藤島知子ふじしま・ともこ
モータージャーナリスト。レーシングドライバー(国際C級ライセンスを所持)。テレビ神奈川『クルマでいこう!』のパーソナリティ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
42回目を迎えた改造車の祭典「東京オートサロン」(1月12~14日)に今年も刺激的なクルマが大集結! てなわけで、モータージャーナリストのフジトモこと藤島知子(ふじしま・ともこ)氏が現地に突撃取材を敢行! 会場を駆け回り珠玉の10台を独断のみで勝手に選んできたぞ。
* * *
藤島 幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催された世界最大級のカスタムカーの祭典「東京オートサロン」に行ってきました! 毎年1月に行なわれるこのイベントは、今年で42回目の開催となります。378社が893台を展示し、3日間の開催で実に23万人超のクルマ好きが足を運びました。
――大盛況!
藤島 しかも、東京オートサロン開催の直前には、トヨタ自動車会長の豊田章男(モリゾウ)氏が、クルマ好きが立ち寄る首都高速の休憩施設「大黒パーキングエリア」にサプライズ登場! 東京オートサロンのチケットを若者に配りSNS上で大バズり!
――オートサロン本番でもトヨタブースから大ニュースが飛び出したそうで?
藤島 登壇した豊田章男氏が、「(自動車関連産業に従事する)550万人の仲間と一緒じゃないと未来を作っていけない。(トヨタの中で)新たにエンジン開発を進めるプロジェクトが進み始めた。皆さん、エンジンを造り続けていきましょう」と宣言! さらにマツダのトップからも熱き声が。
――ほお!
藤島 代表取締役社長兼CEOである毛籠勝弘氏が「ロータリーエンジンの開発チームを再結成する」と発表したんです。昔、セブン(マツダRX-7)に乗っていた私にはうれしい発表でしたね。
――今回のトヨタとマツダの発表をどうとらえています?
藤島 豊田会長、毛籠社長の言葉からは、BEV(電気自動車)一辺倒に向かおうとしている世界の流れをニッポンから変えていこうじゃないかという意気込みを感じました。
――ちなみに自動車メーカーは、あえてオートサロンを選んで電撃発表してんスかね?
藤島 東京オートサロンは今や自動車メーカーがエンドユーザー(利用者)と直接触れ合う一大イベントに成長していますから、所信表明には最適な場ですね。
――なるほど。では、そんな東京オートサロンを駆け回り、フジトモさんが勝手に選んだ1位はどれ?
藤島 昨年、1022万台超をマークし、世界販売で4年連続トップが確実となった最大手のトヨタの勢いが今年も止まりませんよ。
――1位はトヨタ?
藤島 はい。WRC(FIA 世界ラリー選手権)に出場するホモロゲーションモデルとして公認取得条件を満たすべく、2020年に登場したGRヤリスに決定です。
今回のオートサロンにさりげなく登場した改良モデルは一見すると地味に見えますが、モータースポーツファンとしてはやりすぎにも程があるモデルとして文句ナシの一等賞!
――ズバリ、勝因は?
藤島 樹脂から金網に変更されたロアグリル(フロントグリルの下部にある小さなグリル)は競技中にぶつかってもゆがみを整えれば再起可能。また、普通はリアガラス上部に配置されることが多いストップランプがテールランプと一体化し、純正以外のリアスポイラーに変更しやすくなりました。
本来マイチェンではやらない室内のスイッチ類の配置変更も実施。さらにドライバーが競技用の6点式のベルトでカラダを締められていても、すぐに届く位置にハザードスイッチを配置し、ATモデルはラリーさながらの直立したハンドブレーキに変更するなど、完全にやりすぎ!
――2位もトヨタですね。
藤島 会場で、「あぁ、後部座席に乗ってみたい!」とメロメロになったのが新型センチュリーのGRMN(ガズーレーシング・チューンド・バイ・マイスター・オブ・ニュルブルクリンク)仕様です。
GRMNといえば、GRブランドの中で頂点に君臨するチューンナップ仕様としてファンにあがめられ、これまでさまざまなボディタイプで登場していました。
――今回のモデルは?
藤島 足元には22インチのホイールを装着。クロスオーバーSUVならではの重厚感と存在感、そしてGRMNならではの迫力があります。
しかも、ショーファーカー(運転手付きのクルマ)らしいミステリアスなスゴみも感じさせる仕上がりで、このままどうにかされてしまいそうなドキドキ感を抱くほど(笑)。こちらもやりすぎ!
――3位はタイヤメーカー。
藤島 トーヨータイヤのブースは衝撃でした。実は全世界を大コーフンさせているドリフト競技「フォーミュラ・ドリフト」。
ここで4ローターを搭載したRX-7でド派手な走りを披露し、ファンを魅了してきたマッド・マイク選手が、今年はドリフト走行の技術を競うモータースポーツ選手権「D1グランプリ」に参戦することが電撃発表されたんです。
しかも、トーヨータイヤが誇るスポーツタイヤ「プロクセスR888R」を装着して走るドリフト車両がアンベール(除幕)されると、会場にどよめきが!
――何が出た?
藤島 その車両はなんと、4ローターを搭載した懐かしのマツダ・サバンナRX-3ワゴン! ファースティと名づけられた車両は彼が20年前に地元のニュージーランドで乗っていた愛車。それをベースに、ルマンで活躍したレーシングカー・マツダ787Bと同じタイプのR26Bエンジンを高回転仕様にして搭載。
――ウルトラ魔改造!
藤島 約600馬力を発生する怪物に仕上がっています。今年のD1グランプリの舞台は、マッド・マイク選手が沸かせますよ。
――続いて4位は?
藤島 千葉県にある日本自動車大学校(NATS)の学生の皆さんが授業の一環としてオートサロンへの出展を目標に造り上げたカスタムカーは、見応え満点でしたね。
――今年も鬼カスタム?
藤島 はい。ブースでひときわ目を引いた、ド迫力すぎる一台がNATS ジムニーJ1。アメリカの軍用車として知られるハマーH1からインスパイアを受け、スズキのジムニーとエスクードをフュージョン。その結果、和製ハマーが爆誕!
――ボディもダイナマイト。
藤島 大きな車体はフレームにストレッチ加工を施したり、エアサスペンションを装着して、ワイドボディをベッタベタにローダウン。学生ならではの自由な発想が大爆発していました。オフローダーブームの現代の価値観とローライダー的マインドの融合で突き抜け感は最強でした。
――5位は三菱のアレ?
藤島 フルモデルチェンジを受けたばかりの三菱のピックアップトラック・トライトンです。東南アジアを中心に約150ヵ国で発売し、人気を集めてきた三菱自慢の世界戦略車。ちなみにニッポン市場は12年ぶりの復活となります。
――どこがスゴい?
藤島 顔もボディもド迫力。しかも、本格SUVらしくラダーフレームは新設計され、道なき悪路で頼もしい走破性を発揮するモデル。今回出展されたスノーシュレッダーコンセプトは足元にスタッドレスタイヤを装着し、「雪山でのレジャーをピックアップトラックで満喫する」という新しい楽しみ方の提案ですね。
ちなみに〝スノーシュレッダー〟というネーミングは、スノーボーダーが切り立った雪面やアイスバーンをアグレッシブなターンで切り刻む姿をイメージしたそうです。
――6位はスズキです!
藤島 スズキといえば、小さなクルマで頼もしい機能性を発揮するハスラーやジムニーのような人気車種がありますが、今回の出展で私の心をつかんだのはスーパーキャリイマウンテントレイル。
――どんなクルマ?
藤島 ベース車のスーパーキャリイは軽トラック。通常のキャリイよりも座席の後ろにスペースが取られていることでシートをリクライニングできる快適性が備わったモデルです。荷台床面がキャビン下まであり、シートの後ろにまで荷物を置くことも可能。
今回の出展車は山間地で活躍しそうなラフロード用のタイヤを装着。さらにロールバーまで組み込むやりすぎぶり!
――7位はホンダ。
藤島 ホンダのスポーツハッチとして、1.5リットル直噴ターボエンジン車、2リットルのハイブリッド車、ニュルブルクリンクFF最速を狙って開発されたタイプRと3つのモデルでファンを魅了しているシビック。今回は第4のモデルの登場をにおわせるシビックRSのプロトタイプを展示しました。
詳細はまだベールに包まれていますが、ユーザーにあらゆる選択肢を用意しようという、ホンダのその心意気に敬意を表してランクイン!
――8位は日産です。
藤島 日産ブースではBEVアリアのニスモ版を世界初公開! アリアの4輪駆動仕様となるe-4ORCEをベースに高い空力性能を発揮するルックス、20インチのアルミホイールを装着しています。
ベースモデルに対し、ニスモ独自の専用チューニングを施すことで最高出力を10%向上させ、伸びのある加速感を発揮。高次元のハンドリングや旋回性能も実現しているとか。早く試乗したい!
――9位はどれ?
藤島 現在、マツダはロードスターに自然エネルギーを由来としたカーボンニュートラル燃料(CNF)を使ってスーパー耐久シリーズに挑んでいます。
仮にライトウエイトFR(後輪駆動)スポーツカーとして楽しめるロードスターがBEV化されると、バッテリーの関係で車重が増します。マツダにはぜひ内燃機関の可能性をやりすぎなほど探ってもらいたいですね。
――10位はなんだ?
藤島 見応えのあるカスタムカーが登場するオートサロンで、静かにやりすぎオーラを漂わせていたのが総合カスタムメーカーのクールジャパンの新ブランド・ブラーバのオーカスです。
このクルマは三菱デリカD:5がベースで、マットブラックのボディに専用のエアロパーツを装着したコンプリートモデル。SF映画に登場しそうなメカメカしい知的未来感と頼もしさが表現され、オリジナリティが感じられる一台に仕上がっていましたよ!
――惜しくも次点は?
藤島 カスタマイズのトレンドは洗練された方向にある中、ド派手な迫力で目を引いたのがカスタムペイントで名をとどろかせるローハンが開発したメタル塗料を塗ったインパラ。それまで不可能とされていた圧倒的な輝度、耐久性、紫外線による劣化や変色のなさを実現した世界初のメタル塗料なのだそうです。
モータージャーナリスト。レーシングドライバー(国際C級ライセンスを所持)。テレビ神奈川『クルマでいこう!』のパーソナリティ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。