ガソリン価格の高騰がもうどうにも止まらないニッポン。全国の自動車ユーザーからは悲鳴が! そこで、好燃費のクルマを一挙大公開。さらにカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が"本当に買い"のエコカーも教えてくれた!
*実燃費は編集部が独自に調査。走行時の環境(渋滞など)や運転方法(エアコンの使用など)で燃費は異なります。
■トヨタ勢の実燃費がハンパねぇ!
――ガソリン高騰に歯止めがかかりませんね?
渡辺 政府は補助金を拡充し、10月中にレギュラーガソリンの価格を1L当たり175円程度の水準にするそうですが、小手先ではなく、抜本的な改革が必要でしょうね。
――SNSでは、ガソリン高騰に頭を痛める自動車ユーザーらが、《愛車は燃費が悪いからガソリン代がキツい》《お金があれば燃費のいいクルマに乗り替えたいよ》とボヤいています。
渡辺 そこで今回、実燃費の優れたクルマを紹介します。
――まずは「実燃費」の説明からオナシャス!
渡辺 そもそも新車が掲げる「カタログ燃費」というのは、国が定めたテスト法に沿う形で計測された燃費です。一方、実燃費は実際に公道を走らせたときの燃費。夏場ならエアコンを使いますし、渋滞もある。要するに実燃費とは公道走行時の1L当たりの距離を指します。
――ちなみに今回紹介する実燃費のデータは週プレが自動車関係者などに徹底取材したデータを基に作成しました。
渡辺 私も試乗などで実燃費は常にチェックしていますし、これまであらゆる媒体で「実燃費テスト」などを行なってきました。それを踏まえて解説したいと思います。
――今回、自動車関係者に最も実燃費に優れたクルマを聞いて回ったんですが、「トヨタのヤリスとアクア」という声のみでした。
渡辺 ヤリスとアクアは本当に燃費がいいですよ。ヤリスがやや燃費に優れていますが、正直言って使い方によっては、アクアが上回る場合もあるかと思います。ただ、ヤリスは車格を考えると価格が高く後席が狭い。
一方のアクアはヤリスに比べると後席が広く、内装や乗り心地も上質です。なので、購入時は販売店の試乗車を乗り比べてから判断してほしいですね。
――セダン部門でぶっちぎりに強かったのはトヨタのカローラアクシオです。このクルマって......古くないスか?
渡辺 実はカローラアクシオのデビューは2015年で、厳密には先代モデルになります。現在も新車として継続販売されている理由は、5ナンバーで取り回しが楽なんです。それで引き合いがある。
――現行モデルのカローラセダンは3ナンバーですよね?
渡辺 そうです。19年に3ナンバーサイズのカローラセダンとツーリングの発売時に開発者を直撃しました。そのとき、「アクシオはたぶん今後2年くらいで販売を終えるでしょう」と説明していましたが、23年9月の時点でも販売していますね。
――設計が古いのに、なぜ実燃費がスゴいんスか?
渡辺 車両重量が1140㎏と非常に軽い。しかも、5ナンバー車で車体がコンパクトなので空気抵抗も小さくなる。それが良好な実燃費の秘密ですね。正直、安全装備などの設計が古く、現時点で積極的に推奨できるクルマではありませんが、217万7000円という低価格は魅力ですね。
――人気の高いSUV部門はトヨタライズとダイハツロッキーの兄弟車が戴冠!
渡辺 ボディは小さいですが、後席にも大人がシッカリ座れます。外観のカッコ良さ、運転のしやすさ、居住性、そして燃費にも優れており、推せるクルマですね。
■ディーゼルと軽を激推しする理由
――そしてミニバン部門はトヨタのシエンタです。
渡辺 ボディサイズの割に車内は広く、HEV(ハイブリッド)は走行音も静か。実用域の駆動力にも余裕がありますよ。
――そしてディーゼル部門はマツダのマツダ2です。
渡辺 パワフルな動力性能と低燃費を両立させたいユーザーには、マツダ2のクリーンディーゼルターボを推奨します。直列4気筒1.5Lクリーンディーゼルターボは、実用回転域で2.5Lのガソリンエンジンに相当する動力性能を発揮します。
しかも燃費に優れ、軽油価格はレギュラーガソリンに比べて1L当たり20円ほど安い。コンパクトカーのHEVより価格もお手頃。ズバリ、お買い得!
――軽自動車部門&ガソリン車部門はダイハツのミライースです。
渡辺 低燃費を実現するには、クルマを小さく、軽く造るのがポイントです。この点では、軽自動車のベーシックな車種は大注目です。ミライースはボディも軽くて燃費もいい。しかも、衝突被害軽減ブレーキなどを標準装着しながら価格は100万円を切っている。
ただし、ライバルのスズキアルトも捨て難い。ミライースの購入を検討する場合は、ぜひアルトと比較してほしい。どちらもお買い得!
――他メーカーの実燃費は?
渡辺 トヨタ以外のメーカーもHEVに力を入れています。日産のe-POWERは、トヨタほどの低燃費ではありませんが加速は滑らかで動力性能にも余裕があります。ホンダもe:HEVを採用し、燃費はおおむね良好です。
――スバルは?
渡辺 スバル自慢の水平対向エンジンは楽しく感動できる半面、昔から燃費は頭痛の種で(笑)。ただし、近年はスバルも燃費に本気モード。MHEV(マイルドハイブリッド)を搭載するなど、燃費向上に力を注いでいます。
●渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務める。"クルマ購入の神様"。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員