渡辺陽一郎わたなべ・よういちろう
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
昨年、ニッポンに上陸したルノーの最新モデル2台が話題だ。どんなクルマなの? つうわけで、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)氏が公道で徹底チェックし、特濃解説してくれた!!
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――今回試乗したのはルノーの最新モデル2台です。
渡辺 ルノーは1898年に創業したフランスの自動車メーカーで、日本と縁が深い会社としても知られています。
――1999年に日産自動車と資本提携しましたからね。
渡辺 実は日産と提携する前からルノーは日本と関わりがあるんです。
――へぇー。具体的には?
渡辺 第2次世界大戦後、日本は自動車産業の育成を開始しました。しかし、当時の日本の技術は欧米に比べて20年以上遅れているといわれていた。そこで、通商産業省(現在の経済産業省)の指導もあり、日本の自動車メーカーは技術力を身につけるため、海外メーカー車のノックダウン生産を開始しました。
――ノックダウン生産って?
渡辺 ザックリ言うと、この場合は部品類をライセンス元から輸入し、組み立てや販売を行なう生産方式のことですね。
――つまり、ルノーのノックダウン生産を担っていた日本の自動車メーカーがあった?
渡辺 それが日野自動車です。日野は1953年にルノー4CVのノックダウン生産を開始しました。丸みのある外観が特徴のクルマで、当時は日本のタクシーに多く使われていましたね。
――なるほど。今回は、そんな〝日本自動車業界の師〟ともいえるルノーの最新モデルを公道チェックしたと。まず乗ったのはルノーメガーヌR.S.ウルティムです。
渡辺 メガーヌはフォルクスワーゲンのゴルフに相当するルノーの主力車種で、初代は1995年に発売されました。現行モデルは4代目で、日本上陸は2017年です。今回試乗したウルティムは昨年4月に日本市場に登場したモデルになります。
――ギンギンの見た目っス!
渡辺 当然です。何しろウルティムは1976年に設立され、F1も手がけたスポーツブランドの「ルノー・スポール」に属する最終モデルです。ちなみに今後のルノーのスポーツブランドはアルピーヌに引き継がれます。
――走りもギンギン?
渡辺 エンジンは1.8リットルターボですが、感覚的には4リットルの自然吸気ガソリンエンジン並みにパワフル。アクセル操作に対して機敏に反応しますし、正直言って相当速い。
――しかも、ただ速いだけじゃないんスよね?
渡辺 運転席がクルマの中央寄りに設置されています。そのためクルマの挙動変化がよくわかる。また、後輪操舵の技術が採用されており、カーブに入る際も機敏に曲がる。
――つまり、キレのいい走りを楽しめると?
渡辺 峠道やサーキットを走るのが好きな人に最適なモデルに仕上がっています。当然ですが、乗り心地はけっこう硬い(苦笑)。購入を検討する際は必ず試乗してください。
――もう一台のルノーは?
渡辺 昨年6月に日本に上陸したルーテシアE-TECHエンジニアードです。
――どんなクルマ?
渡辺 コンパクトカーのルーテシアの1.6リットルエンジンに、ルノーが独自開発したハイブリッドシステム「E-TECH」を搭載しています。ちなみにATはF1参戦で培った技術が盛り込まれたドグクラッチ(ギア同士を直接噛み合わせるクラッチのこと)を備えるなど、かなり独創的。
――ズバリ、ドグクラッチを使用した変速はどうスか?
渡辺 変速時に若干の時間差を感じますが、変速を終えて走行しているときはダイレクト感があります。
――なるほど。
渡辺 また、ルノーのハイブリッドはモーターとエンジンの両方を駆動系に直結させているので、細かな速度調節が行ないやすい。欧州ではマニュアルトランスミッションが長く愛用されてきた関係で、現在もドライバーが速度管理を確実に行なえるクルマが好まれる。そういうニーズに対応した運転感覚に仕上がっていますよね。
――乗り心地はどうスか?
渡辺 時速40キロ以下では硬めに感じますが、ステアリング操作に対する反応は正確です。ルーテシアはコンパクトなハイブリッド車ですが、ドライバーとクルマが一体となって運転を楽しめます。
――どんな人に推せるクルマですか?
渡辺 日常的な短時間の移動でも運転を楽しみたい人に乗ってほしいクルマですね。
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員