青木タカオあおき・たかお
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営。
11月末、静岡県伊豆・修善寺で、BMWの二輪で一番売れている看板モデルの試乗会が行なわれた。新型はどこが磨かれ、どんな走りになった? モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が現地で徹底試乗した!
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青木 BMW自慢のアドベンチャーの新型「R1300GS」が発売され、速攻試乗してきました!
――すみません、アドベンチャーってなんスか?
青木 未舗装路も走破でき、道を選ばずタフな長旅の相棒となるのがアドベンチャーと呼ばれるセグメント。昨今は特に人気が高く、肝煎りの新モデルを各社こぞって投入するチョー激戦区になっています。
――今回試乗したR1300GSってどんなモデル?
青木 GSの世界累計販売台数は100万台で、年間6万台以上を売っています。ちなみにアドベンチャー市場でのシェアは実に6割を誇ります。
――スゴっ! マジか!
青木 当然ですが、販売台数はBMWの二輪トップです。BMWモトラッドジャパンの責任者である佐伯 要GM(ジェネラルマネジャー)も、「ブランドを象徴する重要なモデルで、まさに横綱」と胸を張っていましたね。
――文字どおりBMWモトラッドの屋台骨を支えるモデルであると。ところで、新型に触れた率直な感想はいかがです?
青木 今回のフルモデルチェンジは、90%以上のパーツを新作しているんですが、まず実車にまたがった瞬間に感じたのは、「軽量スリムになったな」と。実際、従来型のR1250GSから12㎏の軽量化を実現しています。そのため車体もスッと引き起こせるようになりましたね。
――足つき性もいいとか?
青木 足つき性はとてもいいですね。実はこの新型、停止時にはシート高が820㎜まで自動で下がり、走行時には車高が戻る「アダプティブ・ヴィークル・ハイト・コントロール(車高調整機能)」を搭載しているんですよ。
――なるほど。一方、気になるのは走りの感想です。
青木 走り出すと、従来よりハンドルまわりへの衝撃が極端に減っているのがわかりました。これはテレレバーと呼ばれる独自のフロントサスが進化を果たし、段差を乗り越えて受ける衝撃を車体側でほとんど受け止め吸収してくれるからです。
また、1254㏄から1300㏄に排気量がアップしたボクサーツインエンジンは最高出力145PS、最大トルク149Nmを発生、史上最もパワフルになり、余裕の走りを実現しています。
――ツーリング時の疲労度はいかがです?
青木 エンジンの前後長を短縮したことで、スイングアーム(車輪と骨格をつなぐパーツ)を30㎜延ばせました。結果、駆動輪の路面の食いつき(トラクション性能)が大幅に向上しています。そのためオフロード走行は非常に安定していますね。さらに疲労を軽減する最新技術もブチ込まれているんですよ!
――それはなんです?
青木 新採用の「ACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)」です。まさに異次元の快適さでしたよ。
――どんな機能なんスか?
青木 前方を走るクルマとの車間距離を自動で保ち、衝突を防ぐためにブレーキも自動でかけてくれます。四輪で採用されているシステムですが、二輪用に最適化され搭載されています。こうした技術力の高さは、二輪と四輪、両方を開発して販売するBMWならではの強みといえるでしょうね。
――そんな最新技術鬼盛り状態の新型ですが、日本市場での販売状況は?
青木 ネットなどで新型の存在を知ったファンらが正規販売店にダッシュ! 価格発表前にもかかわらず、予約が入っていたそうです。今回、直撃した佐伯GMも自信たっぷりで、この新型がどこまで販売を伸ばすか見ものですよ!
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営。