1位 カワサキ NINJA ZX-4R SE/RR 上半期トップに輝いたNINJA ZX-4R SE/RRの開発陣とアオキ審査委員長(中央)1位 カワサキ NINJA ZX-4R SE/RR 上半期トップに輝いたNINJA ZX-4R SE/RRの開発陣とアオキ審査委員長(中央)
"びんびんバイク"とは、男心を刺激するにも程がある愛すべきバイクのこと。今年上半期に登場した魅惑のマシンの中から珠玉の5台を勝手に決定! 審査委員長はモーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏だ!

■鬼売れのCL250は何位?

――毎年恒例ですが、今回も独断のみで、今年発売された新型、取材した話題のモデルの中からベスト5を選んでください!

青木 コホン。では、発表します! アオキが勝手に1位に選んだのは、カワサキ『NINJA ZX-4R SE/RRです。コレしかありませんっ! 1999年に生産を終えたZXR400以来の4気筒400㏄スーパースポーツは、今年3月の大阪モーターサイクルショーで本邦初公開されると、「いつ出るんだ?」「マジで欲しい」と大反響。バイクファンらの話題をかっさらい、現在も話題とハートを独占中です!

――7月15日に新発売とのことですが、委員長はもう試乗された?

青木 実は発売前にメディア向け試乗会が「袖ケ浦フォレストレースウェイ」(千葉県袖ケ浦市)にて開催され、ガッツリ乗ってきました。サーキット全開でポテンシャルのすべてを解き放つと、これぞ"ヨンヒャク4発"と言わんばかりの甲高いサウンド、盛り上がるパワーのカタマリ感はマジでチョー官能的! 控えめに言ってへルメットの中で顔面ニヤけまくりでした! しかも......。

――ス、ストップ! 今回は上半期ベスト5の発表なので、詳しいインプレッションはまた次回にしましょう。続いて2位は?

青木 ホンダ『XL750トランザルプ』です! 初代は1987年のXL600Vトランザルプで、モデル名のTRANSALPはトランス・アルプス、つまり"アルプス越え"を意味し、ヨーロッパの冒険ライダーたちの相棒として発売されました。ホンダ・アドベンチャーツアラーの由緒ある血統が復活しました!

2位 ホンダ XL750トランザルプ2位 ホンダ XL750トランザルプ
――ほお!

青木 「日常の街乗りから世界一周までを叶える」と語るのは、開発責任者の佐藤方哉氏。ホンダの誇るスーパースポーツ最高峰モデルCBR1000RR(2017年式)でも、プロジェクトリーダーを務めていたのが実に興味深い。サーキットで速く走り、勝利することを目的にしたモデルから180度異なるオールラウンダーな冒険旅バイクを手掛けたわけで、XL750 トランザルプには最先端技術が惜しみなく盛り込まれています。

――具体的には?

青木 空力マネジメントや高回転までパワーが伸び上がるショートストローク設計のパワーユニット、アシスト&スリッパークラッチ、そして電子制御技術などです。新型は排気量754㏄の並列2気筒エンジンを心臓部に、さまざまな走行シーンに合わせて出力特性をマネジメントできるライディングモードを搭載しています。

――何それ?

青木 長旅をすれば、曲がりくねった山岳路もあれば、真っ直ぐに続く直線、未舗装のダートなどいろいろな道を走ることになります。さらに雨が降れば、路面は濡れて二輪車はスリップして転倒のリスクが絶えずある。パワーやトラクションコントロール、エンジンブレーキやABSブレーキなどを電子制御し、安全に楽しく長距離ツーリングできるようにするのがライディングモードなんです。

――ハイテク!

青木 カラダを走行風から守る大型フェアリングやオフロードでの走破性に貢献する長いサスペンションを備えたオールラウンダーでありつつ、乗るのが苦にならないようシート高も850mmに抑えました。デカくて堂々とした車体の中、着座位置がうんと低くなっています。

――足が地面に届かないと不安ですものね。

青木 ハンドル切れ角が多く、狭い道でのUターンもしやすい。ここは佐藤氏がこだわったポイントのひとつで、山の中で引き返すときも苦労しない。だから臆せず「この先はどうなっているんだろう」という好奇心を満たすべく、旅好きなライダーの本能に赴くまま細い道やダートにも入っていけます! 

――委員長、そろそろ3位の発表を......。

青木 鬼売れのホンダ『CL250』は外せません! スクランブラースタイルといって、オフロード専用車がまだなかった1960年代のフォルムを再現しています。

未舗装路が多かった時代、ロードモデルをベースにマフラーをアップタイプにし、フロントフォークのインナーチューブを飛び石や泥などから守るためラバーブーツをセットしました。乗り手はふっ飛ばされないよう燃料タンクを両ヒザで抱え込みのですが、それをしやすくするためパッドが貼りつけたるのも特徴です。

3位 ホンダ CL2503位 ホンダ CL250
――映えそうなバイクですよね?

青木 おっしゃるとおりで、若者からも熱視線を浴びまくっております。テレビドラマ「ビューティフルライフ」(TBS系列。2000年放送)で、美容師役のキムタクが愛車にしたヤマハTWのように、ファッション感覚でバイクに乗るストリートバイクブームの再来の予感を、アオキはびんびんに感じています!

TWがそうだったように、自分好みのカスタムが楽しめるよう、パーツも新車登場時から豊富に揃っているのも魅力のひとつですね。 当時は非合法なマフラーなども目立ちましたが、CL250には規制対応のモリワキ・ショートメガホンマフラーなどが用意され、正規販売店で購入・取り付けができます!

――ライバルは?

青木 5年連続で軽二輪セールストップのホンダ『レブル250』です。CL250は5月に新発売となりましたが、販売はすこぶる絶好調。ホンダコンビで、1位、2位を独占するかもしれません!

――続いて4位は?

青木 スズキもアドベンチャーモデルの傑作を出しました。『Vストローム800DE』です。

フロントに大径21インチホイールを履き、オフロードの走破力がより高い。前後サスペンションのストローク量が多く、背が高いから遠くまで見渡せる。目から入る情報が多いのは、混雑する都会でも有利に働く。身のこなしが軽いから街乗りもしやすく、高速道路でのクルージング能力も高いから、近場にも遠くへもどこへでも乗っていけます。

4位 スズキ Vストローム800DE4位 スズキ Vストローム800DE
――そして5位は?

青木 15年ぶりに復活したカワサキ『エリミネーター』を忘れてはいけません。新型は普通二輪免許で乗れる上限となる"ヨンヒャク"の排気量で登場し、『CB400スーパーフォア』や『SR400』の生産終了などにより元気のなかったこのクラスをNINJA ZX-4R SE/RRとともに盛り上げています。乗り手の体格を問わない低シート高を実現し、初心者も不安なく乗れるのもうれしい。

5位 カワサキ エリミネーター5位 カワサキ エリミネーター
――なるほど。

青木 ちなみにプロジェクトリーダー(車体設計担当)の柏原健氏は「毎日のライディングをストレスなく楽しめます」と胸を張ります。398㏄の並列2気筒エンジンはパワフルですが、とても扱いやすい。バイク用ドラレコの高まる人気を受け、上級仕様のエリミネーターSEにGPS付きドライブレコーダーを備えたこともファンを驚かせました!

――委員長、最後に総括を!

青木 とまぁ、2023年上半期もまたバイクファンの心をびんびんにさせる魅力的なバイクがワンサカ登場しました。下半期には2024年を見据えた新型が発表される見込みで、バイクファンらはまだまだ目が離せませんよぉぉぉ!

●審査委員長 青木タカオ(Takao AOKI) 
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営