昨年、日本一売れたクルマは、ホンダが誇る"絶対王者"「N-BOX」。しかも、唯一の20万台をマークする無双ぶり。気になる新型の売れ筋は? 弱点は一切ないの? てなわけで、週プレ自動車班がガシガシ取材してきた!!
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■爆誕した3代目は、〝脱オラオラ〟
売れに売れた!
自販連(日本自動車販売協会連合会)と全軽自協(全国軽自動車協会連合会)の発表によると、昨年、ニッポンで最も売れたクルマはホンダの軽スーパーハイトワゴン・N-BOXだった。ちなみにスーパーハイトワゴンとは、背が高く、スライドドアを持つ軽のことだ。
販売台数は前年比14.4%増となる23万1385台! 2位のヤリスに3万台以上、3位のタントには7万台以上の差をつける無双ぶり。
ちなみに総合トップに立つのは2年連続で、軽自動車に限ると9年連続で頂点に輝いた。加えて昨年末にはホンダ史上最速で累計販売250万台を突破して話題を呼んだ。
そんな無敵のN-BOXに昨年10月、3代目が爆誕! 新型N-BOXの開発責任者の諫山博之(いさやま・ひろゆき)氏はこう話す。
「王者N-BOXは、これまでお客さまから全方位で高い満足度をいただいてきました。今回の新型はその全方位をさらに磨き抜いたものです」
今回登場した3代目は、エンジンと骨格を2代目から継承している。実はN-BOXというクルマ、現在、ホンダの国内市場の40%近くを占めている。要は失敗が許されない大黒柱なのだ。そこで、今回のフルチェンは大ヒットを記録した2代目の方向性をトレースした形となった。もちろん、3代目らしさもある。
「新型には上質や品位というテーマがあり、リアコンビランプやグリルから、いわゆる〝オラオラ感〟を消しました。それにより中高年のダウンサイザー(小さなクルマへと乗り換える人)の皆さまにも受け入れられるデザインに仕上がったと自負しております」
3代目もこれまで同様に標準タイプとカスタムの2種類を用意しているが、ホンダがドヤ顔だったのは標準タイプ。諫山氏もこう胸を張る。
「2代目はカスタムが人気でしたが、3代目は標準とカスタムで迷われるお客さまが増えるのではないでしょうか」
実のところ、ホンダに3代目N-BOXの最新の販売状況を聞いてみたが、購入者の65%が国内の売れ筋である派手顔のカスタムを選んでいるという。
■高速道路で気になった標準モデルの走り
現在、ニッポンの新車市場の40%を占めるのが軽自動車だ。その中で激アツの販売バトルが繰り広げられているのが、N-BOXを頂点とするスーパーハイトワゴン市場。
主なライバルは認証不正で揺れるダイハツのタントを筆頭に、昨年11月にフルチェンしたスズキのスペーシア。SUV感マシマシだが、昨年5月に登場した三菱のデリカミニもこのカテゴリーに入る。
なぜ最激戦区でN-BOXの無双状態は続くのか? 自動車専門誌の幹部が語る。
「軽を普通車(登録車)と同じ品質で開発しているのが強み。試乗すればわかりますが、ライバルは〝軽の味わい〟が見た目や走り、室内から消えていない。
一方、N-BOXは普通車に乗っていた人がハンドルを握っても違和感が少ない。特に3代目は乗り心地を左右するパーツを改良したので、ライバル車では味わえない上質な走りを実現しているのもポイントです」
だが、N-BOXも決して完璧で究極なクルマではない。実際試乗すると、エンジンルームから軽ならではの唸るような音が聞こえてくる。ホンダ推しの標準モデルは高速道路の合流や追い越しでアクセルを踏むと、一拍置いてから加速し、一気に騒々しい音が室内に流れ込んでくる。
もちろん、ターボを備えるカスタムを選べばこの不満は解消されるが、カスタムターボの4WDに魅力的なオプションを全盛りにすると300万円近い価格になってしまう......。
3代目N-BOXの評判をホンダの販売店に聞いた。
「3代目は先代より車両価格をアップしていますが、お客さまからは、『室内の質感が下がったんじゃない?』とか、『カスタムは、先代のほうが見栄えがいいね』というご意見をいただきます」
販売店の取材で驚いたのは、在庫数は少ないというが、新型が出た現在も、まだ2代目N-BOXを売っている店舗がチョイチョイあったこと。
別の販売店のセールス担当者はこんな話をしてくれた。
「値引きや用品サービスを頑張れるからだとは思いますが、新旧見比べた上で2代目を購入されるお客さまも」
ライバルのスペーシアカスタムは日本市場の売れ線である、ゴッリゴリのオラオラ顔が評判を呼んでいる。〝絶対王者〟N-BOXの今後の売れ行きに注目したい。