青木タカオあおき・たかお
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営。
チョー魅力的な新型バイクが続々と登場し、売れに売れているニッポン市場! 今年の二輪業界の注目はどこ? モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が二大編集長に話を聞いたぞ!
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――2023年も活況だったバイク業界ですが、両編集長が注目した推しのバイクは?
松田 カワサキ・ニンジャZX-4Rにしびれましたね。ホンダCB400SFが生産終了し、消滅してしまった日本の〝ヨンヒャク4気筒〟を復活させ、史上最高の80馬力を達成! スペック至上主義で育った自分にとっては、ここ20年くらい忘れかけていた強いインパクトがありました。
レーサーレプリカ全盛を知る読者は歓喜し、誌面はもちろん、おかげさまでウェブ版でも大好評でした。
――千葉編集長は?
千葉 ホンダのEVスクーター・EM1e:ですね。読者の電動モデルへの関心度の高さもあり記事のPVは非常に伸びました。個人的にもバッテリーを国産4社(ホンダ、カワサキ、ヤマハ、スズキ)が共通化し、シェアリングサービスを始めたという点に将来性を感じましたね。
――補足すると、この4社の輪にエネオスも加わっています。今後、バッテリーステーションが全国展開されると普及が加速しそうですね。
千葉 国が補助金を使って電動アシスト自転車より実質安く買えるようにするなどして、普及に本腰を入れればEV原付ブームもあると思う。
松田 それで言うと、23年秋のJMS(ジャパンモビリティショー)でスズキが発表したeチョイノリは航続距離を短く割り切った見事な提案でした。チョイ乗りなら「EVでOK!」という、ひとつの解答を示しました。
――EVの普及はまず距離が決まっているコミューター(通勤・通学者)からでしょうね。ちなみに今、松田編集長の話に出たJMSでカワサキはニンジャ7ハイブリッドを発表しました。このバイクは世界初となるストロングハイブリッド搭載車です! さらに水素エンジンも公開されるなど、いよいよ〝脱炭素〟への動きがバイク業界でも加速してきたなという印象です。
千葉 一方でカーボンニュートラル燃料の存在も忘れてはいけない。レースの技術が市販車にフィードバックされれば、内燃エンジンが生き残る可能性は大いにある。
――続いては〝シン・原付免許〟について。ザックリ言うと、速度が出ないように改良した排気量125㏄のバイクを今後は原付免許、あるいは普通自動車の免許で運転できるようになる。この背景には差し迫った排ガス規制の問題がある。50㏄以下のバイクで規制を満たすには新たな技術開発が必要で、それには膨大な時間とお金が必要だとメーカーは頭を痛めていました。
松田 メーカーが言うとおり、生産コストを考えれば国内向けに50㏄を生産するには限界がきている。ただ、50㏄がなくなってしまえば公共交通機関のない地域の通学などに支障が出る可能性もあり、妥当な判断だと思います。
千葉 物申すッ! 安全面を考えたら従来どおりのままでいい。50㏄がなくなって困る人には免許を取得するための助成金を出せばいいだけの話です。
メーカーが馬力を抑える加工を施すコストを考えたら、そのほうがよっぽど安く済む。学生も免許を取得するため、しっかり運転技術を学んだほうが安全! 二輪業界にとっての未来も明るい。
松田 しかし、すでに警察庁が最高出力を4kWに抑えた125㏄を「新基準原付」として認め、原付免許で運転OKへと動き出したわけですし。
千葉 だからといって、「ハイ、そうですか」とそのまんま伝えるのがメディアの仕事でいいのでしょうかッ!?
――スッ、ストップ。シン・原付についてはひと晩かかっても結論が出ないと思うのでまた機会を改めます!
――ちなみに爆売れが続く125㏄クラスですが、24年もこの勢いは続きそうですか?
千葉 125㏄クラスの記事は、ウチではイチバン人気がある。
松田 超充実装備のヤマハYZF-R125、MT-125、そしてXSR125は注目ですね。
――なるほど。一方、23年はハーレーがアンダー400㏄モデルやアドベンチャーを発売し、BMWがアメリカンクルーザーを発売するなど、カテゴリーやクラスを超えた、まさに戦国時代に突入した感がありました。この世界的な動きをどう分析されている?
千葉 それぞれのジャンルに〝絶対王者〟がいる。当然、長年にわたって培ってきた技術やノウハウがあり、その強さは時間をかけて築き上げてきたもので揺るぎない。
さまざまなメーカーが新しいジャンルに手を出して挑んだとしても、そう簡単に絶対王者は倒せませんから、結果的にそれぞれのカテゴリーの横綱モデルのスゴさが際立つと思う。
松田 そもそもひと昔前なら各モデルが専用設計で造られ、メーカーもいろいろなカテゴリーに幅広く手を出すなんてことは難しかった。それが今できるのは、フレームとエンジンを共通化して、ロードスポーツからダートもいけるデュアルパーパスも造れてしまう解析技術の進歩がある。
人気セグメントに新型が攻め込むのは当然ですから、僕は横綱を倒すというよりも、マーケットを拡大すべくセグメント全体を盛り上げていこうというのがメーカー側の狙いではないかと。
――実はホビーユース(趣味や娯楽)向けのスポーツバイク市場が急拡大する中国やインドには成熟したニッポン市場のような、いわゆる骨格などへの強いこだわりがない。
千葉 これまでメディア側がエンジンの型式など、スペックにこだわりすぎた面はある。エントリー層にもわかりやすく噛み砕いたコンテンツを発信すれば、バイクの魅力はもっと広く伝わるはず。
――そういう意味で注目は「バイク女子」ですよ! 彼女たちの活躍は目覚ましい。バイクのニュースが誇る今年イチオシの秘蔵っ娘は?
千葉 小野木里奈(おのぎ・りな)ちゃんです。連載コラム執筆のために、車両のライドフィールを自分なりにしっかり確かめ、疑問があればメーカーの開発者たちに取材します。
――隠し玉は?
千葉 24年は虹(こう)ちゃんがバイクのニュースにリポーターとして本格デビューします。高校を卒業後に自動車整備の専門学校に入り23年春に卒業。現在バイクスクールでライディングを猛特訓中です。ふたりとも女性ライダーならではの切り口で記事を発信していきます。
――うおー、ぜひ「週プレバイク女子」を結成したいッ! 両編集長、そのときはご協力オナシャス!
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営。