北米で爆売れを続けるカワサキのATV(オールテレーンビークル)が、鳴り物入りでニッポン上陸。そこで、モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が、メディア向け試乗会が開催された灼熱のオフロード場で、限界ガチ試乗!
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■話題のATVを徹底チェック!
バイクだけじゃない。カワサキは四輪車も造っている。具体的には、不整地での走りが得意な四輪バギー(ATV)だ。
広大な国土を持つアメリカやカナダで実は大人気。その証拠に北米のATV市場は年間約50万台にも達する。ちなみにメーカーの数も多いが、カワサキは10%を超える高水準のシェアを持つ。
加えて、この市場は拡大傾向にある。走破困難な地形での運転に適することから、狩猟や自然探検などに役立つだけでなく、軍事、鉱業、建設、スポーツ、エンターテインメントなど、幅広い分野で需要が伸びている。北米だけでなく、欧州でも販売は好調だ。
このATVを日本国内でも広めるべく動いたのが、カワサキモータースジャパンの桐野英子社長である。2021年10月に代表取締役社長に就任すると、アオキの直撃にこう語った。
「災害救助のほか、クローズドコースで楽しめる新たなホビーとしたい。間違いなく日本でも需要がある」
桐野社長のこの熱き野望にブレはなかったようで、今年3月、3機種の国内導入を発表し、7月15日に新発売した。
ただし、このATVは一般公道を走ることができず、軽トラの荷台などに乗せ、走行可能なオフロード場などに運ぶ必要がある。アオキのような鬼のバイク好きからすると、ATVの魅力はピンとこないのが本音だ。そもそもどう楽しむべきなのか?
そういう声を耳にしたのかどうかはわからないが、バイクジャーナリストらが押しかけたニンジャZX-4RRサーキット試乗会に、カワサキはATV体験会をぶっ込んできた。アオキはレーシングツナギに体を包み、ウワサのATVに乗ってみた!
マジでハンパなかったのはBRUTE FORCE 300。271㏄の水冷4ストSOHC単気筒エンジンを積み、極低速で鬼トルクを発揮する。ダブルウィッシュボーンとスイングアーム式リアショックの前後サスペンションで、どこへだって行けて、どんな急坂も上れるのではないかと思うほどの走破力を誇る。
KFX90とKFX50はキッズ向けの車両だが、侮るなかれ。小排気量であってもパワーがすさまじく、バイクのようにしっかりニーグリップ(両膝で車体を挟み込む)していないと、コーナリングの遠心力や段差を乗り越えた際の衝撃で乗り手だけ吹っ飛ばされそうになる。それくらい走りは超エキサイティング!
アクセルはバイクのようにグリップを握るのではなく、スロットルレバーを押し込む。ハンドル両側の左右レバーがブレーキで、操作方法は水上バイクに近い。トランスミッションはCVT(無段変速機)でギアチェンジはナシ。
また、旋回時は車体が倒れ込まないので、曲がるときはハンドルをしっかりと切ることが重要になる。車体は軽量コンパクトで、サスペンションのストローク量に余裕がありデコボコ道も鬼攻め可能。気がつけばアオキは汗ビッショリ。二輪のモトクロスに匹敵する運動量が必要となるマシンであった。
正直言って、試乗前はATVの魅力にピンとこなかったが、男ならこのワイルドな走りは絶対に味わうべし。いい運動になるぞ!
●青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営