4月20日から販売開始となった6代目セレナ。その試乗会が静岡県御殿場市で開催された。カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)氏が、最上級グレードを公道に引っ張り出して徹底チェック! その実力に迫った。
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■6代目セレナも販売好調!
――昨年11月にフルモデルチェンジを受けた、日産の6代目セレナに今回試乗したわけですが、そもそもどんなクルマでしたっけ?
渡辺 はい。セレナはミニバンの先駆け的な存在で、初代モデルの登場は1991年です。販売はすこぶる好調で、これまでの累計登録台数は200万台を軽く超えています。
新型となる6代目は昨年11月から先行予約を開始し、5月下旬までに4万7000台以上の受注をマークしています。この内の半数以上がHEV(ハイブリッド)のe‐POWERですね。
――ズバリ、セレナの人気を支える秘密はなんですか?
渡辺 広い室内、多彩なシートアレンジ、使いやすい荷室などミニバンに求められる機能が優れています。それから国内で販売される日産の車種が減ったことも挙げられます。
具体的には、昨年新規登録された日産の小型/普通車は、ノート、ノートオーラ、モデル末期のセレナの3車種で約62%となりました。日産では好調に売れる小型/普通車が減り、需要がノートとセレナに集中しています。
――6代目セレナをライバルと比較すると?
渡辺 セレナはトヨタのノア&ヴォクシーやホンダのステップワゴンと違い、車体が小さい5ナンバーサイズのグレードを残しました。
しかし、車内は3ナンバーのライバル車と比べて一番広い。特に3列目のシートは足元空間に余裕があり、座面も一番長い。ミドルサイズのミニバンの中で、多人数乗車を快適に楽しむならセレナがベストです。
――そんな6代目セレナで話題を集めているのが、最上級グレードのルキシオンです。最大の特徴は?
渡辺 最新の先進運転支援システム「プロパイロット2.0」を搭載しました。こちらはミニバン世界初搭載となります。高速道路上で一定の条件を満たすと、ハンズオフが可能になります。
――ふむふむ。
渡辺 先代セレナは走行安定性に不満があり、プロパイロットを作動させると、ステアリングホイールを握っていても蛇行する欠点がありました。
そこで6代目は、車体の基本骨格から改善して、ボディ剛性を高めました。走行を先代モデルと比べると、安定性や操舵(そうだ)感は飛躍的に向上しました。もちろん、プロパイロット2.0の作動も正確になっています。
――ルキシオンの価格は?
渡辺 e‐POWERを搭載するハイウェイスターVよりも約111万円高い、479万8200円です。税金などの諸費用やオプションを装着すると軽く500万円を突破します。
――500万円超なら、日産のフラッグシップミニバン・エルグランドが買えますよね?
渡辺 エルグランドは現行モデルのデビューから約13年が経過しており売れ行きも下がりました。ルキシオンは、その顧客をセレナに導く狙いもあります。ですから、約40万円相当のプロパイロット2.0を装着し、そのほかの装備も充実させたわけです。
――日産の狙いどおりに上級ミニバンからの乗り替えは進んでいるんですか?
渡辺 日産いわく、「ルキシオンはトヨタのエスティマ、ホンダのオデッセイからの乗り替えが多い」とのこと。ただし、肝心なエルグランドからの乗り替えは少ないらしい。
――それはなぜ?
渡辺 エルグランドというミニバンは、日産のセダンでいうと、かつてのシーマのような存在です。いくら中身を充実させても、エルグランドのユーザーからしたら、格下のセレナでは、やはり満足できないと思います。
●渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務める。"クルマ購入の神様"。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員