今回取り上げるクルマはポルシェ911の高性能モデルGT3 RS。ド派手な見た目が話題のモデルだが、コックピットはどうなっているの? 実際の走りはどうよ? 噂のギンギンモデルを徹底チェックしたぞ!!
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■911シリーズが昨年、販売好調だったワケ
高級スポーツカーブランドとして世界を魅了している独ポルシェ。昨年は過去最高の販売台数をマークして大きな話題を呼んだ。そんなポルシェの中でイケイケ絶好調だったのが911シリーズである。お値段は1694万~4118万円というセレブカーながら、世界中で売れに売れて5万146台(前年比24%増)を記録した。
ちなみにこの数字はポルシェの全モデルの中で最大の増加率というからビックリ仰天! 世界的な売れ筋であるSUVのカイエンやマカンならわかるが、脱炭素が叫ばれる中で、なぜスポーツカーガチ勢の、高価な911が鬼売れしたのか?
「911は昨年、生誕60周年の記念イヤーだったんです」(販売店関係者)
つまり、911は昨年還暦を迎えたのだ。だが、そこは天下のスポーツカーブランド。攻めに攻めており、今回試乗した911の高性能版ともいえるGT3 RSは見た目からしてギンギン。レベチのエアロがテラ盛りで、特に目をクギづけにしたのは見事なまでにそそり立った巨大リアウイング。祭りのやぐらに匹敵するド派手さと勇ましさである。
しかし、こんなエキサイティングにも程がある見た目のクルマが公道を走っていいものか? 取材に同行していたカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏に、思わず声を潜めてそう質問した。
「このポルシェGT3 RSというクルマは、ポルシェがレースで培った知見や技術を注ぎ込んだモデルで、いうなれば〝公道を走れるレーシングカー〟なのです」
ポルシェ自らが魔改造し、911の最終形態のような姿になったこのクルマ、実はアチコチに穴が開いている。この穴はいったいなんなのか?
「サーキット走行で役立つ空気抵抗の低減や冷却機能などのためです。この立派なリアウイングにしてもそうですが、100%の性能を引き出すにはサーキットに行くしかない」
ドアを開ける。シートはドライバーのカラダをシッカリ固定するバケットタイプだ。いざシートに滑り込む。覚悟はしていたが、これまでに乗ったどのクルマより窮屈で着座位置も低い。なのに視界はすこぶる良好だ。
後席に目をやる。座席は取っ払われ、代わりにクルマの剛性を高めるカーボン製のロールケージが組み込まれている。異世界に来た感がハンパない。シートベルトを締めると、木にくくりつけられたような気分だ。
エンジンを始動させる。野獣の唸り声のような低い音が腹に響く。まさに〝市販車の皮を被った狼〟である。
恐る恐る走り出す。すると、ありとあらゆる場所から不穏な音がするじゃないか! 慌ててクルマを止め、首を横に向ける。助手席の渡辺氏はニヤニヤしながらこう言う。
「サーキット走行を前提とした本物の高性能車ですから、低速はエンジンからガシャガシャとメカ的なノイズが出ます。
しかし、高回転になると音は消え滑らかに。それからガキガキガキという音は、クルマの走行性能を向上させる超強力なLSD(リミテッド・スリップ・デフ)から出たもので、壊れたわけではありません。サーキットを走るクルマならではの音です」
確かに速度がある程度出ると走りは激変。ぶっちぎりで楽しい。しかも、見た目はまんまレーシングカーだが、とても乗りやすい。とはいえ、ポルシェGT3 RSは正真正銘のスポーツカー。運動不足のメタボ腹では乗り降りするだけでもひと苦労だ。
つまり、このクルマは乗り手を選ぶ。ましてやサーキットで、この鬼性能を引き出すには相応の鍛錬が必要である。
■ポルシェ911史上初のハイブリッド登場!
ポルシェは5月28日に911シリーズ初となるハイブリッドモデルを電撃発表した。3.6リットル水平対向6気筒ガソリンツインターボエンジンとモーターを組み合わせたシステム最高出力は541馬力、最大トルクは610Nm。
時速100キロ到達は3秒で、最高速度は時速312キロ。このパワーユニットは「T-ハイブリッド」と呼ばれ、ポルシェがル・マン24時間レースで磨き抜いた技術がブチ込まれているそうな。
ちなみにT-ハイブリッドを採用した911カレラGTSのお値段は2254万~2615万円!!