青木タカオあおき・たかお
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営。
1月26日に発売されたトライアンフの400シリーズが話題を呼んでいる。その実力と魅力に迫るべく、トライアンフモーターサイクルズジャパン社長も取材したモーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が特濃解説する。
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青木 ニッポン市場で絶滅寸前だったヨンヒャクが、今、チョー激アツです! そもそも400㏄クラスというのは、日本の免許制度から生まれた特有の排気量帯で、これまで海外モデルはほとんど存在せず、国産車の独壇場でした。
――つまり、ガラパゴスなカテゴリーなわけですね。
青木 ところが、近年、海外の高級ブランドが、続々と中免(普通自動二輪免許)で乗れるヨンヒャクをニッポン市場に投入しているんです。
――その背景には何が?
青木 インドを筆頭とするアジア市場の〝熱気〟が挙げられます。実はこれまでアジア市場の売れ筋は、移動の足として使われる150㏄程度の小排気量車だったんです。
――その売れ筋に変化が起きている?
青木 はい。実は経済成長に伴い、もう少し余裕のある排気量を求める、いわゆるレジャー用途の需要が急激に高まってきている。このビジネスチャンスに日本メーカーはもちろんのこと、ハーレーダビッドソンやBMW、ロイヤルエンフィールドといった海外の名門ブランドも続々とアジア市場に参入しています。
――もしや、そこで生まれた350~400㏄のニューモデルがニッポンへ上陸している?
青木 そのとおり。特に注目なのが、英国最大の高級バイクブランドであるトライアンフがニッポン市場に投入したスピード400とスクランブラー400Xの2台です。
――そもそもトライアンフってどんなブランドなんスか?
青木 トライアンフは1902年からバイクを製造する名門ブランドです。
――ニッポン市場での販売はどんな感じスか?
青木 年々、その存在感を強めており、2020年度に初めて年間販売台数2000台を達成すると、昨年は前年比21%増となる4108台をマークして大躍進! 輸入車部門のシェアは、ハーレーやBMWに迫る第3位です。
――販売好調の理由は?
青木 トライアンフモーターサイクルズジャパンの大貫陽介代表取締役社長を直撃すると、「ラインナップの拡充と販売店の増強で、ユーザーから高い支持を得ている」と語ってくれました。
その上で、「今回投入した新型車の効果で、若い世代や女性オーナーも増える見込み。25年には年間販売6000台を目指している」とシェア拡大の考えも示しました。
――大貫社長の鼻息を荒くした新型を今回公道チェックしましたが、率直な感想は?
青木 両車ともクラスを超えた完成度の高さを誇ります。それぞれ専用設計のシャシー(骨格)を持ち、細部の作り込みや塗装が秀逸です。最高出力40馬力を発揮するシングルエンジンは発進加速から力強く、スロットルレスポンスが鋭く元気ハツラツ!
――2台の違いは?
青木 前後ホイールを17インチにしたスピード400は、意のままに操れる旋回力がある。シート高は790㎜と低く、乗り手の体格を選ばず、輸入車ビギナーでも安心です。
――一方の400Xは?
青木 フロントを19インチ化したスクランブラー400Xのシート高は835㎜です。視線の高さ的にはオフロード車に近い感覚ですが、足つき性は良好。ゆったりとしたおおらかなハンドリングで、未舗装路などの悪路もこなします。
――お値段の話にも触れます。スピード400が69万9000円、スクランブラー400Xが78万9000円です。トライアンフはどうやってこの低価格を実現したんスか?
青木 開発と設計はイギリス本社、生産をインドで行なうことでコストを抑えたそうです。その結果、SNSには「憧れの高級ブランドが狙える!」「マジで欲しい!」という声が飛び交っています。
――スピード400とスクランブラー400Xの受注状況は?
青木 販売の滑り出しを大貫社長に聞きましたが、発表と同時に販売店に多数の問い合わせがあったそうで、「受注は順調」と手応えを口にしていました。どこまで売れるか見ものです。
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営。