堂本光一Koichi Domoto
1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした1987年頃からF1のファンに。主演ミュージカル『Endless SHOCK』の最終公演が、東京・帝国劇場で上演中。「KinKi Kids Concert 2024-2025 DOMOTO」が、2024年12月31日と25年1月1日に京セラドーム大阪、25年1月12日と13日に東京ドームで開催決定
公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】
雨となった第9戦カナダGPは2番手からスタートしたレッドブルのマックス・フェルスタッペンがマクラーレンのランド・ノリスやメルセデスのジョージ・ラッセルらの追撃を振り切り、今季6勝目を挙げた。
RBと2025年シーズン末までの契約延長を発表した角田裕毅(つのだ・ゆうき)は入賞圏内を走行していたレース終盤にスピン、惜しくも入賞を逃がした。
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第9戦カナダGPの舞台となったモントリオールのジル・ビルヌーブは、公園の周回路を利用したサーキットです。ストレートをシケインとヘアピンで組み合わせた典型的なストップ&ゴーのレイアウトで、市街地コースが舞台の第8戦モナコGPと同様にマシンのポテンシャルが出にくいコースといえます。
予選は白熱したタイムアタック合戦が展開され、メルセデスのラッセル選手とフェルスタッペン選手がともに1分12秒000という1000分1秒まで同タイム(!)を記録。先にタイムを出したラッセル選手がポールポジションを獲得し、フェルスタッペン選手は2番手からのスタートとなりました。
前戦のモナコでシャルル・ルクレール選手が優勝、カルロス・サインツ選手が3位に入り、ダブル表彰台を獲得したフェラーリ。モントリオールでも注目していたのですが、予選から振るいませんでしたね。ルクレール選手は11位、サインツ選手は12位と2台そろってトップ10にすら入れませんでした。
昨年までのフェラーリは、予選での一発のタイムは速いけれど決勝では苦しむというパターンが多かったですが、今年は決勝でのパフォーマンス向上を目指して、タイヤに優しいマシンになっているように見えます。
タイヤに優しいということは、タイヤに熱が入りにくいというデメリットもあります。特にモントリオールのような高速コーナーがない、横方向の力がかかりにくいサーキットではタイヤに熱は入りづらい。しかも今年の予選は曇りで気温が低く、フェラーリの両ドライバーはタイヤを適切な温度まで上げられず、グリップ不足を訴えていました。
フェラーリ以上に苦しんでいたのはレッドブルのセルジオ・ペレス選手です。モントリオールでは予選16番手に終わり、モナコに続いてカナダでもQ1で敗退。予選でトップ10に入れなかったのは3戦連続となります。フェラーリやマクラーレンが速くなってきたとはいえ、レッドブルのマシンは予選で上位に入れる競争力は十分にあるはずです。
決勝でもペレス選手はクラッシュを喫してリタイア。2戦連続でノーポイントに終わりました。ここ数戦、ペレス選手はスランプというか、完全に調子を落としているように見えます。レッドブルはカナダGPの前にペレス選手との契約を2026年シーズン末まで2年間延長することを発表しました。でもペレス選手がこんな走りを続けていると、レッドブルのコンストラクターズチャンピオン3連覇は危うくなってくると思います。
超スローペースでバトルがほとんどなく退屈だったモナコGPとは対照的に、カナダGPの決勝は雨が降ったり止んだりする難しいコンディションとなり、クラッシュやコースアウトが続出。セーフティカー(SC)が2度も出動するという、目まぐるしいレース展開となりました。
そんな中でレッドブルのフェルスタッペン選手が今季6勝目を飾りますが、昨年までのようにライバルを寄せつけずに圧勝する、というレース内容ではありませんでした。レッドブルのマシンはサスペンションが固く、モナコと同様に低速コーナーや縁石に乗ると飛び跳ねてしまい、コントロールが非常に難しくなっているようです。それでも勝利をつかみ取ってしまうフェルスタッペン選手はさすがですが、今年のマシンは神経質な挙動をするため、どこでも速いというわけではなくなっています。
今、どんなタイプのサーキットでも速い"オールラウンダー"のマシンに仕上がっているのはマクラーレンでしょう。モナコとカナダでも安定した速さを披露し、ノリス選手は2位表彰台を獲得。オスカー・ピアストリ選手もレース終盤まで表彰台争いに加わっていました。
予選で散々な結果に終わったフェラーリですが、悪い流れを変えることができませんでした。決勝でルクレール選手はパワーユニットにトラブルが発生してリタイア。サインツ選手もクラッシュを喫し、カナダでは2台そろってリタイアに終わります。
今回のノーポイントはフェラーリにとって大きな痛手です。モナコでダブル表彰台を決めて、せっかくコンストラクターズ選手権をリードするレッドブルに24点差まで迫ったのですが、49点差まで引き離されてしまいました。
不調のフェラーリに代わってモントリオールで躍進したのはメルセデスです。ジル・ビルヌーブの特殊なコースとマシンの特性が合っていたのか、カナダGPの週末を通して安定した速さを発揮していました。ラッセル選手は3位表彰台を獲得しましたが、レース終盤のドライブミスがなければ優勝のチャンスもあったと思います。
3戦連続でポイントを獲得していた角田選手がドライブするRBはカナダでも調子が良さそうで、予選で角田選手は8番手、チームメイトのダニエル・リカルド選手は5番手という好位置につけました。角田選手はQ1で2番手、Q2では4番手のタイムを叩き出していたので、もう少し上を狙えたと思いますが、悪くないポジションからスタートすることができました。
ただ決勝でのラップタイムを追いかけていると、RBのマシンには予選のときほどのスピードがなく、前のマシンを追い抜いて順位を上げるという勢いはなかった。それでも角田選手はうまくレースをまとめていたと思います。レース中盤にセーフティカーが導入されたときに大半のドライバーはタイヤ交換をしましたが、角田選手はコース上にとどまり7番手に浮上。
そこからポジションを落としますが、ゴールまで残り5周の時点で、角田選手は9位、リカルド選手が10位を走行していました。そこでチームからリカルド選手に対して「ユウキと戦っていい」と無線で指示が出ます。「なぜ!?」と驚きました。ポジションが入れ替わったとしてもチームとして獲得できるポイントは変わりません。バトルをすれば、余計なリスクを負うだけです。
後ろからプレッシャー与えられた角田選手はスピンを喫し、結果的に大きく順位を落とすことになります(最終結果は14位)。スピンしたのは角田選手のミスですが、RBの作戦には大いに疑問を感じましたね。
次のスペインGPは現時点でのチームの序列が明確になると思います。戦いの舞台となるのはバルセロナ郊外のカタロニア・サーキット。長いストレートとさまざまなタイプのコーナーが設置され、マシンの総合力が問われるコースです。
各チームがテストで頻繁に使用しており、データが豊富にあります。また多くのチームが空力の改良パーツを持ち込む予定ですが、カタロニアは空力効率も求められるコースなので、アップデートの効果がタイムに反映されると思います。各チームのマシンの実力がはっきり出るでしょう。
注目しているのはメルセデス。カナダGPの勢いが通常サーキットで開催されるスペインGPでも健在であれば、これからのシーズンは本当に面白くなります。レッドブル、フェラーリ、マクラーレン、メルセデスの4チームが優勝争いをする展開になってほしいと願っています。
もちろん角田選手が所属するRBと上位グループとの力関係も気になります。もしトップ4チームに肉薄することができれば、表彰台も視野に入ってきます。スペインGPは今後を占う重要な一戦になりますし、スペイン(決勝6月23日)、オーストリア(決勝6月30日)、イギリス(決勝7月7日)の3連戦はシーズン前半戦の大きな山場になると思うので、見逃せません!
24年シーズンはまだ序盤戦が終わったばかりだが、すでに来年を向けての動きが加速している。レッドブルがペレスと新たに2年契約を結び、2026年シーズン末まで残留すると発表。角田選手もRBと25年シーズン末まで契約延長することが決まった。
「角田選手のRB残留が決まってひとまずよかった。これまで移籍先の候補としてハースやアルピーヌなどの名前が出ていましたが、今シーズンの角田選手はドライバーズランキング10位に入るだけの活躍をしています。トップチームから声がかかってもおかしくないと思っています。来シーズンの残されたシートは少なく、あとはフェラーリを離脱することが決まっているサインツ選手がどこに行くのか......? 彼の動向が決まれば、25年シーズンのラインナップがほぼ決まりますね」
スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/AKM ヘア&メイク/大平真輝)
1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした1987年頃からF1のファンに。主演ミュージカル『Endless SHOCK』の最終公演が、東京・帝国劇場で上演中。「KinKi Kids Concert 2024-2025 DOMOTO」が、2024年12月31日と25年1月1日に京セラドーム大阪、25年1月12日と13日に東京ドームで開催決定
公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】