の比率が39%に高まり、最多販売車種は唯一の20万台超えを飾ったN-BOXであった。

では、なぜ日本車は値上げされたのか? 一番大きな理由は、衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備と、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなどの運転支援機能が充実したことだ。

このふたつの装備は普及期には10万円前後で用意されたが、その価格を実現できたのは、各種センサーの装着などそれ以前からの積み重ねがあったからだ。単純に価格換算すれば20万円に相当する。サイド&カーテンエアバッグも、同様に10万円前後の装備と考えて良い。

このほかディスプレイオーディオなど、各種の情報表示や通信機能の装着、低燃費技術の採用なども価格を20万円ほど押し上げた。以上を合計すれば概算で50万円だ。さらに消費税も5%から8%、10%へと増額された。

仮に200万円のクルマが各種装備の上乗せで50万円、増税で5万円上乗せされて255万円になると、価格は1.3倍に高まる。近年の値上げはこのように実施された。

2021年6月に日本上陸となったフォルクスワーゲンの8代目ゴルフ。価格は315万9000~639万8000円 2021年6月に日本上陸となったフォルクスワーゲンの8代目ゴルフ。価格は315万9000~639万8000円
ただし、それでも日本車の価格は高い。以前はフォルクスワーゲン・ゴルフなどを含めて輸入車は割高、日本車は割安といわれたが、今はゴルフeTSIアクティブが実用装備を充実させて338万9000円で販売されている。サイズの近いマツダ3ファストバックXDプロアクティブツーリングセレクションは、クリーンディーゼルターボ搭載車ではあるが、価格が310万5300円と近い。

直近では輸入車の値上げが続くが、過去20~30年の推移で見ると、輸入車は日本市場に食い込むべく機能を充実させながら価格を割安に抑えた。その一方で日本車は値上げされたから、双方の価格が接近した。

4月6日に、マイチェンしたマツダの「マツダ3」。発売は同年6月上旬の予定。価格は228万8000~386万6500円 4月6日に、マイチェンしたマツダの「マツダ3」。発売は同年6月上旬の予定。価格は228万8000~386万6500円
国産車は価格を下げて欲しいが、せっかく装着の進んだ安全装備を省くのは間違い。その代わりディスプレイオーディオなどの快適装備を見直す方法はある。

例えば、現行プリウスに1.8Lエンジンを搭載するXは、ディスプレイオーディオなどをカットして価格を275万円に抑えた。省かれた装備が多く、320万円の「G」に比べてお買い得とはいえないが、価格自体は安く抑えている。

現行モデルとなるスズキの2代目ハスラーは2019年にデビュー。価格は138万7100~183万3700円 現行モデルとなるスズキの2代目ハスラーは2019年にデビュー。価格は138万7100~183万3700円
今はクルマの価格が高騰して、選びにくくなった。安全に関係しない装備をシンプルにして、なおかつ外観や色彩をオシャレに仕上げた仕様を用意すべきだ。好例がスズキハスラーハイブリッドG(138万7100円)。アルミホイールは装着されずスチール製だが、外装色によってはスチールホイールがホワイトにペイントされ見栄えを際立たせている。

自動車メーカー各社は価格を高めず、このように魅力を向上させる工夫をすべきだ。

●渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう) 
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務める。〝新車購入の神さま〟。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員