渡辺陽一郎わたなべ・よういちろう
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
三菱がブチカマしたピックアップトラック・トライトンの試乗会が山梨県で開催された。現地で取材したカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏がその実力などを特濃解説!
渡辺 12年ぶりにニッポン市場に復帰した三菱のトライトンをオフロードなどで試乗してきました! このトライトンは1978年発売のフォルテをルーツとするピックアップトラックで、今回登場した新型は6代目となります。
――三菱の大黒柱とか?
渡辺 世界約150ヵ国で年間20万台を売る看板モデルです。ちなみに累計販売台数は、フォルテから数えると560万台超をマークしており、三菱歴代トップです。
――三菱の世界戦略車であると。メインマーケットは?
渡辺 ASEAN諸国です。トライトンはタイで生産されるので、正確にはニッポン市場では輸入車の扱いになります。
ただし開発などはニッポンを中心に行なわれています。ちなみに今回の新型はダブルキャブと呼ばれる2列シートの5人乗りです。エンジンは2.4Lツインターボディーゼルで、トランスミッションは6速ATのみとなります。
――実車を目の当たりにすると、とにかくデケー!
渡辺 上級グレードの「GSR」は全長5360㎜×全幅1930㎜×全高1815㎜。車重は2140㎏です。
――ワガママボディにも程がある。そして顔面もエグい!
渡辺 ダイナミックシールドと呼ばれる今の三菱車に共通するデザインで、実に野性味のある面構えです。トライトンは三菱の金看板ですから、世界中の誰が見てもインパクトのあるデザインを心がけたのだと思います。
――ちなみにお値段は?
渡辺 グレードは「GLS」と豪華版の「GSR」の2種類があり、498万800~540万1000円です。
――つまり、超ヘビー級ボディの持ち主で、価格は実質500万円台であると。道の狭いニッポンで売れんスかね?
渡辺 昨年12月の発表から今年3月10日までの受注台数は約1700台。ちなみに月間販売計画は200台です。
――この数字はスゴい?
渡辺 約1700台の台数自体は特に多くありませんが、三菱の国内販売店舗数は約600ヵ所。トヨタの約5000ヵ所と比べると12%程度。三菱にとっての1700台は、トヨタに置き換えると1万4000台に相当します。
――なるほど。
渡辺 しかもトライトンの価格は、前述のとおり実質500万円台と高価で、カテゴリーも日本ではニッチ市場となるピックアップ。こういう販売面で不利な条件を考慮すると、上々の滑り出しでしょう。
――どこで売れてんスか?
渡辺 売れている地域のトップ3は北海道、愛知県、東京都の順番です。ちなみにトライトン購入者の82%は他社からの乗り換えで、グレードは豪華版のGSRが88%を占める断トツぶりです。
――購入者の年齢層は?
渡辺 意外と若い人が多いです。年齢の内訳は20代が10%、30代は21%、40代は32%。合計すれば40代までで60%以上を占める。私のようなオジサン世代には、懐かしのピックアップ復活ですが、若い人たちには新鮮に映るようです。
――人気のワケは?
渡辺 基本的にトライトンはピックアップトラックですが、トヨタのランドクルーザーのような悪路向けSUVとして注目されているようです。まぁ、このタフでワイルドな見た目は理屈抜きに男心を刺激しますよ。一方、三菱ユーザー的には、19年に国内向けの生産が終了しているパジェロの代用という面も。
――試乗した率直な感想は?
渡辺 トライトンは、新開発のラダーフレーム、そしてパジェロやランエボの走行技術を徹底的に磨き上げて搭載しています。昨秋、私は北海道にある三菱のテストコースで試乗し、高い悪路走破性を確認していますが、そのスゴさを再確認しましたね。
――これだけ巨大なクルマだと死角が怖いっス。
渡辺 トライトンは移動物検知機能がついたマルチアラウンドモニターなどで、クルマの周囲が360度モロ見え! これはうれしい技術でした。
――公道試乗の感想は?
渡辺 ラダーフレームを搭載したトラックとは思えぬ走りでSUVに近い乗り味ですね。ただ、ステアリング操作に対する反応は少し鈍い。
――ほかに気になった点は?
渡辺 ディーゼル特有のノイズですね。車内では静かなのですが、外に出ると少しばかり耳障りでした。
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員