ヤマハ モトロイド2 実に滑らかな動きで女性ダンサーのジェスチャーに従っていたモトロイド2。ペット感がハンパなかった ヤマハ モトロイド2 実に滑らかな動きで女性ダンサーのジェスチャーに従っていたモトロイド2。ペット感がハンパなかった

111万2000人が詰めかけたジャパンモビリティショー2023。連日大入り満員の会場でファンらを熱狂させたのがヤマハブース。ズバリ、何がスゴかったの? モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が鬼解説!

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■トランスフォームするモトロイド2

――ジャパンモビリティショー2023で、ヤマハが披露した「モトロイド2」がファンらをたぎらせまくったそうですが、見た目の近未来感もハンパないスね!

青木 そもそもコンセプトモデルというのは、二輪・四輪問わず、近未来感バッキバキの外観に仕立て上げますからね。ただ、見た目だけで終わらせないのが〝ヤマハ流〟。

――具体的には?

青木 モトロイド2は、まず自分で起き上がり、スタンドなしで静止します。人がジェスチャーで呼び寄せることも可能ですし、所定の位置へと非常に滑らかな動きで走って戻れる。要するに自律走行できるガチマシンです。

――確かに「もはや生き物レベル!」という声が会場のアチコチで飛び交っていました。ちなみに〝2〟ということは初代もあった?

青木 2017年の東京モーターショーで世界初公開し、二輪の自律化や人工知能を用いた認識機能など、ヤマハの先進技術を〝鬼盛り〟し、世界三大デザイン賞を総ナメ!

――そんな初代と2代目はどこがどう違う?

青木 すべてが異次元レベルに進化しました。そのひとつがトランスフォームです。

――ト、トランスフォーム!?

青木 2代目はライダーがシートに座って操作するだけでなく、立ち乗りもできます。リーフと名づけられた車体前面部の外装がムクリと起き上がり、ライダーの上半身を支え、グリップの代わりとなる。

ご覧のように立った状態で、両手をハンドルから放しても、モトロイド2は安定した姿勢をキープ ご覧のように立った状態で、両手をハンドルから放しても、モトロイド2は安定した姿勢をキープ

――つまり、既存の乗車スタイルを変えたってこと?

青木 そのとおり。ハンドル操作なしに、ライダーが立ったままバックもできてしまう。低速走行を前提にした前例のないライディングポジションで、上半身の動きが制限されないし、下半身は両膝を置くニーパッドがあり、車体を足で挟み込んで支えられる。ヤマハの開発陣いわく、「いかに人が美しく見えるか」を考えたそうです。

――ところで二輪なのに倒れないのはどうして?

青木 事故のない社会を目指すヤマハは、二輪安定化支援システム「アムセス」を開発。時速5キロ以下の低速域で車両を安定させる制御技術で、車両自身で倒れず静止・前進することが可能です。

車体の軸を中心に、バッテリーを積むボディが錘(おもり)となりつつも、リアアーム(後部車輪につく部品)とリアホイール周りが素早く回転運動をする。

2代目では操舵(そうだ)との協調技術などを追加することで、より複雑かつ安定した自律を実現するようにアップデート!

――モトロイド2のキモはアムセスであると?

青木 ほかにもあります。画像認識のためのカメラを前方左右に加え、ライダーの顔をとらえる位置の4方向に増設しています。さらにAIと連携し、常にライダーの意思を汲(く)み取れるようになっています。

例えば、人とマシンが散歩するように並んで歩いたり走ったりすることができるし、認識可能なジェスチャーの数も格段に増えていますね。

ヤマハはモトロイド2のほかにも魅力的な試作車を大放出していた ヤマハはモトロイド2のほかにも魅力的な試作車を大放出していた

――ちなみに青木さん、初代に乗った経験があるそうですね?

青木 ヤマハコミュニケーションプラザ(静岡県磐田市)に展示された際に、開発担当者の許可を得て、呼び寄せて乗るところまで特別取材させてもらいました。そのとき強く感じたのは、モトロイドから漂うペットのような愛くるしさです。

合図を送ると、眠りから目覚めるように車体をくねらせ、ゆっくりと自立し、自分の元へやって来た。見た目は無機質で、動物のような姿は一切していないのに、親しみや愛着を感じる振る舞いが印象に残っています。

――ふむふむ。

青木 ですから、 2代目は人間とマシンの新しい関係性を検証するべく、「人生の伴侶」というコンセプトが掲げられています。既存のバイクを操作するには、ハンドル、シート、ステップを介した入力が前提ですが、人間とマシンが呼応する、通じ合うための感覚器官を持たせようと。

――感覚器官!

青木 そこで、2代目は外装の大半がインターフェース(装置と人間の境界面)に。その最たるものが先ほど話をしたリーフ。状況に応じて最適なトランスフォーム機能を持ち、体を受け止めるだけでなく、〝触覚〟の役割も。そして、触覚の反応を視覚化するために発光表現も採用。

――ズバリ、市販化は?

青木 その完成度の高さから、ファンらはネットで価格検索をしていましたが、市販化のめどは立っていません。ヤマハがやろうとしていることは、すべてにおいて規格外。アオキの取材の感触だと、われわれが想像もしない先へとモトロイド2は進化します。

ヤマハ発動機 日髙祥博社長 日髙社長は「人とマシンの関係を超えた存在という概念にまた一歩近づいた」とモトロイド2を評価 ヤマハ発動機 日髙祥博社長 日髙社長は「人とマシンの関係を超えた存在という概念にまた一歩近づいた」とモトロイド2を評価

――ほかにも注目が?

青木 まずは水素エンジンを搭載した四輪バギー「YXZ1000R」。ヤマハ発動機の日髙祥博(ひだか・よしひろ)社長は、「(ヤマハの)社名に〝発動機〟とあるように、内燃機関への強い思いがある」と語っていました。

それからフルオープンEVのコンセプトモデル「トライセラ」。横並びの2シーターとした三輪スポーツカーで、昔から「意のままに操る喜び」を追求してきたヤマハらしく、日髙社長も「ハンドリングのヤマハを体感できる」と胸を張っていましたね。

ヤマハ YXZ1000R 水素エンジンを搭載したヤマハのオフロードバギー。環境を考慮し、塗装ではなくラッピングを採用 ヤマハ YXZ1000R 水素エンジンを搭載したヤマハのオフロードバギー。環境を考慮し、塗装ではなくラッピングを採用

ヤマハ トライセラ 三輪フルオープンEVが登場。ヤマハは走りに自信満々。専門家筋も「試乗したい」とノリノリ ヤマハ トライセラ 三輪フルオープンEVが登場。ヤマハは走りに自信満々。専門家筋も「試乗したい」とノリノリ

――では、最後に総括を。

青木 ヤマハの最新技術はマジでチョー激アツです!

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