2015年にデビューした現行モデルの4代目ロードスターが大幅な改良を受けたという。そこで、試乗会が開催された伊豆スカイライン(静岡県)を自動車研究家の山本シンヤ氏が訪れ、徹底チェックした!!

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■マツダが35年間磨き抜いた国宝カー

山本 今年デビュー35周年を迎えるマツダ・ロードスター。現行モデルは2015年に登場した4代目ですが、初の大幅改良が行なわれました。  

――この改良版はすでに発売されている?

山本 はい。1月中旬に正式発売されました。マツダによると、間もなく全国の販売店に試乗車が届くそうです。グレードによって異なりますが、現在のロードスターの納期は1~3ヵ月とのこと。

――受注状況はいかがです?

山本 昨年10月から受注を開始。試乗記など一切出ていない状況にもかかわらず、すでに約3000台を受注。言うまでもなく、ロードスターはふたり乗りの趣味性が非常に強いスポーツカーなので、販売の滑り出しはすこぶる好調だと思いますね。

――ちなみにマツダは昨秋開催されたJMS(ジャパンモビリティショー)でロータリーエンジン搭載のコンセプトモデル「アイコニックSP」を公開して話題を呼びました。

山本 マツダに聞くと、「予想以上の反響で、特にデザインに対して高い評価をいただきました」と胸を張っていました。現時点では純粋なコンセプトですが、細かいスペックまで公表するあたりがマツダらしい(笑)。

――さらに今年1月12日には、東京オートサロンでマツダの毛籠勝弘代表取締役社長兼CEOから電撃発表がありましたね!

山本 僕はマツダのブースでリアルに聞いていましたが、「2月1日にロータリーエンジン開発グループを立ち上げる」と公言。つまり、今後は本格的な開発を進めていくという宣言でしたね。

――おーっ、マツダの勢いがハンパないス!

山本 アイコニックSPの話もロータリーエンジンの話も、ロードスターが35年間、マツダのスポーツカーを支えてきたから成り立つ話です。

――もう少し言うと?

山本 マツダが35年という歳月を費やし、愚直なまでにロードスターを磨き続けてきたからこそ、スポーツカーが育つ土壌、文化が根づきました。だからこそ、「次のマツダのスポーツカーはどうなる?」という期待も高まる。

――ロードスターの功績は?

山本 わかりやすい例を出すと、デビューから約10年で、ふたり乗り小型オープンスポーツカー生産累計世界一を達成。ギネス世界記録にも認定されています。

――現在の生産累計台数は?

山本 120万台超でギネス記録は現在も更新中ですね。

――ロードスターは国宝的なクルマであると。

山本 そのとおり。世界で絶滅しかけたライトウエイトFR(後輪駆動)スポーツを復活させ、現在もビジネスとして成立させているんですから。

■シャキーンと目覚めた改良型

――今回の試乗はどこで?

山本 静岡県の伊豆スカイラインで行ないました。

――残念ながら雨天......。

山本 伊豆スカイラインは想像以上に路面が荒れている上に雨で路面も滑りやすく......。ただ、評価する上ではクルマの素性がよりわかりやすく見える状況でしたが、開発責任者の齋藤茂樹氏は終始涼しい顔でしたね。

――実際試乗した感想は?

山本 ロードスター(1.5リットル)と、ロードスターRF(2リットル)の新旧モデル計4台を試乗。改良前のクルマに乗ると「これはこれで良くね?」と思いましたが、新型に乗り換えると、走り出した瞬間から走りが全然違う。乗り味の部分はフルモデルチェンジ級で、伸び代はまだあるなと。

マツダ ロードスター 価格:289万8500~367万9500円 試乗日は朝から雨ということもあり、ロードスターもロードスターRFも、残念ながら屋根を閉めたままの試乗となってしまった マツダ ロードスター 価格:289万8500~367万9500円 試乗日は朝から雨ということもあり、ロードスターもロードスターRFも、残念ながら屋根を閉めたままの試乗となってしまった

テールランプはジェットエンジンのアフターバーナーをモチーフにしたデザインに変更された テールランプはジェットエンジンのアフターバーナーをモチーフにしたデザインに変更された

センターディスプレーは7インチから8.8インチへ。タコメーターはブラックの文字盤に変更 センターディスプレーは7インチから8.8インチへ。タコメーターはブラックの文字盤に変更

――具体的にどこが違う?

山本 エンジン、シャシー、内外装など多岐にわたる変更が行なわれていますが、今回のキモはパワーステアリングのハード・ソフトウエア両方での進化と新開発のアシンメトリックLSD(リミテッド・スリップ・デフ)の2点です。

――どんな効果を得られる?

山本 パワステ改良の効果はテキメンで、ハンドルの切り始めの応答性の良さやフリクション(部品の摩擦)が少ない滑らかな操舵感などを実感しました。さらにタイヤと路面の感触がハンドルによりわかりやすく伝わるようになり(直結感アップで)、結果として一体感が増していましたね。

――アシンメトリックLSDの効果は?

山本 一般的なLSDと異なり、トラクション(駆動力)より安定性向上のために活用しているのが最大の特徴です。ロードスターの持ち味は軽快なヒラヒラした走りですが、一方でグローバルカーとして考えたときに安定感の強化という課題も。

これまでのロードスターは、軽快な走りと安定感......どちらを重視するかはグレードで区分けしていましたが、新型はその悩みが見事に解決されていました。

個人的には従来の990Sの軽快な走りと、従来のRSの安定感のある気持ちいい走りが一台で楽しめるモデルになったなと。ちなみにサスペンションに変更はありませんが、クルマの無駄な挙動が減った副産物として、なんと乗り心地も良くなっていました!

マツダ ロードスターRF 価格:379万6100~430万8700円 雨の中での試乗となったが、「この新型は安心して走れるよ」と山本氏。マツダの開発陣もその言葉にニコニコとうなずいていた マツダ ロードスターRF 価格:379万6100~430万8700円 雨の中での試乗となったが、「この新型は安心して走れるよ」と山本氏。マツダの開発陣もその言葉にニコニコとうなずいていた

わずか13秒で屋根を開閉できるRF。撮影時、一瞬だけ雨がやみオープンにすることができた わずか13秒で屋根を開閉できるRF。撮影時、一瞬だけ雨がやみオープンにすることができた

シートに滑り込むだけでテンションは爆上がり。さすが日本が世界に誇るスポーツカーである シートに滑り込むだけでテンションは爆上がり。さすが日本が世界に誇るスポーツカーである

――見た目に大きな変化はありませんが、中身は完全にフルチェン級であると。

山本 雨で濡れた路面を走ってもドキドキよりワクワクが上回っていました。ちなみに外装はフルLED化された灯火類、インテリアは視認性が高められたメーターやディスプレーなど、最新のマツダ車に引けを取らない質感を獲得。

――魅力アップ!

山本 さらにエンジンの進化も驚きました。これまでロードスターではあまりフューチャーされないところでしたが、1.5リットルは日本のハイオクガソリンに合わせた専用セットで+3kWの出力アップを達成。加えてMTの1.5リットルと2リットルはECU(エンジンコントロールユニット)に最新の制御が盛り込まれています。

その結果、従来はどこか眠たそうだったエンジンがシャキーンと目覚めたフィーリングに激変。吸気音もより聞かせる方向に。音量はそのままですが、音の質が向上し、スポーツカーのエンジンらしいクリアで澄んだサウンドを奏でます。

――ただ、従来モデルより車両重量がアップしたとか?

山本 確かに先進安全機能が進化したので、その分、わずかに重くなっています。中には「スポーツカーだから先進安全機能は必要ない」という意見もありますが、僕はスポーツカーこそ必要だと思っています。重くなった分はドライバーが体重を軽くすればいい(笑)。

――どんな人に推せます?

山本 ビギナーの人は安心して走りを楽しめ、上級者はより緻密なコントロールを楽しめるので、結果的に誰もが速く楽しく、安全に走れるクルマになっています。繰り返しになりますが、今回の改良でその走りはフルモデルチェンジ級に変わっています! 従来モデルユーザーは間違いなく買い替えたくなるはず。

新旧4台を試乗後、ロードスターの開発責任者・齋藤茂樹氏(左)にロードインプレッションを伝える山本氏(右) 新旧4台を試乗後、ロードスターの開発責任者・齋藤茂樹氏(左)にロードインプレッションを伝える山本氏(右)

■今年で生誕35周年!! マツダ ロードスターの歩み

初代 ロードスター(1989年デビュー) 
初代は販売チャンネルの関係もあり、「ユーノスロードスター」を名乗っていた。エンジンは1.6リットルと1.8リットル。

2代目 ロードスター(1998年デビュー) 
2代目からはマツダロードスターを名乗ることに。リトラクタブルヘッドライトを固定式に変更した。

3代目 ロードスター(2005年デビュー) 
搭載エンジンは新たに2リットルを採用。ボディは3ナンバーサイズとなったが、歴代の軽快な走りはしっかり継承。

4代目 ロードスター(2015年デビュー) 
当初搭載エンジンは1.5リットル。マツダの軽量化により1t前後にシェイプアップ。2016年にロードスター RFを追加。

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