スマホなどで中古車を探す際、事故歴や修復歴を含む、販売に不利になる情報を提示していない店は避けたほうが無難 スマホなどで中古車を探す際、事故歴や修復歴を含む、販売に不利になる情報を提示していない店は避けたほうが無難

まだまだ新車の納期遅延が解消されていない中、すぐに乗れる上に価格の安い中古車に依然として注目が集まっている。だが最近、中古車チェーン店による不正が相次いで発覚!

では、そんな極悪店に引っかからないためにはどうすればいい? カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏に解説してもらった。

■車内チェックをさせない店は要注意!

――大手中古車チェーン店が引き起こした、車検をはじめとした不正行為が話題を集めています。極悪な中古車店はほかにもあるんスか?

渡辺 まず大前提として、中古車は新車とは違って、車両ごとにコンディションが大きく異なります。その上でお店の質に関してはピンキリで、ヒドい店は本当にヒドい。某中古車店のオーナーもこう証言しています。

「複数の個体の部品を使い一台に造り直した"ニコイチ"を磨きに磨いて、それを見抜けない客に売りつける店は少なからずある。また、中古車店を開業するには古物商許可の申請が必要だが、それを持たない闇業者もおり、扱っているクルマは"盗難車"や"金融車"など、いわくつきのクルマばかり」

――金融車って?

渡辺 大方の場合、クルマをローンで購入した際、ローン返済中のクルマの所有権は販売会社やローン会社にあります。クルマを買った本人は使用者になり、仮に返済が滞ったら販売会社やローン会社にクルマを差し押さえられてしまう。

ところが、なんらかの理由で多重債務を抱えた人は、喉から手が出るほど現金が欲しい。そこで、ローン会社に黙って闇業者にクルマを売ってしまう。

――えっ! ヤバッ!

渡辺 当然、そのクルマは名義変更ができません。でも、正規ルートでクルマが買えない人、あるいは相場より安くクルマを手に入れたい人には魅力的に映る。要するに闇業者は、その手のブラックなクルマを扱っていたりする。

――そんなチョー怪しい中古車店や極悪店を見抜く方法はないの? 

渡辺 あります。まずホームページなどで、クルマの詳細写真が極端に少ない店は要注意です。傷やへこみなどを隠している可能性が高いからです。

逆にたくさん写真を上げ、販売に不利になるような事故歴や修復歴などを丁寧に説明している店は信用度が増します。ただ、実車を見ずスマホで中古車を選び、注文する人もいるかと思いますが、正直言っていかがなものかと。

――それはなぜですか?

渡辺 繰り返しになりますが、中古車は新車と異なり、車両ごとにコンディションが大きく異なります。私は写真やデータだけで判断せず、ちゃんと店舗に出向き、車両の状態を確認することを推奨します。もちろん、中古車を探す段階でインターネットを利用するのは構いませんが。

――足を運ぶメリットは?

渡辺 たくさんあります。まず店舗に出かける前に電話をかけると、その電話応対で店の接客レベルがわかります。また、アポの時間に担当者がいるかどうかも信用の目安になりますよね。

――なるほど。

渡辺 ただ、アポを入れたにもかかわらず、「すみません、タッチの差で売れてしまいました。でも、似た条件の魅力的な在庫がありますよ」などと言ってきたら要注意です。そもそも目当てのクルマは本当は存在しない"釣り"の可能性がありますし、売れ残りの在庫車や粗悪車を押しつけようという魂胆が裏に潜んでいるかもしれません。

商談中も目当てのクルマの話やアフターサービスの話は一切せず、金銭の話ばかりする中古車店には注意が必要だという 商談中も目当てのクルマの話やアフターサービスの話は一切せず、金銭の話ばかりする中古車店には注意が必要だという

――店に行くの重要!

渡辺 まだまだチェックポイントはあります。商談のアポを入れ、店に着いたらすぐに確認すべきポイントが!

――それはなんですか?

渡辺 一般的な中古車店であれば、商談の入ったクルマは洗車をし、点検記録簿などをシッカリそろえ、店の入り口など実車をチェックしやすい場所に移動してあります。

――ふむふむ。

渡辺 そして傷やヘコみ、事故歴の有無などの説明を丁寧にしてくれます。ところが、極悪な店は洗車もせず薄汚れた状態のまま、左右に別のクルマをピタリと並べておく。当然、ドアは開けられません。

――中古車の室内チェックはキモなんですよね?

渡辺 はい。スマホだと絶対にわからないのが、実はクルマのニオイなんです。例えば禁煙車をうたっていても、動物やクルマ用芳香剤のニオイがこびりついていて、それが納車後のトラブルの原因になることも。また、水没したことのある車両も、独特の嫌なニオイを放っていることが多い。

――水没車を売る店もある!

渡辺 ええ。水没車両は低い位置の収納などを開けると、砂が付着していたりします。簡単に拭いた程度では取れないからです。なので、仮に店舗のスタッフがドアを開けて車内のチェックをさせなかったとすれば、そこには必ず理由があると考えてください。

水没車は相場より価格は安いが、クルマ全体に腐食が進んでいたりする。購入してから故障や不具合が発生する可能性も 水没車は相場より価格は安いが、クルマ全体に腐食が進んでいたりする。購入してから故障や不具合が発生する可能性も

■近隣の中古車店で評判を聞くべし!

――クルマのチェック中の会話も重要なんですか?

渡辺 購入をせかす、あるいは別の客の存在をにおわせ、「今すぐ現金で手付けを払ったら、次のお客さんの予約をキャンセルします」などと迫ってきたら警戒してください。

――お金の話ばかりする店は危ない?

渡辺 まっとうな店なら、まず実車のメリットやデメリットを客にシッカリ説明します。それを怠ると契約後のトラブルに発展するからです。一方極悪店は、「ウチは保証人ナシでローンが組めますよ」とか「現金払いでなく、ウチのローンで買ってほしい」という具合に、とにかく自分の店の利益ばかりを追求してくる。

――そういうお店は絶対に回避して購入したいです!

渡辺 別の中古車店Aのスタッフに話を聞いたところ、「近隣の中古車店に行き、さりげなくアポを入れた店の話をしてみる」というアドバイスをされました。

――どういうこと?

渡辺 同じ地域の中古車店のことはお互いによく知っており、競合相手だからホメることはなくても評判は教えてくれます。周辺の店舗が口をそろえて、「あそこはダメ!」と指摘する店舗は避けたほうが無難です。

――中古車とはいえ高い買い物なので、とにかくリサーチには手間をかけたほうがいい?

渡辺 そうです。あとは、同じ場所で中古車店を何年間営んでいるかも判断材料になりますね。もちろん近年開店した良心的な店もありますが、長年営業していたら、それは実績ですから。

――なるほど。

渡辺 このほか中古車店Bによると、「なるべく修理工場を併設する店舗で買うのが望ましい」とのこと。中古車には細かな不具合が生じることも多く、中古車販売店に修理設備がないと別の業者に頼みますが、修理工場を併設していれば簡単に直せる。

――確かに。

渡辺 修理工場のある中古車店で、保証の付帯された中古車を買うのが安心でしょうね。中古車は故障や不具合の発生を前提に選ぶ必要があります。そして、中古車の車両状態をユーザーが正確に判断するのは極めて難しいので、まずは店舗やスタッフの人柄から判断するしかありません。

――ほかにポイントは?

渡辺 価格にも注意したいですね。極端に安価な車両には、それなりの理由があります。中古車情報のサイトなどを参考にして相場を確認し、そこから大きく逸脱していない車両を選ぶこと。

――自動車メーカーの名前がつく中古車店はどうスか?

渡辺 スタッフは自動車メーカーの看板に傷をつけないように仕事をしています。扱うクルマも、新車の販売と併せて下取りされた素性の知れた個体が多く、新車ディーラーの試乗車などが売られることもあります。信頼や安心、保証の面では群を抜きます。ただし、その分クルマのお値段は張りますけどね。

――最後に総括を!

渡辺 購入したクルマに不備があっても、極悪店が返金に応じる可能性は低い。中古車店選びは慎重に!

●渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務める。"クルマ購入の神様"。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員