渡辺陽一郎わたなべ・よういちろう
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
欧州自動車大手ステランティスの高級ブランド・DSオートモビルの主力モデルが話題を集めているという。てなわけで、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が、噂のおフランスカーを公道試乗!!
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――今回取り上げるのは、仏DSオートモビルのDS4です。そもそもDSって?
渡辺 かつてのDSは、仏シトロエンがラインナップする上級車種でした。誕生はトヨタの初代クラウンと同じ1955年ですが、シトロエンDSは内外装のデザインから走りまで、すべてが独創的かつ先進的でした。
外観は宇宙船のような丸みのある形状で、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は3mを軽く上回る。そのため車内はとても広かった。
――ほおほお。
渡辺 注目すべきはハイドロニューマチックという技術で、油圧ポンプから送り出されるオイルによりサスペンション、ブレーキ、ステアリングなどを制御しました。
当時のシトロエンは、他社に比べるとすさまじい技術を備えており、その象徴がDSでした。ただしメカニズムが凝っていたので、日本での修理費用は超高額だったそうです。
――そんなDSはいつまで生産されたんスか?
渡辺 1970年代の中盤まで生産されました。その先進的な発想を受け継いだブランドが今のDSです。当初はシトロエンの個性派モデルでしたが、現在は独立して、欧州自動車大手ステランティス自慢の高級ブランド「DSオートモビル」となりました。
――今回試乗したモデルは?
渡辺 現在のDSはコンパクトなDS3、主力のDS4、DS7、DS9と4車種から選べます。今回はDS4エスプリ・ド・ヴォヤージュE-テンスに試乗しました。
――DS4は話題の生成AI「チャットGPT」も搭載しているそうですね?
渡辺 DSのボイスコントロール機能にチャットGPTが備わり、「オーケー、アイリス!」と呼びかけた後でしゃべると、カーナビの目的地設定やエアコンなどの操作だけでなく、DS4と対話しながら運転もできます。
――ふむふむ。それにしても外観は、「個性爆発!」という感じの仕上がりです。
渡辺 フロントマスクやボディの側面に、鋭角的なキャラクターライン(クルマの基本的形状を構成する線)が入ります。日本人だと「アクが強い!」と感じるかもしれませんが、DS4は2022年にパリで開催された第37回国際自動車フェスティバルで、「世界で最も美しいクルマ」に選ばれています。
――内装はいかがです?
渡辺 インパネは立体的で、中央にはカーナビの地図などを表示できる10インチのタッチスクリーンが装着されています。デザイン優先の結果だと思いますが、私はシルバーの内装パーツがサイドウインドーに映り込むのが気になりましたね。
――日本車との違いはどこ?
渡辺 特にシートですね。座り心地が柔軟で、体が少し沈んだところで確実に支える。ドイツ車のような体を拘束するような印象はありませんが、正確な運転が行なえて長距離移動でも疲れにくい。
――運転した印象は?
渡辺 全幅は1830㎜と少しワイドですが、全長は4415㎜に収まり、街中でも扱いやすい。また、全高を1495㎜に抑えているので、立体駐車場も使えます。
――パワーユニットは?
渡辺 直列4気筒1.6リットルをベースにしたプラグインハイブリッドです。12.4kWhのリチウムイオン電池を搭載しており、1回の充電で60㎞以上のEV走行が可能です。
――へぇー。
渡辺 エンジンは1.6リットルターボ+モーターなので加速性能には余裕がある。ちなみにガソリンエンジンに置き換えると3.5リットル前後の性能ですね。
――スゲェ!
渡辺 ステアリング操作に対して進行方向が正確に変わるため、車両との一体感も味わえますよ。
――どんな人に推します?
渡辺 クルマの美しさや先進性、味わい深さを大切にする人でしょうね。個性的な外装色も選べますので、他人と違うクルマに乗りたい人にもピッタリだと思います。
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員