4月12、13日の2日間、神奈川県中郡大磯町にある「大磯ロングビーチ」の駐車場で開催された第8回JAIA輸入二輪車試乗会に、モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が特攻! 徹底試乗し、推しの7台を勝手に選んだ!!
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■売れに売れている輸入バイク!
4月に開催された第8回JAIA(日本自動車輸入組合)輸入二輪車試乗会で、海外メーカーのバイクを一気乗りしてきた!
海外ブランドといえば、かつては手の届かない高嶺(たかね)の花で、憧れの存在でしかなかったが、バイクブームの波に乗り、新規登録台数が4年連続で前年比を上回る絶好調ぶり。2022年は約14%増の2万6271台となり、2万5800代だった2008年をしのぎ、過去最高に。
数字が示すとおり、海外ブランドのニューモデルも大豊作! 試乗会でも注目の新型が目白押しであった。昨年に続き今年も、青木が独断と偏見のみで買いの7台を選んだので、ご紹介しよう!
まず1位は、輸入バイクのシェアトップを走るハーレーダビッドソンの新型「ナイトスタースペシャル」。1903年創業のハーレーダビッドソンは今年120周年の節目を迎え、ナイトスターは伝統を受け継ぎながらも新しく生まれ変わろうとしている。そんな象徴的なニューモデルだ。
V型2気筒を継承しつつも空冷だったエンジンを水冷化し、DOHCや可変バルブ機構、ダウンドラフト吸気といった最新技術を導入。
1957年以来の超ロングセラー〝スポーツスター〟の次世代モデルとして登場。先代の排気量が883㏄と1200㏄だったように新型スポーツもまた、975㏄の「ナイトスタースペシャル」「ナイトスター」と、1252㏄の「スポーツスターS」という2本立てのラインナップになっている。
スポーツスターよりおよそ3㎏軽く、取り回しや引き起こしがより楽に、走りも俊敏なことが乗るとすぐにわかる。燃料タンクはシート下に配置され、運動性能を向上するマスの集中化(重量物をできるだけバイクの重心付近に集中させること)に成功。
ダミーカバーのエンブレムは70年代のレインボーカラーを再現。一方でスマホとBluetoothでリンクし、メーターディスプレーにナビアプリを表示させることができるなど、伝統と革新を見事なまでに融合している。
ちなみにハーレーダビッドソンジャパンの野田一夫社長を直撃すると、こんな話が。
「22年新規登録台数が前年比32.8%アップの1万199台に達し、社内でもハーレーブームが来ているんじゃないかと話しています。元K-1世界チャンピオンの魔裟斗さんら有名人からも問い合わせがあり、女性ユーザーも増えて〝ハーレー女子〟がバズワードになっているんです」
2位は創業100周年を迎えたBMWの渾身作「M1000R」。〝M〟の名は最新のレーステクノロジーやノウハウを惜しみなくフィードバックした高性能スポーツモデルを意味し、これ以上は望めない究極の装備が自慢。
スーパーバイク世界選手権を走る「S1000RR」譲りのエンジンは210PSもの最高出力を発揮し、ダウンフォースを生み出すレース由来の最先端パーツ「ウイングレット」まで備わっているから驚きを隠せない。
ボディパーツは至る所に軽量高剛性なカーボンが採用され、レーシングマシンのように無駄と妥協がない。化け物すぎて手に負えないかといえばノー。しなやかにサスペンションが動き、スロットルレスポンスも過激すぎない。
前傾のきつくないアップライトな乗車姿勢で、サーキットでなくともパワフルかつ軽快な走りが堪能できるよう巧みに味つけされているから舌を巻く。フレンドリーさを含め、〝最強ネイキッド〟と言って間違いないだろう。
ドゥカティ初の本格オフローダー「デザートX」が3位! スーパースポーツやサーキットで名をはせてきたイタリアの名門が、ダート性能を重視したフロント21インチホイールを履くアドベンチャーモデルを新開発し、新しいファンを獲得している。
トラス構造(部材で三角形を構成したもの)のフレームに937㏄の水冷Lツインエンジンを積み、ストロークの長いサスペンションで悪路も越えていける。オンロードでも旋回力やクルージング性能に長たけ、ロングライドも得意。燃料を8リットル追加搭載できるサブタンクをオプション設定!
■トライアンフが放つ公道マシンの実力は?
4位は「ストリートトリプル765RS」。何を隠そうトライアンフはロードレース世界選手権Moto2で唯一のエンジンサプライヤーで、ストリートトリプルのDOHC4バルブ3気筒をベースにレース専用チューンを施したパワーユニットが各チームに供給されている。信頼性と高性能は折り紙つきだ。
公道向けのネイキッドスポーツでは、130PSというハイスペックながらツーリングも楽しめるよう扱いやすさも兼ね備える。
飛び出す2眼ライトが独創的なフロントマスクを演出するだけなく、フレームマウントによってステアリングフィールを軽快にさせているのも見逃せない。
5位はロイヤルエンフィールドで、普通二輪免許でも乗れる「クラシック350」を推したい。ブリティッシュバイクが全盛期だった1960年代にタイムスリップしたかのようなオーソドックスなスタイル。
味わい深く心地良い単気筒エンジンは「ただ走っているだけで楽しい」というオートバイならではのシンプルな魅力を再確認させてもらえる。
6位はインディアンモーターサイクルの「スポーツチーフ」。V字型に49度で配置した2気筒エンジンは1890㏄もの排気量を持つOHV空冷2バルブ。最大162Nmのビッグトルクを発生する「サンダーストローク116」を心臓部に、300㎏を超える車体をパワフルに走らせるのは痛快としか言いようがない。
倒立式フロントフォークやラジアルマウントキャリパーといったスポーツバイク顔負けのパーツで足回りが徹底強化され、アグレッシブな走りが味わえるのは、新ジャンル「パフォーマンスクルーザー」の真骨頂だ!
7位はガスガス「SM700」。オフローダーに前後17インチのロードタイヤを履かせ、アスファルトの上もガンガン走るのが流行のモタード。その身のこなしの軽さは病みつきになるほどの〝裏ワザ〟的楽しさがある。切れ味鋭いコーナリング性能とダッシュ力はすさまじいほどで、戦闘力はズバぬけているぞ!
●青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営