青木タカオあおき・たかお
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営。
"びんびん"とは何か? 男心を刺激するにも程がある珠玉のバイクのことである。今年、各バイクメーカーからブッ放された魅惑のマシンの中から、7台の受賞車を独断のみで決定。選考委員長は取材の鬼、モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏!!
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――それでは青木委員長、早速発表をお願いします。
青木 発表します。栄えある第1位はヤマハのXSR125に決定しました!
――近年、爆売れを続ける原付二種(125cc)クラスの新型ですね。
青木 はい。日本自動車工業会によると約10年前と比べ、原二の出荷台数は30%以上増え、ニッポンのバイク市場の約33%を占めています。
――多くのライダーが沼る、チョー激戦区に投入されたヤマハの新型ってどんなバイク?
青木 新型は魅惑のフルサイズボディに加え、10月から毎月立て続けに3機種が市場に投入されました。先陣を切ったのは、10月16日発売のYZF-R125。
続いて11月10日発売のMT-125、そして大トリを飾ったのが12月8日発売のXSR125。見た目こそ違いますが、エンジンと基本骨格は共通という3兄弟なので、まるっとすべて表彰したいところですが、1台を選ぶならXSR125で決まり!
――その理由は?
青木 XSR900やXSR700という兄貴分がそうであるように、ヤマハが誇る往年の名車をオマージュしたスタイルを踏襲しつつも、現代的な先進装備を持つ、いわゆる〝ネオレトロ〟と呼ばれる激アツの人気スタイルに仕上がっているからです。
――ところで、ヤマハはなぜ3台も連続投入した?
青木 ライダーの若返りを本気で考えた結果ですね。
――ん? どういうこと?
青木 現在、新車・中古車を問わず、バイクは値が張ります。そこで若者やビギナーがもっと手軽にバイクライフを始められるよう、ヤマハはお手頃価格の125㏄クラスに本腰を入れ、ラインナップを充実させたってわけです。
――試乗した感想は?
青木 まず、車体が大柄で上質感がある。前後のタイヤサイズは大型モデルも採用する17インチで、ハンドリングは軽快ながらも落ち着きがあり、乗り心地も125㏄とは思えないほど快適です。
倒立式フロントフォークや専用設計の多機能デジタルメーター、LEDの灯火器類などクラスを超えた装備は圧巻! 開発チームも「妥協なしに造りました!」とドヤ顔でした。
――でも、125㏄って非力なイメージがあります。
青木 ところが、このヤマハの〝シン・125㏄3兄弟〟は全域で力強く、アクセル操作にレスポンス良く反応します。これは可変バルブ機構を搭載しているからで、7400回転で低中速用から高速向けのカムに切り替わる。上級スポーツモデルに採用されてきた技術を惜しみなくブチ込んだ、まさにびんびんモデル!
――そろそろ2位を。
青木 びんびんさならホンダのCL250も負けていません! シンプルな車体構成で、オールマイティに使えるのがポイント。前輪は不整地も走れるように19インチと大きく、おおらかなハンドリングを生み出している。
単気筒エンジンは市街地で多用する低中速トルクが太くて扱いやすい。90年代後半に大ブームとなったストリートバイクの気軽さとファッション性を兼ね備え、若者ライダーに大人気!
――3位はどうなる?
青木 カワサキのニンジャZX-4R/RRです。完全新作の4発(4気筒エンジン)にはド肝を抜かれました。甲高いサウンド、そしてクラス最高の77馬力が織り成すパワーのカタマリ感は実に官能的。車体はニーハン並みに軽く、加速はOhモーレツ!
――4位をどうぞ。
青木 スズキⅤストローム250SXは外せない。スリムで足の長い車体に、スズキ伝統の〝油冷エンジン〟を新開発して搭載!
フロントには19インチの大径ホイールを備えており、オフロードの走破力はハンパない。くねくね道の続く峠もキビキビ走り、クラスを超えたクルージング力と快適性能を持ち合わせていて長旅の相棒にもなってくれる。
8個のLEDを3列に配置したヘッドライトは精悍! ライトウエイトアドベンチャーの楽しさを見事に体現し、ニーハンの価値を一気に上げてくれました。
――そして5位はなんだ?
青木 2017年末の発売から破竹の勢いで売れ続けるカワサキZ900RSに、イエローボールエディションが新登場!
Z900RSは1972年に発売された伝説の名車Z1をオマージュしたモデルで、キャンディグリーンとイエローのカラーは火の玉カラーと並ぶチョー人気色。重ね塗りを施す現代の最新技法で、艶やかさと重厚さを表現しながら、令和によみがえらせました。
さらにサイドカバーのエンブレムは「Z900RS」ではなく、Z1がそうだったようにあえて「900」に変更するなど、往年のファンならびんびん&悶絶ヨガリ泣き確実です!
――6位にいってください。
青木 〝中免(普通二輪免許)で乗れるハーレー〟として話題を呼んだX350です!
――10月20日に鳴り物入りで発売されましたが、最新の販売状況はどんな感じスか?
青木 発売1ヵ月で1000台もの受注が入りました。ハーレーダビッドソンジャパンは、導入数を大幅に増やし、空前の大熱狂に対応していくとのこと。人気びんびん!
――いよいよ7位です。
青木 ホンダの国内一般向けでは初のEVモデルとなるEM1e:です。これまで法人向けのリースで、ホンダは徹底的にデータを収集し、技術とノウハウを高めてきました。まずは最も手軽な原付一種で発売し、多くの人にEVに親しんでもらうのが狙いです。
アオキが高く評価したのは、車体から取り外して持ち運びのできる交換式バッテリー。こちらはカワサキ、スズキ、ヤマハと共通仕様にし、エネオスの交換ステーションなどでシェアリングできます。脱炭素実現への大きな第一歩ってことで、2023年の神セブンにランクイン!
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営。