トヨタの新車攻勢が大きな話題を呼んでいる。なぜこんなに注目を浴びているの? 新型はどこがどう変わったの? 取材に飛び回った自動車研究家の山本シンヤ氏が解説する。
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■シン・センチュリーは2500万円
――トヨタの新車ラッシュがハンパないと話題です。
山本 まず6月にフルモデルチェンジを受けたのがトヨタのドル箱ミニバン・アルファード&ヴェルファイアです。
――今回の新型で何代目?
山本 4代目です。新型はプラットフォームを含めて大刷新しました。〝大空間高級サルーン〟として振動・騒音対策、燃費や走りといった基本性能を徹底的に磨き上げてきましたね。
――売れ行きはどうスか?
山本 取材の感触だと人気大爆発という感じです。ただ、現在発売されているのは一部グレードです。今後、PHEV(プラグインハイブリッド)が追加設定されるそうですよ。
――しばらくアル・ヴェル旋風が吹き荒れる?
山本 そう思います。
――続く8月2日にはランドクルーザー(以下、ランクル)250が初公開されて、世界的な大ニュースになりました。そもそもどんなクルマ?
山本 ランクルはトヨタBJ型として1951年8月1日に誕生し、今年でシリーズ生誕72周年を迎えました。世界中のユーザーに育てられ、鍛えられたことで、「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」として信頼性・耐久性・悪路走破性の継承と進化を続けながら、現在までに約170の国と地域で、累計1130万台のランクルが人々の命や暮らしを支えています。
――今回発表された250はどんなモデルなんスか?
山本 ランクルの中核となるモデルで、高級志向の300に対して質実剛健。まさにランクルの原点に戻ったモデルですね。GA-Fプラットフォームを採用し、オフローダーとしての基本性能はもちろん、オンロード性能も大きく向上していると思います。
――ランクルの発表会ではサプライズがありました。
山本 日本市場では2度目の復活となるランクル70が登場し、歓喜の声がSNSにあふれ返っていましたね。
――前回のランクル70は、期間限定の販売でした。
山本 今回は限定販売ではありません。ちなみにエンジンは力強い動力性能と低燃費を両立する2.8リットルのディーゼルに6速ATを組み合わせたワゴン(前回はバンとトラックの1ナンバー)仕様です。今回、3ナンバーになったことで以前より維持費(車検、税金、保険)のハードルは下がったかと。
――そして9月6日にはトヨタが誇るセンチュリーのワールドプレミアがありました。
山本 センチュリーは、トヨタグループの創始者・豊田佐吉氏の生誕100年を記念し、専属運転手がいるオーナー向けの車として1967年に発売されました。累計販売台数は4万2000台です。現行のセダンモデルは、2018年に発表された3代目ですね。
――今回発表されたモデルはSUVですか?
山本 いろんなメディアがSUVと言っていますが、トヨタを取材すると、現行モデルはセダンで、今回発表された新型モデルは〝シン・センチュリー〟。つまり、新世代のセンチュリーであると。
――なるほど。シン・センチュリーは、メカニズムもスゴいと話題です。
山本 セダンはHEV(ハイブリッド)ですが、今回発表された新型はPHEVの電動4WDです。さらにリアドアはスイングドアに加えてスライド式も設定されています。すでに注文受付が始まり、発売は今年中を予定。ちなみにお値段ですが、2500万円です。
――スゲェー。山本さんはもう試乗されたんスか?
山本 いいえ。ただ、シン・センチュリーの生みの親は豊田章男氏です。彼はトヨタの会長であり、マスタードライバーです。豊田氏の「OK」が出ないとトヨタのクルマは世に出ません。
――走りにも期待できる?
山本 今回、豊田氏を直撃したら、「センチュリーはトヨタの全ラインナップの中で唯一運転席に座って評価をしないクルマなので、今回は後席に座って評価をしています。
マスタードライバーは何も運転するだけが仕事ではなく、『こんなクルマが欲しい』というクルマのプロデュースや、発売前最後の判断をする人でもある。そこは今後もブレません」と語っていました。
――これらのクルマは今年10月開催の「ジャパンモビリティショー」に出展される?
山本 どういう形になるかはまだわかりませんが、展示されるとは思います。ぜひご自身の目で確かめてください!
●山本シンヤ
自動車研究家。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ワールド・カー・アワード選考委員。YouTubeチャンネル『自動車研究家 山本シンヤの「現地現物」』を運営