堂本光一Koichi DOMOTO
1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした87年頃からF1のファンに。2023年12月にKinKi Kids17枚目のアルバム「P album」、47枚目のシングル「シュレーディンガー」をリリース。主演ミュージカル『Endless SHOCK』の最終公演が、11月に東京・帝国劇場にて上演予定。
公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】
第12戦イギリスGPがシルバーストン・サーキットで開催され、メルセデスのルイス・ハミルトンが2年半ぶりの優勝を飾り、今季6人目のウイナーとなった。王者マックス・フェルスタッペンは苦戦するも、2位でフィニッシュ。ランキング2位につけるマクラーレンのランド・ノリスが3位に終わり、ポイント差を広げた。
次は夏休み前の最後のイベントとなるハンガリーGP(決勝7月21日)とベルギーGP(決勝7月28日)の2連戦。レッドブル、マクラーレン、メルセデスの力が拮抗し、混戦模様に拍車がかかっているが、新たなウイナーは誕生するのか!?
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シーズン折り返しの第12戦イギリスGPは本当に面白かった。ドライのスタートでしたが、途中で雨が降ったり止んだりして、コンディションが目まぐるしく変わっていきました。そのたびに順位が入れ替わり、スリリングな優勝争いが展開されました。
そんな中、予選から速さを見せていたメルセデスのハミルトン選手が戦略とピットストップを決めて、母国GPで9度目の勝利をつかみ取りました。ポールポジションを獲得したジョージ・ラッセル選手は、決勝でトップを快走する場面があったのですが、マシントラブルでリタイア。惜しかったですね。
好調マクラーレンの2台も速かった。ランド・ノリス選手とオスカー・ピアストリ選手はともにピット戦略をうまくやれば勝てるチャンスはあったと思いますし、レッドブルのフェルスタッペン選手もレース終盤、ドライコンディションになってから驚異的な速さでトップのハミルトン選手を猛追しました。最後まで誰が勝ってもおかしくない状況で、見どころが多すぎました。
ただ付け加えるなら、ドライでのガチンコのレースが見たかった。メルセデスはドライでも強かったのか? それとも彼らにとって恵みの雨だったのか? もしドライだったらメルセデスとマクラーレンのどっちが速かったのか? あるいはフェルスタッペン選手が勝ったのか? ドライで、各チームのマシンの本当の実力を見たかった。もちろん今回の混沌としたレースも十分面白かったですが、それでもドライの勝負を望むのは贅沢ですかね(笑)。
難しいコンディションとなったイギリスGPは、7度の世界チャンピオンに輝いた経験豊富なハミルトン選手が王者の強さを発揮したレースでした。シルバーストンは高速コーナーが多く、前方のマシンの乱気流によって自らのマシンがスライドしタイヤを痛めてしまう選手がいましたが、ハミルトン選手はタイヤをうまくマネジメントしていた。攻めるときと守るときをしっかりと見極め、タイヤを上手に使って戦っていました。
来年フェラーリへの移籍が決まっているハミルトン選手にとっては今回のイギリスGPが2013年から長年在籍するメルセデスでの最後の地元GPです。そこで優勝を決めたのですから、運も実力も持っていると改めて感じましたし、それと同時にメルセデスのマシンは安定感があり、すごく良くなっているように見えました。
復調の兆しがあるメルセデスとは対照的にフェラーリは精彩を欠いています。第10戦のスペインでは大型のアップデートを持ち込みましたが、車体が激しく上下動するポーパシングに苦しみ、イギリスでは旧型仕様のパッケージに戻していた。つまりダウングレードです。アップデートが機能しなかったこともあり、スペイン、オーストリア、イギリスの3連戦ではレッドブル、マクラーレン、メルセデスの3チームから遅れをとってしまった感があります。
フェラーリと同様にスペインで大型のアップデートを持ち込んだビザ・キャッシュアップRB(VCARB)もシルバーストンでは苦しんでいました。アストンマーティンやハースに先行され、ウイリアムズにも攻めたてられていました。
レース中、僕は角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手のラップタイムをずっと追いかけていましたが、ウイリアムズ勢よりもちょっとずつ遅かった。そんな苦しい中で、角田選手は一生懸命に食らいついて、なんとか10位でフィニッシュ。第8戦のモナコGP以来の入賞を果たしました。
それでも中団グループのライバル勢が競争力を上げてきたこともあり、角田選手はドライバーズランキングでトップ10から陥落。イギリスGP終了時点で、アストンマーティンのランス・ストロール選手とハースのニコ・ヒュルケンベルグ選手に抜かれてしまいました。特にヒュルケンベルグ選手の活躍は光っています。彼は予選ではどんな状況でも一発のタイムを出してきます。まさに予選職人ですね。イギリスの予選でも6番手を獲得し、決勝でもそのポジションを守り切っています。
僕が好きで応援しているフェラーリと、角田選手の所属するVCARBがともにマシンのアップデートが機能せず、ライバルに対して相対的に競争力を下げてしまっているのが現状です。そこが悲しいですね。両チームが苦しんでいる原因が、走行データが少ないためにセッティングのスイートスポットが見つかっていないということであれば改善の余地もあると思うのでいいですが......。
シーズン中盤に入り、フェルスタッペン選手とノリス選手によるバトルがヒートアップし、注目を集めています。2021年シーズンにフェルスタッペン選手はハミルトン選手と熾烈なタイトル争いをしましたが、その後、メルセデスが低迷したこともあり、フェルスタッペン選手はライバル不在の時期が続きました。そこにようやく同世代のノリス選手がフェルスタッペン選手の対抗馬として登場してきたわけですから、世界中のF1ファンはワクワクしているはず。
でも僕は、ルクレール選手がフェルスタッペン選手のライバルになると思ったこともあったんですけどね......。2022年シーズン、フェルスタッペン選手とルクレール選手が激しいバトルを何度か繰り広げたのですが、その後はフェラーリの戦闘力不足やミスなどもあり、物足りないシーズンが続いていました。今年はモナコGPで2年振りの優勝を飾りましたが、ルクレール選手は発言もバトルもクリーンですし、ちょっと"いい子"過ぎるのかもしれません。
ノリス選手も優等生タイプという印象でしたが、第6戦のマイアミGPで初優勝を飾り、常に優勝を狙える位置を走るようになって、戦い方が変わってきている。貪欲に勝利を目指す走りになっています。ライバルと争ってチャンピオンを勝ち獲るためには、できることはなんでもやるという部分が絶対に必要になってきます。
時には、えげつない走りをすることがあるかもしれないし、それはすべて悪いことじゃないと思います。これからフェルスタッペン選手とノリス選手は、さらに激しい優勝争いを見せてくれるんじゃないかと期待しています。
イギリスGPでハミルトン選手が優勝し、今季6人目のウイナーが誕生したことになります。昨年のウイナーはわずか3人(フェルスタッペン選手、セルジオ・ペレス選手、カルロス・サインツ選手)でしたが、シーズン中盤に入って、各チームのマシン性能に大きな差がなくなり、混沌としてきました。
でもメルセデスのふたりが常に優勝争いにからんでくると、ポイントリーダーのフェルスタッペン選手にとっては好都合なんですよね。ライバル同士でポイントを取り合う状態になりますから。ただコンストラクターズタイトルに関しては、首位のレッドブルは安泰といえる状況ではありません。
フェルスタッペン選手のチームメイト、ペレス選手が絶不調で、第8戦モナコGP以降の5戦でペレス選手は11ポイントしか獲得していません(同期間でフェルスタッペン選手は94ポイントを獲得)。さらにレッドブルはこれまでマシン開発を率いてきたエイドリアン・ニューウェイ氏が2025年の第1四半期限りでチームを離脱することが決まっており、すでに開発の第一線から退いています。レッドブルは、この先のマシン開発にも不安があります。
そういう状況で迎える、ハンガリーとベルギーの2連戦は見どころ満載です。ハンガリーは曲がりくねった低速コーナーが続き、平均速度も低い。続くベルギーは高速コーナーが多く、F1屈指のハイスピードサーキットです。対照的なキャラクラーのサーキットで行なわれる連戦で、2連勝中のメルセデスが優勝争いに加わってくるなら実力は本物でしょう。でも、そうなったらハミルトンはフェラーリへの移籍を後悔するんじゃないですかね(笑)。
ハンガリーはマクラーレンが得意とする低速コーナーが多く、ノリス選手とピアストリ選手は上位に入ってくると予想しますが、フェラーリも全レースの中でもっとも低速のモナコで優勝しているので期待したいです。ここでダメだと、アップデートそのものが失敗という結論になるかもしれません。そうなると、今後の戦いがさらに厳しくなってきます。
同じことはVCARBにも言えるかもしれませんが、角田選手のコメントを聞くと、VCARBのマシンは低速コースと相性がいいようです。ハンガリーで速さを見せて、後半戦に向けて期待の持てる結果を残してほしいです。
昨年から日本の鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)を始め、各国のサーキットで撮影していたブラッド・ピット主演の映画『F1』。来年6月25日に全世界公開が決まった。
「予告編を見ましたが楽しみですね。人々の想像を超えるドラマが起こるのがF1です。2021年シーズン、最終戦の最終ラップで決着したハミルトン選手とフェルスタッペン選手のタイトル争いがまさにそうでした。F1を題材とした映画は過去にもありますが、その多くは実話をベースにしています。例えば、僕が日本語版の声優を務めさせていただいた『ラッシュ/プライドと友情』(2014年公開)は1976年のニキ・ラウダ選手とジェームス・ハント選手の劇的なタイトル争いをもとにしています。でも今回の『F1』はフィクションのようです。筋書きのないドラマが起こるF1に、どんな筋書きをつけるのか? 僕もエンターテインメント作品の作り手としてどんなストーリーになるのか、とても興味があります!」
スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/AKM ヘア&メイク/大平真輝)
1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした87年頃からF1のファンに。2023年12月にKinKi Kids17枚目のアルバム「P album」、47枚目のシングル「シュレーディンガー」をリリース。主演ミュージカル『Endless SHOCK』の最終公演が、11月に東京・帝国劇場にて上演予定。
公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】