カワサキ「ノスリスe」(フル電動仕様)価格:43万100円、6月中発売予定。道路交通法では普通自動車扱い。道路運送車両法上では第一種原動機付自転車扱い。フル電動でミニカー登録となる。歩道や自転車専用道の走行は禁止 カワサキ「ノスリスe」(フル電動仕様)価格:43万100円、6月中発売予定。道路交通法では普通自動車扱い。道路運送車両法上では第一種原動機付自転車扱い。フル電動でミニカー登録となる。歩道や自転車専用道の走行は禁止

バイクメーカーのカワサキが放った電動三輪ビークル「ノスリス」シリーズが話題を呼んでいる。このユニークな電動三輪ビークルの出来は? 全モデルに試乗したモーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が徹底解説する!

■三輪すべてにディスクブレーキ!

カワサキが今月中に発売予定の電動三輪ビークル「ノスリスe(イー)」に乗った! 右手の親指でハンドル右側のスロットルレバーを押し込めば進み、最高速度は35キロ。満充電で47㎞ほど走行できる。

ペダルもついていて、脚力によって発進させてからモーターの駆動力を使うという手もある。また、最高速度を20キロに抑えるモードも備えている。

フロント二輪は、左右輪が独立して上下動するため、片輪が段差に乗り上げても車体は安定を保ったままだ。そのため路面の傾斜や凹凸の影響を受けにくく、転倒の不安がないだけでなく、カワサキがモーターサイクルで長年培った設計技術が活用され、車体を傾けると曲がりやすくなる独自のステアリング機構を新開発! とにかく小回りが利く。

ノスリスシリーズは、段差や凹凸路でも安定性を誇る特許取得済みのカワサキ独自の「2輪ステア機構」を採用 ノスリスシリーズは、段差や凹凸路でも安定性を誇る特許取得済みのカワサキ独自の「2輪ステア機構」を採用

左側の電源ボタンを長押しでシステムを起動。メーターが表示される。発進はハンドル右側のレバーを押し込む 左側の電源ボタンを長押しでシステムを起動。メーターが表示される。発進はハンドル右側のレバーを押し込む

バッテリー容量は0.7kWh。公道走行の場合は自動車損害賠償責任保険への加入が法令で定められている バッテリー容量は0.7kWh。公道走行の場合は自動車損害賠償責任保険への加入が法令で定められている

ハンドル操作と車体の動きがシンクロする自然な操縦性を実現しつつ、傾く角度が限界を超えないようストッパーで制御され、傾斜地でも自立状態がキープできるロック機構を備える。レベチの完成度だ。ノスリスの担当者は言う。

「カワサキのテストライダーが操縦安定性テストを担当。気軽に乗れる二輪と、安定性や積載力のある三輪の良いところ、両方を兼ね備えつつ、自転車に乗れるなら誰もがすぐ操れる手軽さと楽しさを実現しています。公共交通機関でのアクセスが容易ではない地域での移動、高齢者など多様なニーズに応えられます」

ちなみにフル電動のノスリスeはミニカー登録。公道で運転するにはクルマの普通自動車免許(AT限定可)が必要。必ず車道を通行しなければならない。法律上はヘルメット不要だが、アオキ的には安全のため着用を推奨する!

お手軽さを求めるなら、電動アシスト自転車仕様の「ノスリス」がある。こちらは5月20日に発売されたモデルだ。そして、7月頃には約120Lの大容量積載スペースを誇る「ノスリスカーゴ」もラインナップに追加される。アオキはいずれにも試乗してみたが、走り出すと電動アシストが補助し、スイスイ楽チン。

カワサキ「ノスリス」(電動アシスト自転車仕様)価格:36万3000円、5月20日発売。三輪だが電動アシストの力もありこぎ出しは軽い。カーブのコツは曲がりたい方向へハンドルをちゃんと切り、前輪を傾けて走らせること カワサキ「ノスリス」(電動アシスト自転車仕様)価格:36万3000円、5月20日発売。三輪だが電動アシストの力もありこぎ出しは軽い。カーブのコツは曲がりたい方向へハンドルをちゃんと切り、前輪を傾けて走らせること

ノスリスカーゴには25㎏のオモリを積載スペースに載せて走ったが、ハンドリングの軽快性やペダルをこぐ力がほとんど変わらず驚いた。なぜ重い荷物を載せても安定性が高いのか?

その理由は、ステアリング機構にカゴが備わる自転車とは異なり、車体のフレーム側にラゲッジスペースを設け、ハンドリングに影響を及ぼさない構造を採用しているからだ。ちなみにカーゴの用途は?

「すでにノスリスカーゴは日本郵便の集配作業で実証実験を開始しています」(担当者)

カワサキ「ノスリスカーゴ」(電動アシスト自転車仕様)価格:41万4700円、7月発売予定。上のノスリスと同じ電動アシスト自転車で機能面は同じだが、荷物の運搬を目的にした設計が施され、専用の骨格を採用しているという カワサキ「ノスリスカーゴ」(電動アシスト自転車仕様)価格:41万4700円、7月発売予定。上のノスリスと同じ電動アシスト自転車で機能面は同じだが、荷物の運搬を目的にした設計が施され、専用の骨格を採用しているという

3車種とも手作業で組み立てられ、実車を目の当たりにすると、精巧なステアリング機構もハンパないが、高剛性としなやかさを両立したフレームは機能美にあふれていた。その背景を探ると、実はカワサキが誇るフラッグシップツアラー「ニンジャH2」のエンジニアが設計開発に携わっているという。なるほどである。

大径20インチタイヤを履く三輪すべてにはディスクブレーキを採用し、車体には大型バイクが持つ高級感がある。これらを踏まえて考えると、冗談抜きにリーズナブル。

もともとは「女性や高齢者にも喜んでもらえるように」という川崎重工の社内公募制度から生まれたノスリスのプロジェクト。2021年にクラウドファンディングサイトで限定100台を販売すると、即日完売の大反響。正直、爆売れの予感しかない。

ただ、バイクファンとして考えるのは三輪モーターサイクルへの応用、さらにはカワサキではまだ市販化のない電動二輪バイクへの発展だ。

これについて担当者はノーコメントだったが、カワサキは昨年11月に電動バイクをイタリア・ミラノモーターサイクルショーで披露しているし、カーボンニュートラル実現に向けた方針として、今年中にEVモーターサイクル2車種の発売を目指すと発表済み。

「もしやノスリスはその布石か?」とアオキは勝手にワクワクするのであった。

●青木タカオ(あおき・たかお)
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。
YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営