1位 メグロ S1 1位 メグロ S1
4年ぶりの開催となった東京モーターショーは「ジャパンモビリティショー」に名称を変え、ただいま絶賛開催中。クルマだけでなくバイクも見応え満点だ! そこで、魅惑のマシンの中から刺激的な7台を勝手に決定! 審査委員長はモーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏だ。

■胸アツマシン連発のカワサキ!

ナンバーワンはカワサキからだ。「ジャパンモビリティショー」になり、近未来の乗り物ばかりが展示され、われわれバイクファンは置き去りになった気分にさせられるのではないかと、開催前は不安な気持ちも少なからずあったが、そこは〝漢(おとこ)〟カワサキ。昭和のアツすぎるバイクファンをも歓喜させてくれるバイクを大連発!

まず筆頭が「メグロS1」。コイツはチョーやりすぎにも程があり、バイクファンを大いに喜ばせている。そもそもの話をすると、1965年に川崎重工業へ吸収合併された目黒製作所「メグロ」は、戦前の1924年(大正13年)に設立された日本の二輪メーカー。〝和製ハーレー〟とも言われた「陸王」と双璧をなす由緒正しきブランドで、名車と呼び声高い「カワサキ500メグロK2」はアオキが30年間所有するカワサキ「W1」のルーツになるなど、カワサキ4ストロークビッグバイクの歴史の礎になったのだ。というのも、メグロ合併前のカワサキは小排気量2ストロークモデルが主流。今となっては信じられない話である。

メグロ SG(1964年) メグロ SG(1964年)
熱狂的ファンを持つメグロは、2021年2月にカワサキW800をベースに「メグロK3」として55年ぶりに復活。「メグロS1」は、今回同時発表の新型「W230」をベースにしている。モチーフとなったのは1964年式の「メグロSG」で、両車が並ぶ姿はファンなら垂涎確実! オーソドックスなスチール製セミダブルクレードルフレームにシリンダーが軽く前傾する空冷単気筒エンジンを搭載。燃料タンクのエンブレムは、クロームメッキで仕上げられ誇らしげだ。

カワサキ W230 カワサキ W230
クロススポーク仕様の前後ホイールやキャブトンタイプマフラー、サイドカバーに片仮名で入る〝メグロ〟の文字など、タイムスリップしたかのような佇まい。カワサキの担当者にネチネチ聞いたら、新型「W230」ともども国内導入を明かしてくれたぞ!

続く2位もカワサキだ。今夏、新開発のヨンヒャク4気筒で話題を独占した「ニンジャZX-4RR」が、レーサーレプリカブームの1990年に発売された「ZXR400R」の白×青×緑という伝説カラーを身にまとって登場。コイツは初代ニンジャである「GPZ900R」(1984年)の誕生40周年を記念したアニバーサリーエディションで、早ければ11月に国内発売のアナウンスがあるかも。こりゃ来年もニンジャ旋風が続きそうだ。

2位 カワサキ ニンジャZX-4RR 2位 カワサキ ニンジャZX-4RR カワサキ ZXR400R(1990) カワサキ ZXR400R(1990) カワサキ GPz900R(1984) カワサキ GPz900R(1984)
3位はヤマハ「XSR900GP」。3気筒エンジンを積む現行マシン「XSR900」をベースにしているが、ハーフカウルのカラーは1982年の「YZR500」(OW61)をはじめとしたグランプリレーサーを再現したもの。80年代から90年代前半の「FZR」や「TZR」「YSR」らが採用した懐かしすぎる白×赤カラーだから、もうタマらないっ! GPマシンを彷彿とさせる黄色ゼッケンを邪魔しないよう、アッパーカウルフロントマスクに小型LEDヘッドライトを内蔵するあたりは、チョーやりすぎとしか言いようがない。2024年夏以降に国内発売するぞ!

3位 ヤマハ XSR900GP 3位 ヤマハ XSR900GP ヤマハ YZR500(OW61) ヤマハ YZR500(OW61)

ヤマハブースで目を疑ったのは、90年代半ばからストリートバイクブームを巻き起こした「TW」が3輪の参考出展車になってよみがえっていたことだ。アオキはこのTMWを4位に推したい。TMWはヤマハの車両実験部の有志によって手作りされたと、担当者が教えてくれた。トリシティに用いるヤマハ独自のフロント2輪機構を採用することで、二輪のように車体を傾斜させてコーナリングすることができる。オフロードでも走破力が高く、タイヤの太いTWがより有利とベース車両に選んだという。

左右ふたつの前輪にモーターを内蔵させ、後輪は従来どおりエンジン駆動とする。つまりHEV(ハイブリッド)による全輪駆動だ。車体が傾いても、フロントの荷台は水平を保つから、さまざまなものを運べると無限大の可能性を秘めている。かつてはバイクでの過酷な探検にも使われたTWだが、こいつはタフネスバイクとして〝史上最強〟かもしれん。

4位 ヤマハ TMW 4位 ヤマハ TMW
5位はスズキの「eチョイノリ」。5万9800円という驚愕の低価格で2003年に発売された原付1種のスクーターが、カワイイ顔とサイズ感はそのままに電動化された。パワーユニットやバッテリーはパナソニックの電動アシスト自転車用で、航続可能距離が懸念されるEVバイクも片道10㎞以内を想定するチョイノリなら不安もないし、文句もあるまい。リヤサスのない超シンプルな車体のまま発売されれば、20年後もチョー破格プライスを実現する可能性大とみた!

5位 スズキ eチョイノリ 5位 スズキ eチョイノリ
スズキからはもう1台、「水素エンジンバーグマン」(試験車両)が6位だ。市販モデルの「バーグマン400ABS」をベースに、70気圧の水素タンクを積むためにホイールベースが延長されているだけで、外見上の違いはほとんどない。今回、タンク位置がわかるようにカットモデルで展示したが、スズキの担当者によれば「マフラーから水が出るだけで、音や走行感覚も従来と変わらない」と教えてくれた。加えて、「インジェクターなど一部を変えれば内燃機エンジンをそのまま使えるので、実現性が高い」という。だが、解消すべき問題がある。水素ステーションの整備拡充などのインフラだ。

6位 スズキ 水素エンジンバーグマン 6位 スズキ 水素エンジンバーグマン
7位はホンダの「モトコンパクト」。工具不要で箱状に折りたたみ、持ち運びできる電動パーソナルモビリティは画期的だが、開発者は折りたためるバイクとして1981年に発売された原付1種「モトコンポ」にヒントを得ている。

実際に跨(またが)って、持ち運びさせてもらうなど担当者は出来栄えの高さに自信満々だ。完成度がやたら高いと思ったら、北米にて11月に995ドル(約15万円)で発売することが決まっているとのこと。すぐさまアオキは「日本でも売って!」と大絶叫するも、残念ながら「法規上の問題で難しい」とのこと......。最高速は時速40㎞、3時間半の充電で約19㎞走れる性能を持つのに、なんとも、もったいない話である。

7位 ホンダ モトコンパクト 7位 ホンダ モトコンパクト
次点には、カワサキ「ニンジャ7ハイブリッド」。水冷4スト並列2気筒451㏄エンジンに最大9kWの駆動用モーターと48Vリチウムイオンバッテリーを組み合わせたHEVバイクで、ヨーロッパでは年明けに店頭に並ぶ。内燃エンジンと電気モーターを組み合わせる量産型ストロングハイブリッドは世界初。アオキ的には、日本上陸は間違いないとにらんでいる。レトロムードのメグロやレーサーレプリカカラーを復刻させるなど昭和のバイクファンを歓喜させつつ、最先端も走るカワサキ。やっぱりチョーやりすぎだぜぇぇぇ!!

カワサキ Ninja 7 ハイブリッド カワサキ Ninja 7 ハイブリッド
●審査委員長 青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営