今年上半期の新車の販売台数が発表された。EVシフト推しのメディアは血税バラまきの補助金には一切触れず、「EVが売れに売れた!」と大騒ぎ。この手のメディアが触れない真実とは?
■血税をジャブシャブ投入
開いた口がふさがらない。
自販連(日本自動車販売協会連合会)、全軽自協(全国軽自動車協会連合会)、JAIA(日本自動車輸入組合)の発表によると、今年上半期に国内で販売された新車の台数は245万600台。その内の約2%がEV(電気自動車)であった。
国と自治体が一体となり、"EV補助金"という名の血税を湯水のごとく投入し、たったの2%である。しかし、EVシフト推しメディアの手にかかると、「国のおかげで着実にEVの普及が進んでいる!」というふうに切り取られるから恐ろしい。忖度にも程があるし、まさに"令和の大本営発表"である。
国民の血税をジャブジャブ使った結果、今年上半期に売れたEVは何なのか。海外ブランドの高級EVと軽EVだ。要するに富裕層とアーリーアダプターを喜ばせただけである。
付け加えると、この補助金の原資は税金だ。それなのにEVを購入しない、あるいは購入できない国民にとって恩恵の類は一切ない。メリットを享受できない国民からすれば、単なる血税の垂れ流しにしか見えないだろう。
しかも今、国民は円安や原材料の高騰による物価高に頭を痛め、悲鳴を上げている。特に子育て世帯や年金生活者は、生活維持に四苦八苦だ。
ところが、民意を読まぬ岸田政権は、物価高に苦しむ庶民を踏みつけにし、富裕層とアーリーアダプターに"EV補助金"という名の血税を垂れ流し続けている。異次元レベルのデタラメさだ。では、なぜEV普及の勢いは鈍いのか。自動車関係者を直撃すると、みなこう口を揃える。
「本当にEVが魅力的な商品であるのなら、補助金を投入せずとも、とっくの昔に普及していますよ」
■EVと原発は無関係?
言うまでもないが、EV補助金のバラまきはニッポンが掲げる2050年のカーボンニュートラル実現のためである。だからこそ、国と自治体は一体となり血税をジャブジャブ投入し、EVというゼロエミッション(排ガスゼロ)車の普及を推し進めている。実はここに不都合な真実が隠されている。
本当に地球環境を考えているのであれば、EVの充電は再生可能エネルギーをフル活用すべきである。というのも、いくらEVが排ガスゼロでも、充電する電気がCO2の排出量が多いとされる石炭火力発電由来では脱炭素もクソもないからだ。
ところが、再生可能エネルギーをフル活用するには、発電コストを含め、相当なブレイクスルーが必要となる。だとすると、EVを動かす電気は何か。週プレ自動車班がEVの取材をスタートしたのは2016年。これまで数多くの自動車関係者に話を聞いてきたが、最後は必ずこういう結論にたどり着く。
「いずれ"EV普及のため"という大義名分を掲げて国は原発をフル稼働させるかもね。冗談抜きにそうしないと、ニッポンのクルマを全部EVにはできないよ」
この予言は現実になりつつある。岸田政権は国民の議論をすっ飛ばし、原発回帰へ大転換したからだ。すでに西日本では原発が動いている。
ただし、ひとたび原発事故が起きれば、その周辺地域は普及作業すらままならない。また、ロシアのウクライナ侵攻を見てもわかるとおり、原発は軍事標的になりうる。
これまでEVシフト推しのメディアは、原発に関してはダンマリか、「知らぬ存ぜぬ」の卑劣ぶりを発揮してきた。要するにEVと原発は無関係、EVと電力会社も無関係というインチキぶりだ。まさに無責任体質の極みである。
現在、国は電気料金の値上げと節電要請をセットにし、脱炭素もチラつかせながら、物価高に苦しむ国民を締め上げている。国の本音としては、「原発をフル活用したら暮らしは楽になりますよ」「原発再稼働に罪の意識は必要ありません。地球環境のためです。EVに乗って脱炭素を一緒に実現しましょう」という感じだろう。
原発フル活用にかじを切った岸田政権からすれば、耳障りのいい「カーボンニュートラル」と「EV」は絶対に手放したくないカードだろう。地球環境を大義名分にすれば、もっともらしく"ニッポン原発フル稼働"に踏み切れるからだ。
もちろん、EVに罪はない。だが、EVが悪い大人のオモチャにされているのも事実だ。いずれにせよ、原発回帰を強めるなど、ついに本性を現した岸田政権。もうEVと原発が無関係という御用メディアのペテンは通用しない。