スズキが世界に誇るコンパクトカー「スイフト」。爽快な走りで数多くのファンをとりこにしているこのクルマが、昨年12月にフルチェン! 千葉県で開催された試乗会で、その実力に迫ってきた。
■軽だけじゃない! スズキの看板カー
シビレる走りで世界中のファンを魅了してきたスズキのコンパクトカー・スイフトが、昨年12月に7年ぶりとなるフルモデルチェンジしたことを受け、大きな注目を集めている。ニッポン市場における初代は2000年にデビュー。
今回登場した新型は5代目(グローバルでは4代目)となる。現在、スイフトは169の国と地域で販売されているが、具体的にどこで売れているのだろうか? スズキ広報部に聞いてみた。
「販売台数が多いのはインド、次いで日本、そして欧州という順です。欧州で販売台数が多いのはフランス、イギリス、ドイツの順になります」
スズキの世界戦略車であるスイフトは、昨年10月に累計販売900万台を達成! ニッポンでスズキという名前を耳にすると、アルト、ジムニー、ワゴンR、スペーシアなどの人気の軽が自然と頭に浮かぶ。しかし、今のスズキの屋台骨を支え、世界市場で大活躍しているのはコンパクトカーのスイフトなのだ。
名実共にスズキの看板カーに成長したスイフト。その新型が姿を現したのは、昨年10月のJMS(ジャパンモビリティショー2023)。出展された試作車は、SNSを中心に話題を呼んだ。実際、都内にあるスズキの販売店関係者はホクホク顔でこう話す。
「JMSに出展されると、多数のお問い合わせがあり驚きました。受注のすべり出しは、おかげさまで上々です」
ニッポン市場における新型スイフトの年間販売目標は3万台。この数字はどの程度のものなのか?
「スイフトの年間(暦年)販売台数は、21年が約2万3400台、続く22年が約2万5100台、そして昨年が約2万6600台です」(スズキ広報部)
スズキの掲げた年間目標の数字は新型スイフトへの手応えを感じる。しかし、その前に立ちはだかる大きな壁が、新車販売で4年連続世界トップに立つトヨタ自慢のコンパクトカー・ヤリスである。
ヤリスは昨年3月に累計販売台数1000万台を突破した怪物カー。ちなみにトヨタ車で累計販売台数が1000万台超えを達成しているのは、カローラ、カムリ、RAV4、ハイラックス、ランドクルーザー。ヤリスは6車種目の快挙達成となった。
初代ヤリスは1999年にデビューしたモデルだが、実はニッポンでは3代目までヴィッツとして販売。20年にデビューした4代目からヤリスの名前を与えられた。すると、怒涛(どとう)の快進撃を展開!
昨年、ニッポンの新車市場でヤリスは19万4364台をマークし、乗用車(登録車)部門で4年連続首位に輝いた。
そんな無敵モード突入状態の王者ヤリスに加え、国内のコンパクトカークラスには、ホンダのフィット、マツダのマツダ2など各自動車メーカーの量販車がズラリと並ぶ。この群雄割拠のカテゴリーで勝ち抜き、シェア拡大を狙うのが、今回デビューした新型スイフトである。では、スズキはどう開発を進めたのか?
■新型スイフトが狙う「Z世代」
新型スイフトの開発責任者を務めたのはスズキの小堀昌雄氏。小堀氏は先代モデルも担当した"ミスタースイフト"。今回の新型スイフトのターゲット層は、「Z世代」と呼ばれる若者たちだ。ちなみにこれまでのスイフト購入者の平均年齢は44.8歳。
スズキによれば、20代や30代の顧客の割合もかなり多いというが、新型スイフトはスズキの未来を考え、もっと若い世代へ訴求する道を選んだ。まず小堀氏は、これから20代になる、あるいは20代になったばかりの顧客に話を聞いた。
「今の若いお客さまは、クルマに対して何を求めているのかを知りたかったんです」
もちろん、若い世代のすべてに当てはまる話ではないが、小堀氏が耳を傾けた顧客に限れば、彼らが今何を大事に生きているのか、そのヒントは得られたという。
「若いお客さまに話を聞いていると、クルマに投資するより普段の生活や充実した楽しい時間にお金を使いたい気持ちが強いんです」
要はほかの世代よりコスパとタイパの優先順位が高いのだ。そういう顧客に対して力を注いだのが、デザインと走り。デザインは販売店やCMなどで見ることができるが、走りは試乗しないと伝わらない。小堀氏が力を込めて言う。
「楽しい走りができます。ぜひ、ご試乗いただきたい」
■クルマの運転時間がとにかく楽しい!
新型スイフトの報道陣向け試乗会は、千葉県木更津市で開催された。用意されたモデルは、新型スイフトの最上級グレードとなる「ハイブリッドMZ」。新開発の3気筒1.2Lマイルドハイブリッド搭載車である。この新型スイフトを徹底チェックしたカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏はこう語る。
「新型スイフトは走行安定性が向上しています。キモは振動減衰力を持たせた接着剤。これを使用したことで、ボディ剛性を最適な状態にチューニングできた」
とはいえ、骨格は先代からのキャリーオーバーだ。
「逆に言うと、骨格を継承したことで、さらに煮詰めることができた。また、潤沢な開発費を必要とする骨格を新規開発しなかった結果、その予算を安全装備などの進化に回せ、価格も抑えられた」
つまり、骨格を継承することで高いコスパを実現できたわけだ。一方、走りも磨き抜かれている。試乗すると、不安のない軽快な走りが味わえた。控えめに言って、運転する時間が楽しくなる。
「軽快な走りの秘密はボディの軽さにあります。2WDの車両重量は910~950㎏です。これはライバル車よりも50㎏以上軽い。そのために車両の動きが軽快で安定しています。しかも、ボディの軽さもあって、燃費性能も優れている。マイルドハイブリッド搭載車のWLTCモード燃費は5速MTで25.4㎞/Lと優秀」
ズバリ、新型スイフトは王者ヤリスに勝てるのか?
「動力性能は、スイフトが3気筒1.2L、ヤリスは3気筒1.5Lです。幅広い回転域でヤリスのほうが余裕のある走りを味わえます。燃費もWLTCモードで35.8㎞/Lを誇るヤリスハイブリッドの圧勝です。
加えて、ヤリスは約4600ヵ所のトヨタ全店で販売されている。国内の売れ行きで王者ヤリスに一太刀浴びせるのも難しい。とはいえ、購入するなら、ぜひ両車を乗り比べてほしいですね」