5月29日、メルセデス・ベンツ日本は、3列7人乗りのSUVタイプのフラッグシップEVを発売! 鳴り物入りで日本に上陸した新型の実力とは? そこで、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)氏がウワサの新型EVを公道に引っ張り出しテストした。
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■海外ブランドの高級EVが売れている
――輸入EV(電気自動車)の新車販売が好調らしいスね?
渡辺 今年上半期(1~6月)は9239台をマークし、前年同時期より約78%増えました。輸入車全体に占める割合は約8%です。
――なぜ、輸入EVが人気?
渡辺 まず車種が多い。日本車はEVに力を入れる日産自動車でも3車種ですが、欧州車には5車種以上を輸入しているブランドもあるんです。
――気になるお値段は?
渡辺 大半は600万円以上です。中には1000万円を突破するセレブEVも!
――海外ブランドのEVは値が張りますね!
渡辺 1回の充電で走行できる距離を延ばすためには、大容量の高価な駆動用電池を搭載する必要があります。そうするとボディが重くなるので、今度は高出力のモーターが必要になる。当然、価格も跳ね上がりますからね。
――どうして海外ブランドのEVは、値が張るのに売れ行きが伸びているの?
渡辺 国や自治体の補助金の恩恵ですね。輸入EVには、国から65万円以上の交付を受けられる車種が多い。しかも、国とは別に補助金を交付する自治体もある。
――要するに、富裕層しか買えない高価なEVに対して、国や自治体は多額の税金をジャブジャブ投入していると?
渡辺 そのとおりです。ちなみに今回試乗したクルマは、そんな富裕層が飛びつきそうなメルセデス・ベンツの最新EV「EQS SUV」です。
――とにかく、いろいろデカかった印象が残っています。
渡辺 試乗したEQS450・4マチックSUVは、全長が5130㎜、全幅は2035㎜です。
――駆動用電池の容量もハンパないんスよね?
渡辺 107.8kWhです。WLTCモードによると、1回の充電で593㎞走れますね。ちなみにこのバッテリーに蓄えられる電気は、4人家族が住む家屋の約7日分に相当します。
――桁外れ! さらに驚いたのは、車内イルミネーションです。昼間でも繁華街のネオンサインのごとく輝き、超ド派手でした!
渡辺 アクティブアンビエントライトのことですね。
――アンビエントライトはなんのための装備なんスか?
渡辺 メルセデス・ベンツいわく、「心地よい色彩の演出」だそうです。
――なるほど。ちなみに居住性はいかがでした?
渡辺 車内は広く3列のシートを備えます。3列目は荷室に装着された補助席ですが、片道30分程度なら大人の多人数乗車も可能。一方、2列目はライバル車と比較しても頭上と足元の空間は広いです。
――街中を運転した印象は?
渡辺 全幅が2mを超えるので、混雑した街中ではボディを持て余しますが、低速域では後輪が前輪とは逆方向を向くため、最小回転半径は5.1mを誇ります。要するに小回りもシッカリこなします。
――峠道や高速道路は?
渡辺 車両重量は2880㎏で、峠道の急カーブは曲がりにくいですが、高速道路は快適でしたよ。
――このクルマはどんなユーザーを想定している?
渡辺 EQS SUVは、北米のアラバマ州にあるタスカルーサ工場だけで生産され、各国に輸出されます。最も重視している市場は北米と中国。日本市場ではメルセデス・ベンツのGLEやGLSなど、上級SUVからの乗り替えを狙っているそうです。
――ぶっちゃけ、日本で売れますかね?
渡辺 補助金もありますが......日本は道幅が狭いので、正直言うと、もう少しコンパクトで割安なSUVタイプのEVを導入したほうが、売れる余地はあると思います。
●渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員