■フィットネス&ミュージック
中国最大手の二刀流自動車メーカーBYDは、昨年302万台(前年比62%増)というミラクルにも程がある数字をマークし、世界新車販売ランキングで初の10位に輝いた。
この302万台の内訳はPHEV(プラグインハイブリッド)が半数弱となる約144万台で、残りがEV(電気自動車)である。ちなみにBYDは2008年に世界初となる量産型PHEVを開発したパイオニアだ。ところが、EV推しメディアの手にかかるとBYDは〝中国最大手のEVメーカー〟となる。日本市場ではEV専売だからなのか、PHEVの痕跡は見事に消されてしまう。
BYDが日本市場攻略のトップバッターに指名し、昨年1月31日に登場したミドルサイズSUVのEV、アットスリーも同様だ。
BYDのデザインディレクターを務めるのは、伊アルファロメオや独アウディで活躍したヴォルフガング・エッガー氏。当然だが、アットスリーは欧州EV顔負けの見た目や走りに仕上がっている。ちなみに航続距離は470㎞(WLTCモード)、お値段は400万円台だ。EV推しメディアはこの見た目と航続距離と価格だけを切り取って、その脅威をあおりにあおっていた。
だが、アットスリーの真価はEV推しメディアが一切触れない内装にある。テーマは〝フィットネス&ミュージック〟。内装のモチーフは筋肉やトレーニング機器という斬新さである。圧巻はインパネで、どこを見てもマッスルまみれ。確かにフィットネスを感じる。
しかし、ドアノブに関しては大変申し訳ないが、スポーツジムの機器というよりも、日本人的にはパチンコ台のハンドルに見えてしまう。そこは厳しく指摘しておきたい。
インテリアのもうひとつの見所は「ミュージック」。つまり音だ。実はすべてのドアポケットに3本の弦が張られている。弦は伸縮性があり、指で弾くとちゃんと音が鳴る。渋滞時の暇潰しに最適である。さらにカラオケ機能も装備し、専用マイクまで用意しているのだ。
つまり、アットスリーはヴォルフガング・エッガー氏の手により、中国カーと欧州カーの文化が融合され、新感覚の個性を獲得したというわけだ。余談だが、EV推しメディアが脅威をあおりにあおったアットスリーだが、昨年の日本市場における販売台数は1198台であった。
■電気料金の大幅値上げや補助金は絶対に触れない
このようにEV推しメディアは、自分たちにとって都合の悪い事実や数字は隠ぺいする。そして、論点をずらしながら国とEVを全力で持ち上げる。事実、電気料金の大幅値上げや、物価高に苦しむ庶民を尻目に国が垂れ流す1291億円の補助金に関しては、何があっても絶対に触れない。
実はEV推しメディアは「一方を持ち上げるため、一方をけなす」という得意技を持つ。つまり、EVを持ち上げるために、これまでトヨタのハイブリッドをけなし続けてきたわけだ。加えて、多様性が求められる令和にEVだけをゴリ押しして、他の脱炭素カーは一切認めないデタラメぶりである。
もうお気づきだろうが、EV推しメディアの本性は〝ド昭和(戦時下)〟だ。引き続き、この不適切にも程がある「EV推しメディア」の観測を続けていきたい。