4月25日に販売開始となり話題を呼んでいるのが、カワサキの新型エリミネーターだ。そこで、モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が試乗し、徹底チェック! 開発陣も直撃してきた。
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■コーナーも軽快に駆け抜ける!
近年、ニンジャやカタナ、ホークといった往年の名車たちが国内のバイクメーカーから次々に復活! バイクファンらを歓喜させているのだが、またまたカワサキがやってくれた。今度はエリミネーターである!
エリミネーターの名を知っていれば、アナタはかなりのバイク通。エリミネーターは、1980年代から2000年代前半にかけ、原二から大型までラインナップという、実に〝漢〟カワサキらしい武骨なシリーズ構成で一世を風靡。しかし、今回の新型は普通二輪免許で乗れる上限となる〝ヨンヒャク〟の排気量で登場した。
フレームは完全新作。初代エリミネーターのロー&ロングスタイルを現代的にアレンジし、流麗なボディラインで低いシート高を実現した。
実際にまたがると、身長175㎝のアオキだと膝が大きく曲がったまま、両足がカカトまで地面にベッタリ届き、安心感は絶大。これなら小柄なライダーでも余裕で足が届き、足つき性の心配は無用。
ステップ位置も、クルーザースタイルなら両足を前方に投げ出すフォワードコントロール(ブレーキとチェンジレバーなどを前方に配置)にしがちだが、ネイキッドスポーツのようなミッドポジションにしている。エリミネーターのプロジェクトリーダー(車体設計担当)の柏原健氏はこう語る。
「幅広い層に乗ってもらいたく、250~500㏄のカワサキオンロードモデルの中で最も低い735㎜のシート高で、良好な足つき性を実現しました。腕を自然に伸ばした位置にハンドルグリップがあります。膝を適度に曲げた位置に配したステップはゆとりがあり、毎日のライディングをストレスなく楽しめます」
走り出すと、398㏄の並列2気筒エンジンはパワフルかつ扱いやすい。一般道で多用する低中回転域でギクシャクせず、思うままに操れる。
ニンジャ400譲りのパラレルツインエンジンが新型エリミネーターに採用されているが、フューエルインジェクション(燃料噴射装置)のセッティングは見直されている。
車体は軽くハンドリングもクセがない。そのためコーナーも軽快に駆け抜けることができる。さらに標準装備するアシスト&スリッパークラッチも実に頼もしい。
もともとはレースからフィードバックされた技術なのだが、コーナーでの急激なシフトダウンで過度のエンジンブレーキがかかってもリヤタイヤの浮き上がりやスリップを防ぐので、上級ライダーがワインディングをアグレッシブに走っても安心感があるはず。
また、驚きは上級仕様の「エリミネーターSE」にGPS付きドライブレコーダーが備わっている点。ヘッドライトカウル下に前方用、ナンバープレートの上方に後方用のカメラを装着。新車時から標準装備するのは世界初。実験リーダー(電装系実験担当)の熊田貴文氏は言う。
「当初は社内でも不安の声はありましたが、信頼性や耐候性などひとつずつ懸念される点を解消して採用しました」
トラブル時はもちろんのこと、ツーリングの思い出を残すのにもうってつけ。
ちなみに4月25日の発売から順調に注文が入っているそう。ガチで欲しい人は販売店にダッシュしたほうがいい。
こうなると、250㏄版の登場を期待せずにはいられないのだが、それに関して開発チームは口をつぐむ。今回、ニンジャ400のエンジンで新型エリミネーターを世に送り出したのだから、次はニンジャZX-25Rの4発で250㏄版を出すべし。そんな妄想を大爆発させるアオキなのであった。
●青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営