一般道、高速道路、さらにはワインディングなどでも試乗。走りはとてもパワフル。迫力満点のサウンドはまさしくスポーツカー一般道、高速道路、さらにはワインディングなどでも試乗。走りはとてもパワフル。迫力満点のサウンドはまさしくスポーツカー

昨年、2008年以来のフルモデルチェンジを受けた日産が世界に誇るスポーツカー「フェアレディZ」。1969年の初代から数えて、今回の新型で7代目。カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)氏が、そんな新型を公道試乗し、徹底チェックした!!

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■7代目はヤンチャなスポーツカーではない

渡辺 唐突ですが、日産と耳にして何を思い浮かべます?

――軽EV(電気自動車)のサクラが爆売れしているので、やっぱEVのイメージが強いです。

渡辺 実は日産が調査した「日産のブランド力ランキング」によると、1位GT-R、2位フェアレディZ、3位スカイラインという結果だったんです。つまり、今でも日産にはスポーツカーのイメージが根強くある。

日産 フェアレディZ 価格:524万1500~646万2500円 7代目の見た目は、セクシーかつダイナミックでド派手。ブルーの車体ということもあり、どこを走っても注目の的だった日産 フェアレディZ 価格:524万1500~646万2500円 7代目の見た目は、セクシーかつダイナミックでド派手。ブルーの車体ということもあり、どこを走っても注目の的だった

――へぇー!

渡辺 特にフェアレディZは、累計生産180万台以上を誇り、海外での人気もすこぶる高い。ちなみに現行の7代目は昨年、14年ぶりにフルモデルチェンジを行ないました。今回はそんな新型のMT(マニュアルトランスミッション)仕様を公道に引っ張り出して徹底チェックしてみました。

――外観は往年のフェアレディZっぽいですね?

渡辺 ヘッドランプの周辺や「Z」のエンブレムが備わるリヤピラー(柱)などは、1969年に発売された初代のイメージに仕上げていますね。

ボディサイズは全長4380㎜×全幅1845㎜×全高1315㎜。7代目の外観には歴代モデルへのオマージュがギッシリ詰まっているボディサイズは全長4380㎜×全幅1845㎜×全高1315㎜。7代目の外観には歴代モデルへのオマージュがギッシリ詰まっている

漢がたぎる左右2本出しのマフラー。実物を見るとけっこうなド迫力。テールランプのデザインも歴代モデルから継承漢がたぎる左右2本出しのマフラー。実物を見るとけっこうなド迫力。テールランプのデザインも歴代モデルから継承

――なぜ初代のデザインに寄せたんスか?

渡辺 スポーツカーを買う人の年齢が、海外を含めて上がっているからです。実はアメリカのフォードマスタングやシボレーカマロの外観も、初代に寄せたデザインになっている。

ヘリテージとかオマージュは、メカニズムが先進的なスポーツカーとしては、後ろ向きの発想で、できれば新しいデザインを追求してほしいとは思いますが、売れないと商売になりませんからね。

3リットルのV6ツインターボエンジンは、スカイライン400Rから移植。もちろん、7代目専用に磨き抜かれている3リットルのV6ツインターボエンジンは、スカイライン400Rから移植。もちろん、7代目専用に磨き抜かれている

――7代目のエンジンは?

渡辺 V型6気筒の3リットルツインターボで405馬力! もちろん、加速は強烈です。

――走りはヤンチャな感じ?

渡辺 いいえ。意外にも運転がしやすく、〝大人のスポーツカー〟に仕上がっていました。ただし、退屈なクルマという意味ではありません。特にワインディングは7代目の真骨頂で、誰が操ってもコーナリングは楽しいと思います。

ダッシュボード上にはフェアレディZ伝統の3連メーターが鎮座。ちなみにシートは優れたホールド性を実現しているダッシュボード上にはフェアレディZ伝統の3連メーターが鎮座。ちなみにシートは優れたホールド性を実現している

――6速MTはどうでした?

渡辺 MTには、ドライバーの意思でクルマを操るという楽しさがあります。7代目もMTならではのダイレクト感を存分に堪能できます。加えて、シンクロレブコントロールが装備されているのも大きなポイントですね。

――えっと、シンクロレブコントロールってなんですか?

渡辺 MT車はカーブなどでシフトダウンをするとき、エンジン回転を高めてギヤをつなぐ必要があります。そうしないと、クラッチペダルを離したときのショックが大きく、クルマの挙動がギクシャクする。

しかし、シンクロレブコントロールを作動させれば、この操作をクルマが自動で行なう。つまり、MT初心者も安心して楽しめます。

――7代目に弱点はない?

渡辺 見た目を優先させたクルマなので、正直言うと後方視界に不満が残ります。それから受注停止問題も課題ですね。

半導体を含むパーツ不足と、予想以上のバックオーダーを抱えた関係で納期が見通せなくなり、昨年7月いっぱいで受注をいったんストップ。しかし、間もなく1年が経とうとしているのに、依然として受注再開のめどは立っていないもようです。

――早く受注を再開してほしいですね。では、最後に7代目の総括をオナシャス!

渡辺 日産は脱炭素が叫ばれる時代に、よくこんな高性能なガソリン車を出しましたよ。しかも、日本国内では絶滅寸前のMTまで用意した。日産の〝スポーツカー愛〟を強く感じましたね。

●渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう) 
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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