新型レクサスLM。顔面はゴージャス感と迫力を兼ね備えたド派手なスタイリングに仕上がっている。どこを走っていても注目を浴びること請け合いだ新型レクサスLM。顔面はゴージャス感と迫力を兼ね備えたド派手なスタイリングに仕上がっている。どこを走っていても注目を浴びること請け合いだ

4月18日、トヨタの高級ブランドであるレクサスが、中国で開催された「上海モーターショー」で、高級ミニバン2代目LMのプロトタイプを世界初公開し、ファンの度肝を抜いた。この衝撃のミニバンの全貌とは? 現地で徹底取材した自動車研究家の山本シンヤ氏がチョー濃厚解説する!

■まるで"走るビジネスクラス"

山本 トヨタの高級ブランドであるレクサスが、上海モーターショーで2代目となるフラッグシップMPV(マルチ・パーパス・ビークル)「LM」を発表しました!

――MPVって......要するにミニバンのことですか?

山本 世界的にはMPVと呼ばれていますが、「高級な」という形容詞がつくと、選択肢は非常に少ないです。ちなみに車名のLMは"ラグジュアリームーバー"が由来です。

――そんなLMの歴史は?

山本 LMはレクサスブランド初のMPVとして2019年に初代が登場しました。ただ、中国や一部アジア地域のみでの限定発売で、残念ながら日本での販売は行なわれていません。

――でも、日本でたまにLMが走っているのを見かけますよ?

山本 アレのほとんどはトヨタのアルファード/ヴェルファイアにレクサスLMのパーツを装着した"レクサスLM仕様"です(笑)。ただ、中には本物を逆輸入しているツワモノもいるとか。ちなみに今回発表された2代目は、今秋の日本導入が公式アナウンスされています。

――ファン感涙ですね!

山本 ちなみに2代目LMは3列シートの6/7人乗り仕様と2列シートの4人乗り仕様をラインナップ。日本にはまず4人乗りから導入されるそうです。

LMは今秋頃から日本市場で販売を開始する予定。日本のレクサスブランドでミニバンが正規販売されるのは史上初となる。注文殺到の予感LMは今秋頃から日本市場で販売を開始する予定。日本のレクサスブランドでミニバンが正規販売されるのは史上初となる。注文殺到の予感

ボディサイズは全長5215㎜×全幅1890㎜×全高1955㎜。ちなみに初代より全長を85㎜、全幅を40㎜拡大したというボディサイズは全長5215㎜×全幅1890㎜×全高1955㎜。ちなみに初代より全長を85㎜、全幅を40㎜拡大したという

お披露目されたプロトタイプのリアには「LM500h」のエンブレムが輝く。もちろん、リアゲートは電動で開閉するお披露目されたプロトタイプのリアには「LM500h」のエンブレムが輝く。もちろん、リアゲートは電動で開閉する

――しかし、2列目はゴージャスですねぇ~!

山本 まさに"走るビジネスクラス"といった感じで、シートヒーター/クーラーはもちろん、アームレストやオットマン、さらに格納式のテーブルまで用意されています。

――スゲェー。

山本 ちなみに4人乗り仕様は1列目と2列目に隔壁が設けられ、そこには48インチ(!)の大型ワイドディスプレーを装備。しかも、ディスプレーは左右別々の映像を流せる優れモノ。ちなみにシートにはスマホのようなコントローラーがあり、それで映像や空調などが調整できます。

48インチ大型ワイドディスプレーを備えたパーティションにより前席と後席が区切られ、後席は完全個室と化す48インチ大型ワイドディスプレーを備えたパーティションにより前席と後席が区切られ、後席は完全個室と化す

コックピットもゴージャスのひと言。先進安全装備も抜かりなく、最新の「レクサスセーフティシステム+」を採用コックピットもゴージャスのひと言。先進安全装備も抜かりなく、最新の「レクサスセーフティシステム+」を採用

――至れり尽くせり!

山本 飲み物を冷やせる冷蔵庫もありますし、オーディオはマークレビンソンのプレミアムシステム。当然、乗員にいい音を聴かせるため、静粛性も磨き抜かれているようです。ただインテリアも注目ですが、2代目LMの最大のポイントは、その走りです。

――ちなみに初代の走りはどうだったんですか?

山本 言葉は悪いんですが、初代LMは中国からのリクエストに早急に対応することが命題だったので、パワートレインやフットワークはトヨタのアルファード/ヴェルファイアとほぼ同じ。そのため、特に動力性能に対する指摘はかなりあったと聞きます。

初代よりオットマンの伸縮量を延長。加えてアームレストとオットマンにシートヒーターをレクサス初採用初代よりオットマンの伸縮量を延長。加えてアームレストとオットマンにシートヒーターをレクサス初採用

後部座席の照明や48インチのディスプレーなどの操作は、このスマホタイプのコントローラーで行なうという後部座席の照明や48インチのディスプレーなどの操作は、このスマホタイプのコントローラーで行なうという

――具体的には?

山本 初代はHEV(ハイブリッド)のLM300hのみの設定でしたが、アルファード/ヴェルファイアでもギリギリの動力性能だったのに豪華装備のプラスで重量が超絶アップ......。かなり厳しい状況だったようです。

――では、2代目は?

山本 最上級のLM500hはRX譲りの2.4Lターボ+パラレルハイブリッド+eアクスルのダイレクト4を搭載しているので、動力性能が格段に上がっているのは間違いないと思われます。

――シャシー周りの進化はいかがです?

山本 今回は最新のTNGAを採用しています。形式的にはGA-Kプラットフォームですが、それはフロント部分のみ。後部に関してはMPV専用設計のGA-Kとなっており、リアサスペンションはダブルウィッシュボーン式です。

さらにダンパーはレクサス初採用となる周波数感応バルブ付きAVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンションシステム)でより緻密な制御が可能になったとか。

■マスタードライバーがその走りに太鼓判

――現地では2代目LMの開発責任者を直撃したとか?

山本 はい。開発責任者の横尾貴己(よこお・たかみ)氏に話を聞きました。実は横尾氏はレクサスLXの開発責任者も兼務するエンジニアです。ちなみに私と同世代で、若い開発責任者です。

――2代目の特徴は?

山本 立ち位置の変化でしょうね。横尾氏は「初代は中国のお客さまの声から生まれたモデルでしたが、その価値はライバルモデルの出現を含めて、十分認めていただいたと思っています。そんな評価を聞いたほかの地域からのリクエストも多く、新型はグローバルモデルとして開発を進めました」と語っています。

――世界に打って出ると。ほかは?

山本 初代は"アルファードのレクサス版"というイメージが強かったんですが、横尾氏は「新型は新世代レクサスの一員であることをより意識しました。初代で評価された部分を伸ばすだけではなく、LMでしか体験できない新たな価値の提供も目指しました。それはデザインと走りです」と胸を張っていました。

今秋、日本市場に導入される予定の4人乗り仕様の室内で、2代目LMの開発責任者である横尾氏(左)をインタビューする山本氏(右)今秋、日本市場に導入される予定の4人乗り仕様の室内で、2代目LMの開発責任者である横尾氏(左)をインタビューする山本氏(右)

――しかし、デザインと走りをMPVで高めるのはハードルが高そうな気がします。

山本 そのとおり。MPVはデザイン/走り共に不利なボディ形状ともいわれますが、それを理由にすることなく"レクサスらしさ"の実現のためにさまざまな挑戦が行なわれたと聞いています。

――パワートレインは?

山本 全車HEVで電動4WD仕様です。前述したとおり、LM500hが2.4Lターボ+ダイレクト4です。一方、LM350hは2.5L+THSⅡを搭載。横尾氏いわく、「後部座席だけでなく、ぜひ大切な人を乗せてハンドルを握ってほしい」と。

――走りを予想すると?

山本 ヒントはマスタードライバーの豊田章男氏の言葉。当然、2代目LMの評価も行なっており、ひと言「これはスゴい!」と太鼓判を押したそうです。ちなみに豊田氏はトヨタ・ヴェルファイアを愛用するユーザーですが、今回の評価は気になるところですね。

――なるほど。

山本 ちなみに横尾氏は「発売まで時間があるので、最後まで造り込みの手は止めない」とも語っていました。

――ズバリ、2代目LMの価格予想をお願いします!

山本 フラッグシップのLSが1078万~1796万円ですからね。当然、1000万円台になるのではないかと。

――2代目LMは飛ぶように売れる空気が漂っています。

山本 もちろん、値段が高いので誰でも気軽に買えるクルマではありませんが、予想を超える人気になるのは間違いないでしょうね。恐らく、初期モデルは争奪戦になると思いますので、気になる人は早めに動いたほうがいいかと。

ただ、個人的にはレクサスのフラッグシップであるLSの影がより薄くなってしまうことが心配(汗)。LMに負けず頑張ってほしいですね。

●山本シンヤ(Shinya YAMAMOTO)
自動車研究家。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ワールド・カー・アワード選考委員。YouTubeチャンネル『自動車研究家 山本シンヤの「現地現物」』を運営