渡辺陽一郎わたなべ・よういちろう
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
自動車メーカーとして長い歴史を持つ仏プジョー。電動化にも意欲的で実はEVにマイルドハイブリッド、そして今回試乗したプラグインハイブリッドまで用意している。その出来は? 試乗したカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が特濃解説する。
* * *
――今回試乗したのはプジョーです。ただ、名前は知っていてもクルマがパッと思い浮かばない人も多いかと。どんな自動車メーカーなんスか?
渡辺 プジョーの歴史は古く、フランスの製鉄業からスタートし、1889年に蒸気機関で走る三輪車を発表しました。20世紀に自動車生産を本格化させ、1974年にシトロエンと合併しています。21年にはフィアット・クライスラーとも合併し、現在は欧州自動車大手ステランティスのブランドのひとつです。
――クルマ造りの特徴は?
渡辺 フランスで生まれた自動車メーカーではプジョー、シトロエン、ルノーが有名です。この中でプジョーは欧州全体で売れ行きを伸ばすことを視野に入れており、近年は売れ筋であるドイツ車に近い商品開発を行なっています。
――今回試乗したプジョーは408GTハイブリッド。外観は個性的な仕上がりというか......クセが強い感じです。
渡辺 5ドアボディですが、リアゲートを寝かせて外観をクーペ風に仕上げました。全長は4700㎜、全幅は1850㎜と少し大柄です。ただし、最低地上高は170㎜を確保しているので、道のデコボコも乗り越えやすい。
――ちなみに、このクルマはハイブリッド車なんスか?
渡辺 正確にはPHEV(プラグインハイブリッド車)です。1回の充電で走行できる距離はWLTCモードで66㎞と短いですが、近所の買い物程度ならエンジンを使わず、EV走行で賄えてしまう。
――つまり、エコカー的な走りのクルマであると?
渡辺 そう思いますよね? しかし、今回乗った408GTハイブリッドは4気筒1.6リットルターボ+モーター駆動です。システムの最高出力は225馬力で、最大トルクは360Nm。ガソリンエンジンだと、4リットルモデルに匹敵します。
――確かに加速は痛快で、しかもチョー静かでした。ちなみに内装も個性的です。
渡辺 逆に言うと、デザインを優先させた内装です。事実、メーターが高い位置に装着されており、ステアリングホイール(ハンドル)の上側から見るため、運転姿勢によってはメーターの視認性が下がる。
また、ステアリングホイールの形状も楕円形で、ユーザーによっては違和感を抱くかも。内装のデザインは輸入車の中でも特に個性的なので、購入時は要チェック!
――最大の魅力はどこです?
渡辺 快適性です。シートはいかにもプジョーらしく、前後席共に腰をしっかりと支えます。そこに快適な乗り心地も加わるので、長距離を移動しても疲れにくい。
――気になった点は?
渡辺 全幅がワイドで、斜め後方の視界も良くない。購入時には縦列駐車などを試したほうがいいでしょう。
――お値段をどう見ます?
渡辺 641万6000円と値は張りますが、PHEV車なので補助金や減税が適用されます。まずは販売店で具体的な金額を確認するべし!
――リセールバリューは?
渡辺 デザインが個性的で、魅力が少々わかりにくいため、数年後に売却するときの条件は特に良くありません。ただし、個性的な内外装を気に入れば長く付き合える一台です。優れた乗り心地と走行安定性の両立はプジョーならではで、日本車ではなかなか味わえません。
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員