大阪を皮切りに、東京、名古屋の順番で開催された日本最大のバイク見本市「モーターサイクルショー」。モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が各地で徹底チェック。激推しモデルをドバッと大放出する!
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■24年ぶりに復活!〝ヨンヒャク4発〟
今年のモーターサイクルショーはチョー激アツであった。 大阪、東京、名古屋の順で開催され、どの会場にもファンが殺到!
各会場3日間の開催で、大阪の来場者数は前年比222.4%の計7万5138人。続く東京は前年比112.7%の計13万9100人。今月9日に閉幕した名古屋は前年比117%の計4万2355人をマーク。3会場合わせて25万人以上が来場。まさに空前のバイクブームを示す入場者数だ。
では、この大熱狂の背景には何があるのか? それはバイクメーカー各社が仕掛けた鬼のニューモデルラッシュが挙げられる。要は新型マシンの世界初公開やニッポン初披露を大連発したのだ。
というわけで今回、現地を駆けずり回り徹底チェックした青木が、絶対買うべき5台を勝手に厳選した。
栄えある第1位はカワサキのニンジャZX‐4RR。こんなにもワクワクするヨンヒャク4発の登場は久々だ。会場では、「このマシンをナマで見るためだけに来た!」という人も少なくなかった。
なぜこんなにも注目を浴びているのか? 実はホンダのCB400スーパーフォア/スーパーボルドールが昨年10月をもって生産終了。中免(普通二輪免許)の上限排気量であり、「日本のスタンダード」と言われるほど人気のあった400㏄4気筒モデルが絶滅となる事態が起きていたのだ。
では、どうして絶滅したのか? 実は日本固有の排気量帯であるヨンヒャク4発は膨大なコストがかかるのだ。
しかし、そこは〝漢〟カワサキである。ヨンヒャク4発を日本市場に完全復活させるどころか、最高出力80PSの超ド級エンジンを搭載! ちなみにカワサキのヨンヒャク4発は、1999年に出たZXR400以来24年ぶりとなる。
アッパーカウル真正面に開いたエアダクトから走行風を真っすぐに取り込み加圧するラムエアインテークシステムを採用した399㏄水冷並列4気筒DOHCエンジンは、軽量コンパクトな車体に積まれ、シャシーもニンジャZX‐25Rと比較し、全長10㎜、全幅とシート高を15㎜、車体重量を4㎏しか増やしていないなど完成度の高さには目を見張るものがある。
今秋、国内導入が見込まれ、現時点で価格は未定だが、カワサキの正規販売店には発表と同時に問い合わせが殺到中。
実はカワサキの新型はニンジャZX‐4RRだけではない。ヨンヒャクにもう1台注目のマシンがある。大阪でいきなり世界初公開した並列2気筒エンジンを搭載するニューモデル「エリミネーター/エリミネーターSE」。しかも、そのまま発売も発表したから驚きを隠せない。もちろん、2位はコイツで決まり!
ちなみにエリミネーターは80年代に初代が登場し、根強い人気を誇ったクルーザーモデル。発表と同時に発売された新型の上級仕様であるエリミネーターSEはヘッドライトカウルやGPS対応型ドライブレコーダー、USBタイプC電源ソケットを搭載し、ツートンのシートレザーを使用する。
流麗なボディラインと堂々としたロー&ロングボディで、735㎜という低いシート高を実現、〝両足ベッタリ〟の安心感も大きな武器だ。今年カワサキが日本のヨンヒャクを生き返らせる!
■スズキ、ホンダ、ヤマハの新型もスゴい
3位はスズキVストローム800DE。スズキが誇る世界累計44万台を販売するアドベンチャーモデルがVストロームシリーズである。
だが、〝800〟はこれまでなかった。この中途半端な排気量帯はミドルクラスとも呼ばれ、ファンからは「パワーを持て余すことなく、車体も大きすぎず、実にちょうどいい!」と評価が急上昇中。スズキVストロームはVツインエンジン搭載の1050と650をラインナップするが、250に次ぐパラレルツインを新開発し、選択肢を増やした。
このアドベンチャーのミドルクラスは、今最も熱いクラスのひとつで、競合他社も新型を次々に出しているのだ。しかし、この激戦区を制する強みが、Vストローム800DEにはある。
ダート走行での走破性を向上させるべくフロントホイールを21インチにし、ワイヤースポークホイールにセミブロックタイヤを履く。そして、シリーズの中で最も長いサスペンションストローク量、最も高い最低地上高を確保した。ダートも突き進む長旅の相棒となる超本格派の登場で、バイク乗りたちの冒険心をびんびんに刺激するのは確実である。
4位もミドルアドベンチャーを推したい。ホンダXL750トランザルプだ。車名は〝アルプス越え〟を意味し、オールラウンドで雄大なスケールの長距離ツーリングを快適に楽しめるモデルだが、ナナハンでの復活となった。
初代XL600Vトランザルプは86年に登場し、未舗装路も走れるデュアルパーパスでありながら高速走行時の快適性を高める大型フェアリングを備えていた。それは新型でも健在で、ウインドプロテクションと空力性能を高次元でバランスさせた。両サイドから包み込むシュラウドを組み合わせ、風の巻き込みを減らしている。
開発責任者の佐藤方哉氏は、ホンダ・スーパースポーツの最高峰CBR1000RRでも陣頭指揮を執ったスゴ腕。アドベンチャーといえばタフな冒険ライダー向けだが、「気楽に乗れる扱いやすさ」も加味し、「開発コンセプトを日常から世界一周まで、どこまでも行けるジャストサイズオールラウンダーとした」と教えてくれた。
ハンドル切れ角42度、最小円半径2.6mと小回りが利くようにし、細い路地や林道でも気軽にUターンできる車格と取り回し性を実現。熊本製作所内製のNi‐SiCメッキなどスーパースポーツやF1由来の技術を用いた圧巻の造り込みである。
5位と次点はヤマハのXSR125とMT-125に決めた。原付二種クラスはブームと呼ばれるほどの大人気だが、実はヤマハの国内ラインナップはスクーターだけでミッション付きは絶滅していた。今回、待望の復活となったわけだが、その顔ぶれがまた強力だ。
XSRはネオクラシックと呼ばれ、レトロな外観と先進技術のパフォーマンスが融合した新ジャンルを代表するシリーズ。900や700など兄貴分たちを、80年代のRZやTZRなどの往年のカラーでよみがえらせるなどして話題を呼んだ。その末弟となる125は欧州やアジア圏で先行販売されていたが、ついにニッポン導入となる。
筋肉質なボディで、走りも見た目どおり力強いMT‐125も海外向けに存在していた。欧州版ではトラクションコントロールを搭載し、カラー液晶メーターがスマホに連動するなど充実の装備を誇る。国内向けの詳細は未定だが、今年大注目の1台である!
●青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営