「今年はSHOCKの舞台で東京にいないことが多いので、F1をリアルタイムで見られないことが多いかもしれない。でもF1の魅力をもっと日本の方に知ってもらえるように少しでも貢献したい」と語る 「今年はSHOCKの舞台で東京にいないことが多いので、F1をリアルタイムで見られないことが多いかもしれない。でもF1の魅力をもっと日本の方に知ってもらえるように少しでも貢献したい」と語る

新連載【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】RACE2

『週刊プレイボーイ』本誌から『週プレNEWS』に場所を移して連載がスタートした「堂本光一 コンマ一秒の恍惚」。第2回はシーズンオフに飛び込んできたビックニュース、日本人エンジニアのF1チーム代表就任や大阪のF1誘致計画などについてファン目線で語ってもらった。また、今年で幕を降ろすことになった主演ミュージカル『Endless SHOCK』に懸ける思いも明かしてくれた!

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■ハース新代表に就任した小松氏の手腕に期待

シーズンオフに一番驚いたニュースは日本人の小松礼雄(こまつ あやお)さんがハース代表に就任したことです。48歳の小松さんはBAR、ルノー、ロータスなどでエンジニアとして活躍し、2016年以降はハースで技術部門を統括するエンジニアリングディレクターを務めていました。

過去には鈴木亜久里(すずき あぐり)さんが自らのチーム、スーパーアグリで代表を務めたり、トヨタがF1に参戦していたときにトヨタの社員の方が代表になったりしたこともあります。でもチームにエンジニアとして加入し、そこから実績を積み重ねてF1チームの代表にまで昇りつめるというケースは日本人としては初めてだと思います。

ハースを率いることになった小松礼雄代表。1976年生まれ、現在は48歳。2003年のB・A・Rを皮切りに、ルノー、ロータスなどのF1チームでエンジニアとして活躍する。ハースにはチーム創立の2016年から参加 ハースを率いることになった小松礼雄代表。1976年生まれ、現在は48歳。2003年のB・A・Rを皮切りに、ルノー、ロータスなどのF1チームでエンジニアとして活躍する。ハースにはチーム創立の2016年から参加

ハースは昨年に関してはコンストラクターズランキングで最下位と非常に苦しいシーズンを送りました。前代表のギュンター・シュタイナーは歯に衣着せぬ発言をする人で、その様子はNetflixF1ドキュメンタリー番組『Drive To Survive』でも有名でしたが、エンジニア出身の小松さんはタイプがまったく異なります。

ハースはアメリカのチームですが、フェラーリと技術提携しており、イギリスとイタリアに開発拠点があります。チームをマネジメントしていくのは大変な部分があると思いますが、ハースの改善点はマシンにあることは明らかです。小松さんには技術者としての手腕を発揮して、チームをいい方向に導いてほしいですね。いずれにせよ、今シーズンのハースは上るしかないので期待しています。

大阪観光局がF1の開催を目指しているというニュースにも驚きました。大阪はまず2025年の開催が迫っている大阪・関西万博を成功させなければならないのに、その先に話がいってしまっているのはどうなのかなあ......と率直に感じました。とはいえ、未来を見据えて動くというのは大事ですし、大阪でのF1開催が実現されるのではあれば、いちファンとしては見てみたい気持ちもあります。

F1ではカナダのジル・ビルヌーブ・サーキットやロシアのソチ・オートドロームなど、万博やオリンピックの跡地を使ってイベントを開催しています。それに世界各地にはオリンピックや万博のために何百億かけて巨大な施設を建設したけれども、その後の使い道がなくて放置されたままになっているケースがいくつもあると聞きます。大阪で万博の跡地を再利用するというアイデア自体は悪くないと思います。

大阪では市街地でレースをするという話も出ているようですが、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)でのF1は歴史と伝統のあるサーキットで行なわれる純粋なスポーツイベントです。もし大阪でやるとすれば、鈴鹿とはまったく違った形のエンターテイメント要素を組み合わせたイベントになれば面白いと思います。

鈴鹿では2029年までF1開催が決まりましたが、大阪で開催することによって将来的に鈴鹿でのF1がなくなることだけはファンとしては絶対にやめてほしいです。鈴鹿は世界中のレースファンだけでなく、ドライバーにも愛されているコースです。

もし日本でのF1開催が大阪だけになったら、なぜ鈴鹿でイベントをやらないんだ、という不満の声が世界中から出ると思います。アメリカでは1年間にF13レースも開催しているのですから、できることなら日本でも複数ヵ所で開催してほしいですね。

SF参戦が決まった女性ドライバーJuju選手

少しF1から話題が逸れますが、女性ドライバーのJuju(野田樹潤)選手が国内最高峰の全日本スーパーフォーミュラに参戦することが決まりました。僕はJuju選手が中学生の頃に入門用のフォーミュラカーF4のレースに出場している動画をたまたま見かけて、その頃から注目していましたが、ついにここまで来たかという印象です。

F1の歴史を振り返れば何人かの女性ドライバーが走っていますが、予選を通過したのはふたりだけ。僕が記憶しているのは、1992年に参戦したジョバンナ・アマティ選手や2010年代の中盤に何度かフリー走行を走ったスージー・ウルフ選手で、どちらの選手も予選は通過していません。

コーナーリング速度はF1に匹敵するといわれるスーパーフォーミュラのデビューが決まったJuju選手。2006年2月2日生まれで、18歳になったばかり。隣はJuju選手の父親で元F1ドライバーの野田英樹(のだ ひでき)さん コーナーリング速度はF1に匹敵するといわれるスーパーフォーミュラのデビューが決まったJuju選手。2006年2月2日生まれで、18歳になったばかり。隣はJuju選手の父親で元F1ドライバーの野田英樹(のだ ひでき)さん

最近ではF1の公式セッションを走った女性ドライバーはいませんが、Juju選手は今までの女性ドライバーとは違うと思います。なんといっても、父親は元F1ドライバーの野田英樹さん。Juju選手は、4歳でカートを始め、9歳からフォーミュラカーに乗っているといいます。その後、海外でさまざまなフォーミュラレースに参戦して、昨年はF3規格のマシンで争われる「ジノックスF2000フォーミュラトロフィー」でチャンピオンになっています。

Juju選手は今年2月に18歳になったばかりです。やっと自動車の免許を取れる年齢で日本のトップカテゴリーに参戦するのですから、これからが楽しみでしかありません。レッドブルのマックス・フェルスタッペン選手も、父親がF1ドライバーで小さい頃から英才教育を受け、17歳でF1デビューしていますが、Juju選手には女性版のフェルスタッペン選手になってほしいですね。

■アルファタウリの新しいチーム名が覚えられない

2月の上旬から各チームが新車を発表しますが、中旬には中東バーレーンで開幕前のテスト(21日から23日)が行なわれ、32日にはバーレーンで開幕戦が始まります。シーズンが終わったばかりだと思っていたのですが、もうF1の開幕が近づいています。本当に早いですね。しかも今年は史上最多の24戦です。ドライバーやチームのスタッフは大変です。

今回の大阪だけでなく、世界にはまだF1を開催したいという国や地域があるので、それだけ今のF1はスポーツコンテンツとして魅力があるのでしょう。鈴鹿の日本GPでも、昨年は3日間で20万人を超える集客があったといいます。でも、僕はF1好きに会うことはめったにない。いつも言っていることですけど、F1開催時に鈴鹿サーキットに集まる大勢のお客さんは、普段どこにいるのかなあ(笑)。

今シーズンはもちろん、前回の連載でも対談した角田裕毅(つのだ ゆうき)選手にものすごく期待しています。その角田選手の所属チームは、名称がアルファタウリから変更され、「Visa Cash App RB(ビザ・キャッシュアップRB)」となりました。今でも時々、アルファタウリのことを前身のトロロッソ(2006年から19年)と言ってしまうこともあるぐらいなのに、新しいチーム名がまた複雑で全然覚えられません(笑)。

スイスのザウバーも昨シーズンまでは「アルファロメオ」で参戦していましたが、今年からはチーム名が「ステーク」と変更されました。最近のF1は、よくチーム名が変わるので、まずは開幕までにチーム名をしっかりと覚えないといけないですね。

☆取材こぼれ話☆

2000年から主演を務めてきたミュージカル『SHOCK』シリーズが今年で幕を閉じることになった。今年は4、5月に帝国劇場、7、8月に大阪・梅田芸術劇場、9月に福岡・博多座、11月に再び帝国劇場で行なわれる。

「これから東京、大阪、福岡で約5ヵ月間、『Endless SHOCK』の舞台に立つことになります。フィジカル的にはもっともキツイ舞台ですが、東京、大阪、博多でやると決めたのは自分です。最後までしっかりと走り切ります。長い公演になるので、舞台に立つ人間はどこか身体を痛めていたり、体調がすぐれなかったりすることがあります。肉体的に完璧な状況で舞台に立つことはまずありませんが、われわれキャストはその日のベストを尽くすしかありません。自分との勝負です。

1月20日の製作発表で、僕はこの作品に『命を燃やしてきた』と話しましたが、そういう心構えがあるかどうかが結構大事なんです。自分よりも歌がうまい、踊りがうまい、芝居がうまい、という人はたくさんいます。僕は技術がないので、常に自分の限界に挑み、命を燃やすという気持ちで舞台に立ってきました。そうすると、自分でも納得のいく表現が生まれる瞬間があります。残りの舞台では、これまで通りに自分と勝負しながらひとつひとつの公演に臨んでいきます」

(スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/AKM ヘア&メイク/大平真輝)

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堂本光一

堂本光一Koichi DOMOTO

1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした87年頃からF1のファンに。2023年12月にKinKi Kids17枚目のアルバム「P album」、47枚目のシングル「シュレーディンガー」をリリース。主演ミュージカル『Endless SHOCK』が、2024年4月と5月に東京・帝国劇場、7月と8月に大阪・梅田芸術劇場メインホール、9月に福岡・博多座、11月に帝国劇場にて上演決定。
公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】

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