中古車に詳しい専門家は、「今年も中古車の輸出は非常に好調。ニッポンの中古車の信頼が厚い証拠でもある」 中古車に詳しい専門家は、「今年も中古車の輸出は非常に好調。ニッポンの中古車の信頼が厚い証拠でもある」

現在、155円前後で推移している円ドル相場。この異次元の円安はわれわれの家計のみならず、いたるところに影響を与えている! 各所の実情や円安に関するあれこれをレポート!

■世界が注目するニッポンの軽トラ

3月1日、警察庁が発表した「車名別盗難台数の状況」が大きな話題を呼んだ。その理由は軽トラにある。実は2台の軽トラがワースト10にランクイン。

表をご覧いただきたい。昨年、スズキのキャリイは115台、ダイハツのハイゼットも107台盗まれた。ニッポンの労働カーのシンボルである軽トラが、トヨタ自慢の高級車より多く盗まれたのだから大事件である。

メディアやSNSには「なぜ軽トラ?」「いったい誰がなんのために?」という疑問の声が上がった。気になった週プレは軽トラが盗まれるワケを専門家などに聞いて回ったが、残念ながら明確な答えにはたどり着けなかった。しかし、その糸口は中古車業界からもたらされた。

現在、歴史的円安を背景に海外からの熱視線を浴びているのがニッポンの中古車市場である。当然、中古車の輸出はすこぶる好調なのだが、一方で弊害もあるという。千葉県の中古車ショップ「バクヤスオート」の販売総責任者を務める遠藤氏はこう語る。

「円安もあり海外のバイヤーが日本の相場より高い値段で買い取るため、中古車の販売価格は高値が続いています」

その中で引っ張りだこのクルマがあるという。

「特にアメリカで大人気なのが日本の軽トラです。以前から業者同士の間では軽トラ人気が話題になっていました」

スズキのキャリイ。価格は111万7600~152万4600円。ちなみに最小回転半径はぶっちぎりの3.6m スズキのキャリイ。価格は111万7600~152万4600円。ちなみに最小回転半径はぶっちぎりの3.6m

そもそもの話だが、軽トラは基本的に日本専売の"ガラパゴスカー"。つまり、新車を輸出していないのだ。そのため、当たり前の話ではあるが、海外での認知度は皆無に等しかった。

ところが、アメリカの25年ルールにより軽トラは図らずも世界デビューを飾ってしまう。ちなみに25年ルールとは、製造から25年が経過した旧車は骨董品扱いとなり、右ハンドルでもアメリカでの公道走行が可能となる制度のことだ。 

この25年ルールを活用して、軽トラを購入した人たちが、その経済性や使い勝手などにギョーテン! SNSや動画サイトで軽トラを紹介した。すると、その新感覚な見た目が「超クール!」となり、円安効果も手伝い軽トラ人気に火がついた。自動車誌の編集者はこう解説する。

「アメリカの国民車はピックアップトラックです。つまり、荷台を持つクルマを好む傾向がある。軽トラは非常になじみやすかったのだと思います」

だが、そんなピックアップトラックにも弱点が! 豊満デカボディのため、荷物はたくさん積めるが、取り回しや燃費、乗降性に難があるのだ。

「一方、軽トラは小回りが利き、燃費も良く、四駆モデルは悪路も軽くこなす。小さくキュートな形の軽トラは、まさに"東洋の神秘"。それがアメリカでバズった理由ではないでしょうか」

ダイハツのハイゼットトラックの価格は90万2000~113万3000円。ちなみに全7色のボディカラーを用意 ダイハツのハイゼットトラックの価格は90万2000~113万3000円。ちなみに全7色のボディカラーを用意

そんな大人気の軽トラの新車価格は100万円前後だが、中古車市場は鬼の高騰! 年式の新しい軽トラは200万円を突破し、30年落ちでも50万円の値札がついている!

「『程度や装備のいい軽トラは、200万円出しても買いたい』と話す海外のバイヤーも」(バクヤスオートの遠藤氏)

強気の値札の店が多いのは、こうした海外需要を見越しているからだ。しかも、軽トラは近年中古車輸入の規制などが緩和された右ハンドルのオーストラリア、さらには人を荷台に乗せて運ぶ文化のある途上国でも需要があり、ぬかるみや悪路をこなす四駆の軽トラは超お宝カーなのだという。

■日本の中古車市場は"宝の山"

円安以外にも、世界が日本の中古車を好む理由がある。

「商談時、日本のお客さまはとにかく走行距離の少ないクルマを希望されます。逆に言うと、日本市場では走行距離の多いクルマは人気がなく、価格も安くなる。ところが、海外では10万㎞という数字は序の口なのです(笑)」(バクヤスオートの遠藤氏)

日本の中古車は車検制度の関係で整備がシッカリされている。そんな安心の日本車が円安もあり手頃な価格で仕入れられる。海外のバイヤーからすれば、「日本の中古車市場はお宝だらけ」となる。

事実、今回の取材で何度も耳にしたのが、日本車の価値の高さ。丈夫で長持ち、しかも燃費がいいと評判で、国によっては10年落ちの日本のセダンやコンパクトカーのハイブリッド車が200万~300万円で販売されているという。

高値の理由はシンプルで、人気車なので即現金化が可能。つまり、資産価値が高いのだ。

「今、日本の中古車市場は国内外がぶつかる大争奪戦となっています。このまま円安が続くと、相場より高く買い取りができる海外勢に根こそぎクルマを持っていかれる恐れも。

それが証拠に今、日本の中古車市場に流通する整備の行き届いたドイツ車も買いあさられています」

ニッポンの中古車市場の未来はペンペン草すら生えないかも!?

遠藤氏が「バクヤスオートは雑食です」と言うだけあり、国産車、輸入車、そして旧車までズラリ!! 遠藤氏が「バクヤスオートは雑食です」と言うだけあり、国産車、輸入車、そして旧車までズラリ!!

■取材協力店・バクヤスオート
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総在庫500台以上を誇るバクヤスオート。
希少車・絶版車も用意し、2級整備士も常駐。