コックピットは機体の胸部にある。ちなみにシートは、4点式シートベルトを備えたレカロ製バケットシート コックピットは機体の胸部にある。ちなみにシートは、4点式シートベルトを備えたレカロ製バケットシート
東京モーターショーから名前を変え、今秋に開催された「ジャパンモビリティショー2023」。東京ビッグサイト(東京都江東区)などを中心に行なわれ、来場者数は111万2000人。この大イベントで話題を呼んだのが、4億円のロボット「アーカックス」。令和に誕生した動く搭乗型ロボの全貌に迫った。

■ベンチマークはハイパーカー

過去最多となる475社が出展したジャパンモビリティショーで、ド派手に目立っていたのが搭乗操作型変形ロボット「アーカックス」。全高4.5m、重量3.5tのワガママボディは、わずか15秒でクルマにも変形する。速いのか遅いのかは正直言ってよくわからないが、重心を低くした「ビークルモード」では、最大時速10kmでの走行が可能だという。

週プレが取材に向かったのは、ジャパンモビリティショーの一般公開に先立ち行なわれたプレスデーだった。ちなみにアーカックスが展示されていたのは南棟の4階。微妙にわかりにくい場所だったが、常に報道陣が群がっていた。

カメラを向けると、お願いするまでもなく、アーカックスと同じポーズを取ってくれたツバメインダストリの吉田龍央表取締役CEO カメラを向けると、お願いするまでもなく、アーカックスと同じポーズを取ってくれたツバメインダストリの吉田龍央表取締役CEO
このロボットを開発したのは「ツバメインダストリ」(本社・東京都江戸川区)。展示スペースでは、同社の代表取締役CEOの吉田龍央氏(25)が報道陣の対応を行なっていた。機体の胸部にある操縦席に滑り込んだ吉田氏が、報道陣に向けて声を張る。

「コックピットはココになります」

ボディの外部にカメラが9個あり、その映像が操縦席にある4面ディスプレイに映し出される。9個のカメラ映像はパイロットの操作に応じ、自動で最適な画面に切り替わり、バッテリー残量や機体の情報なども映し出される。

吉田氏がコックピットから操縦し、アーカックスの腕や指、腰などが可動する。そのたびに、老若男女問わず、「おおー」「はー」という素の声が漏れる。ビークルモードに変形すると拍手まで起きた。

アーカックスのデモンストレーションを終えた吉田氏を直撃する。彼は前夜、テレビの報道番組に出演していた。その話を振ると、照れくさそうにこう言った。

「髪の毛が......額の汗で変な感じになっていましたね(笑)」

どこにでもいる若者の顔だった。だが、アーカックスは誰でも購入できるのかどうかを問うと、彼の表情は経営者のそれに変わり、やや食い気味に「買えます」と答えた。アーカックスのお値段は1年分の保守メンテナンス費用を含めて4億円。そこで、イメージする競合を聞いてみる。

「ベンチマークはフェラーリやランボルギーニなどのハイパーカーです。このハイパーカー市場は1億5000万円以上の自動車が年間で数千台出荷されています。その数パーセントでも取れるよう、購入層にリーチしていきます」

ビークルモードに変形するアーカックス。動力源は300VのバッテリーのEVだ。ちなみに後輪駆動車(FR) ビークルモードに変形するアーカックス。動力源は300VのバッテリーのEVだ。ちなみに後輪駆動車(FR)
つまり、アーカックスの顧客は世界のスーパー富裕層。しかし、そのスタートは実に明快であった。

「〝ロボットに乗って操縦したい〟という夢をかなえるような、究極の体験ができる製品をつくりたかったんです。日本はロボット産業、自動車産業、アニメ産業など技術大国です。それらの要素を詰め込んだのが〝ディス・イズ・ジャパン〟がアーカックスなのです。これから世界に向けて日本の技術力をどんどん発信していきたいですね」

そんなアーカックスの実機が、2023年12月24日までの期間限定で、横浜山下ふ頭にある『GUNDAM FACTORY YOKOHAMA』で展示されている。インバウンド需要が回復傾向にある今、アーカックスのクールジャパンぶりは注目の的になりそうだ。