ホンダ「3代目N-BOX」ホンダは、今秋発売予定の新型N-BOXをご開帳! 2年連続で国内新車販売総合トップに輝いた「シン・国民車」。3代目となる新型も爆売れ確定!?ホンダ「3代目N-BOX」ホンダは、今秋発売予定の新型N-BOXをご開帳! 2年連続で国内新車販売総合トップに輝いた「シン・国民車」。3代目となる新型も爆売れ確定!?

8月3日、ホンダの軽スーパーハイトワゴン「N‐BOX」の3代目が、ついに発表された。新型はどこが変わったの? 長所と短所はどこ? 実車をチェックした、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏に話を聞いた!

■使い勝手を徹底的に磨き上げた3代目

――ホンダのドル箱であるN-BOXの新型がお披露目されました。まず、どんなクルマか解説をオナシャス!

渡辺 N-BOXは"絶対王者"と呼ばれ、国内の最多販売車種です。モデル末期の昨年も、月平均で約1万7000台を販売。ちなみに販売2位のダイハツの軽・タントは約9000台でした。

――モデル末期でもN-BOXは、売れに売れていたと。累計販売台数はどれぐらい?

渡辺 240万台を誇ります。付け加えると、現在ホンダの国内販売の4割がN-BOXで、まさに大黒柱です。

――そんなN-BOXの新型の外観を見た率直な感想は?

渡辺 変化に乏しいなと。まぁ、N-BOXは大黒柱ですから、失敗が許されない。そのため基本的な形状は2代目を踏襲したのだと思います。

内装の注目点は、ホンダの軽初となる7インチTFT(薄膜トランジスタ)液晶メーターと大型のグローブボックス内装の注目点は、ホンダの軽初となる7インチTFT(薄膜トランジスタ)液晶メーターと大型のグローブボックス

――でも、フロントマスクはN-BOXもN-BOXカスタムも穏やかになりました。

渡辺 開発責任者やデザイン担当者によると、"オラオラ系"と呼ばれる威圧的なデザインは避け、品格を高めたそうです。ボディは従来と同じく標準タイプとカスタムの2種類を用意。前者のフロントグリルは小さな丸い穴が並ぶデザインで、「シンプルな家電のように仕上げた」と。

――一方、カスタムの見どころはどこですか?

渡辺 ブラックの緻密なデザインの顔で、最上部には細く横長の一文字ライトを採用しました。方向指示機も光がボディの内側から外側に向けて流れるタイプですね。

ホンダ「3代目N-BOX カスタム」。3代目カスタムの注目点は、フロントの横一文字ライト。開発陣は「品格を高めた顔に仕上げました」と胸を張るホンダ「3代目N-BOX カスタム」。3代目カスタムの注目点は、フロントの横一文字ライト。開発陣は「品格を高めた顔に仕上げました」と胸を張る

シーケンシャルターンシグナルは滑らかな発光で視認性が向上。ちなみにレンズは、カスタム伝統のクリアタイプシーケンシャルターンシグナルは滑らかな発光で視認性が向上。ちなみにレンズは、カスタム伝統のクリアタイプ

「品格」と「ハイパフォーマンス」を融合させた外観。エアロ、ホイール、さらにロゴエンブレムも刷新した「品格」と「ハイパフォーマンス」を融合させた外観。エアロ、ホイール、さらにロゴエンブレムも刷新した

――車内の広さは?

渡辺 実は価格やボディサイズなどは現時点で未発表です。ただ、ボディの基本的なサイズや形状、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は従来型を踏襲すると予想します。

――新しくなったのは?

渡辺 注目は2代目の欠点を解消したメーターです。2代目はメーターをインパネ最上部の奥まった位置に装着していました。確かに視認性に関しては、とても良かったんですが、小柄なドライバーからは、メーターの陰に隠れて前方が見にくいという意見があった。

そこで、新型はメーターをステアリングホイールの奥側に設置する一般的な場所に配置変更。インパネ上面も平らに仕上げており、ボンネットも見やすく、ボディの先端や車幅も従来以上に把握しやすい。

カスタムの内装はメッキを多用。質感の高さを訴求するデザインに仕上げたそうな。ステアリングは本革巻きだカスタムの内装はメッキを多用。質感の高さを訴求するデザインに仕上げたそうな。ステアリングは本革巻きだ

詳細なデータは発表されなかったが、ホンダによると、先代に引き続き、新型も「軽乗用車最大級の室内空間」という詳細なデータは発表されなかったが、ホンダによると、先代に引き続き、新型も「軽乗用車最大級の室内空間」という

――視界性が向上したと。ほかに磨かれた部分は?

渡辺 2代目は後席シートの柔軟性が不足していました。そこで新型は座り心地を改善。また、後席を畳むと、荷室床面の一部がへこんでおり自転車も積みやすいです。

――収納設備は?

渡辺 グローブボックスの容量を2倍に増やして、ポケットも充実しています。乗降グリップも工夫されており、子供の乗降性も向上させました。

――要するに日常の使い勝手を徹底的に磨き上げたと?

渡辺 そのとおりです。

■販売面を左右しそうな穏やかすぎる顔面

――3代目に欠点はない?

渡辺 従来型には助手席を前後に57㎝動かせるスーパースライドシート仕様を用意していましたが、新型にはありません。また、ターボエンジンはカスタムのみの設定になってしまいました。

――なぜターボエンジンはカスタムのみになったんスか?

渡辺 開発責任者に聞きましたが、「売れなかったから」と(笑)。ただ、3代目N-BOXは脱オラオラ系を掲げた、穏やかな外観に仕上げています。その意味で新型の主力は、標準タイプともいえる。

従来型の販売比率は、標準タイプが40%、カスタムは60%でした。しかし、新型は標準の台数が増えるかもしれません。そこを踏まえると、私は標準タイプにターボを残すべきだったと思います。

3代目N-BOXの開発責任者・諌山博之氏。昨年の新車販売で唯一の20万台を記録したN-BOX。「その数字を超える自信があるので発売しました」(諌山氏)3代目N-BOXの開発責任者・諌山博之氏。昨年の新車販売で唯一の20万台を記録したN-BOX。「その数字を超える自信があるので発売しました」(諌山氏)

――電動化を加速させているホンダなので、ターボの代わりにEV(電気自動車)を用意したとか?

渡辺 いいえ。すでに軽のN-VANをベースにしたEVは公表していますが、3代目N-BOXに今のところEVの設定はなく、HEV(ハイブリッド)もMHEV(マイルドハイブリッド)の用意もありません。

――ほかに弱点はない?

渡辺 弱点というより、心配な点はN-BOXの穏やかなフロントマスクですね。売れ行きを考えると微妙です。実はホンダのステップワゴンやフィットも、フロントマスクをN-BOXと同じく穏やかな方向に仕上げた結果......販売が低迷しているんですよ。

――それは心配だ。ちなみにオラオラ系の軽が好きな人は何を買えばいいスか?

渡辺 ダイハツのタントカスタムは迫力がありますね。

渡辺氏が「現行の軽自動車の中では最強のオラオラ顔です」と太鼓判を押すタントカスタム。価格は174万9000~199万1000円渡辺氏が「現行の軽自動車の中では最強のオラオラ顔です」と太鼓判を押すタントカスタム。価格は174万9000~199万1000円

――なるほど。もう3代目N-BOXは買える?

渡辺 販売店に聞いたら、「8月上旬から先行予約を開始して、見積書も作成します!」と気合いが入っていました。生産や納車が始まるのは9月以降でしょうね。

――ズバリ、新型N-BOXは売れますか?

渡辺 累計販売台数240万台なので保有台数も多い。その乗り替え需要だけでもスゴいことになるかと。ただし、前述のとおり国内で販売されるホンダ車の4割がN-BOXです。裏を返せば3代目が好調に売れないと、ホンダの屋台骨は揺らぎますよね。

●渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員