今回試乗したモデルのボディサイズは全長4960㎜×全幅1880㎜×全高1485㎜。写真で見るよりデカくて長い 今回試乗したモデルのボディサイズは全長4960㎜×全幅1880㎜×全高1485㎜。写真で見るよりデカくて長い

今年1月にニッポン市場に上陸したメルセデス・ベンツの新型Eクラス。世界累計販売1600万台超を誇るこのモデルはどこがどう変わったのか? 見どころはどこか? 自動車研究家の山本シンヤ氏がメガ盛り解説する。

* * *

■メルセデス・ベンツの〝ハイブリッド〟

山本 今回は千葉県の公道でメルセデス・ベンツの新型Eクラスを試乗してきました。

――そもそもの話ですが、メルセデス・ベンツの販売状況ってどんな感じなんスか?

山本 昨年のメルセデス・ベンツの世界新車販売台数は約249万台です。気になる日本市場ですが、JAIA(日本自動車輸入組合)によると、5万1228台をマークし、9年連続で輸入車トップに輝いています。

内訳に目を向けると、メルセデスの高級ブランドであるマイバッハは過去最高の600台、スポーツブランドのAMGも9000台と絶好調でした。 

――へぇー!

山本 そんなメルセデス・ベンツが今年1月、日本市場に投入したのが、約7年ぶりにフルモデルチェンジを受けた6代目Eクラスです。

メルセデス・ベンツ E350eスポーツエディションスター 価格:988万円 充電は普通充電と急速充電の二刀流。車外に電力を供給できるので災害時も役立つ。ちなみに新型となり、お顔もアップデート メルセデス・ベンツ E350eスポーツエディションスター 価格:988万円 充電は普通充電と急速充電の二刀流。車外に電力を供給できるので災害時も役立つ。ちなみに新型となり、お顔もアップデート

――Eクラスの歴史は?

山本 古くは「ミディアムクラス」の名称で発売されていましたが、Eクラスとしては1993年からです。初代はW124型と呼ばれ、〝オーバークオリティ(過剰設計)時代最後のメルセデス〟としても有名です。その最新型となる今回の6代目はセダンとステーションワゴンが同時デビューとなりました。

――パワートレインは?

山本 ハイブリッドです。

――メルセデス・ベンツのハイブリッド! 確か2030年までに全車をEVにすると宣言していませんでしたか?

山本 実はそのメルセデス・ベンツの公式アナウンスは、「市場が許せば」という注釈付きだったんです。ところが、それをEV推しメディアが都合よく切り取って報道したのがひとり歩きしてしまった。

荷室容量は370リットル。リチウムイオンバッテリー搭載の関係でほかのモデルより容量は減る 荷室容量は370リットル。リチウムイオンバッテリー搭載の関係でほかのモデルより容量は減る

――なるほど。

山本 今年2月に開かれた決算会見でメルセデス・ベンツは、昨今の市場の動向を踏まえ、30年までの全車EV化を撤回しました。正確には撤回ではなく、前述のとおり市場がまだ許さなかったという話ですが。

――とはいえ、ここ数年でメルセデス・ベンツは数多くのEVモデルを発表しているのも事実です。

山本 EQシリーズですね。この上級モデルは内燃機関搭載モデルとは別仕立てのプラットフォームで、EV専用です。ちなみにライバルのBMWはひとつのプラットフォームでマルチなパワートレイン展開を行なっており、両社の戦略の違いが見えます。

2リットル直列4気筒のガソリンターボエンジンにモーターを組み合わせたシステムを搭載 2リットル直列4気筒のガソリンターボエンジンにモーターを組み合わせたシステムを搭載

――話を戻すと、そんな6代目Eクラスが搭載するハイブリッドとは?

山本 2リットル直列4気筒ガソリンマイルドハイブリッドと2リットル直列4気筒ディーゼルターボのマイルドハイブリッド、そして2リットル直列4気筒ガソリンターボと電気モーターを組み合わせたPHEV(プラグインハイブリッド)です。

――3種類もあるんだ! その中で注目はどれですか?

山本 システム最高出力312馬力を誇るPHEVです。先代のPHEVは一応用意しました感が強かったのですが(汗)、6代目のPHEVは25.4kWhという大容量のバッテリーを搭載。EVの航続距離は112㎞と一般家庭の1日の平均走行距離(60㎞)をシッカリとカバーしています。

――つまり、充電環境が身近にあれば普段はEVと同じように使える?

山本 そうですね。通勤や買い物などの日常走行なら、ほぼほぼガソリンを使わずに走れます。仮に走行中にエンジンを使うシーンがあっても、モーターが補助するので加速も鋭くパワフルです。

オプションの「MBUXスーパースクリーン」が搭載されており、インパネ中央から助手席までディスプレー! 未来感ハンパねぇ!! オプションの「MBUXスーパースクリーン」が搭載されており、インパネ中央から助手席までディスプレー! 未来感ハンパねぇ!!

――ただ、値が張ります。

山本 ディーゼルのマイルドハイブリッドの価格は921万円で、PHEVは988万円ですが、オプション装備などを同等にそろえると、その差は約20万円まで縮まる。さらにPHEVには国から44万円の補助金が交付されるので、実質的な購入価格は逆転します。

――つまり、PHEVは性能含め、超お買い得カーであると。とはいえ、6代目Eクラスって、実際に見ると、けっこうデカくないですか?

山本 確かにボディサイズは、ちょっと前のSクラス(メルセデス・ベンツの旗艦モデル)並みではあります。

――正直言って、これだけボディがデカくて長いと取り回しが大変では?

山本 もちろん、ボディの大きさは気になると思います。しかし、ハンドルの切れ角が大きいのでサイズの割には小回り性能が高い。さらにオプション設定されている後輪操舵機構が秀逸で冗談抜きに取り回しは楽チンです。なので、駐車場などでもそれほど困らないと思います。

――ちなみに日本はもちろんのこと、世界的にも「セダンはオワコン」という声が広がっています。

山本 人気の面ではそうですが、6代目Eクラスに乗ると、「セダンもいいよね」と思わせる魅力がたくさん見つかると思いますよ。

■4人乗り新型オープン登場!

本革シートには熱対策の特殊コーティングが施され、後席にもヘッドエアバッグを用意 本革シートには熱対策の特殊コーティングが施され、後席にもヘッドエアバッグを用意

6月25日、メルセデス・ベンツ日本は4人乗りオープンモデル「CLE200カブリオレ スポーツ」の発売を発表した。

ソフトトップは時速60キロ以下であれば20秒以内に完全電動で開閉操作が可能だという。ちなみにパワートレインは2リットル直列4気筒ガソリンターボ+マイルドハイブリッド。最高出力は204馬力で、お値段は936万円。メルセデスのオープンに注目!

★『インプレ!』は毎週水曜日更新!★