新型フロンクスを「自転車の国サイクルスポーツセンター」(静岡県伊豆市)で徹底チェックした渡辺氏。その評価はいかに!? 新型フロンクスを「自転車の国サイクルスポーツセンター」(静岡県伊豆市)で徹底チェックした渡辺氏。その評価はいかに!?

世界を席巻するスズキの新型SUVフロンクスがついにニッポン登場。発売前のプロトタイプを速攻試乗したカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が、その出来栄えや実力を濃厚メガ盛り解説する。

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■インドで爆売れ中のスズキの新型SUV

――今回試乗したのはスズキの新型コンパクトSUVですが、インド製とか?

渡辺 はい。車名はフロンクスで、49の国と地域で展開するスズキのグローバルカーです。インドではス
ズキの上級車を扱うネクサで販売されている高級モデルですね。

――日本での発売はいつ?

渡辺 今秋を予定していますが、価格やスペックに関しては、まだ公式アナウンスはありません。そこで販売店に聞いたところ、「8月上旬には店頭で価格を明らかにし、予約受注を開始すると思う」とのことでした。

――そもそもですが、スズキがインドに進出したワケは?

渡辺 以前、関係者に尋ねたときは、「スズキが1番になれる市場を探した結果、インドへ進出した」と返答されました。北米や欧州は1960年代から大手自動車メーカーが続々と進出しており、入り込む余地がなかった。そこで、スズキの得意な小型車を売りやすいインドに力を入れたと。

――インドにおけるスズキの国内シェアは?

渡辺 現在、16車種を生産し、40%超をマークしています。今年3月にはインドでの四輪累計生産3000万台を達成。これはインド進出から40年での到達となります。

スズキ フロンクス 価格:未発表 鬼瓦のようなユニークな顔面を持つフロンクス。顔はデカいが、最小回転半径は4.8m。取り回しはチョー楽チンである スズキ フロンクス 価格:未発表 鬼瓦のようなユニークな顔面を持つフロンクス。顔はデカいが、最小回転半径は4.8m。取り回しはチョー楽チンである

――スゴッ!

渡辺 今回紹介するフロンクスは前述のとおりプレミアムコンパクトSUVですが、インドで爆売れ! 乗用車市場最速で10万台を記録した大人気モデルなんですよ。

――要するにフロンクスは、鳴り物入りで日本の大激戦区であるコンパクトSUV市場に殴り込んできたモデルだと。具体的にはどんなSUVなんですか?

渡辺 インドでは全長を4m以下に抑えると税額が下がります。そのため、フロンクスの全長は3995㎜と短い。全幅は1765㎜で、人気SUVのトヨタヤリスクロスとほぼ同じサイズですね。

――ふむふむ。

渡辺 また、フロンクスの全高は1550㎜なので、立体駐車場を利用しやすい。全高が1550㎜以下のSUVは、マツダCX-30やレクサスUXなど限られている。この全高は立体駐車場の多い都市部では大きなメリットです。

――インド生産のモデルなのに、日本のニーズにも合っていると。試乗した感想は?

渡辺 インドのウェブサイトで外観を見たときは、少し安っぽく感じましたが、実車は意外に上質でした。フロントマスクも丁寧に造り込み、インパネの周辺をはじめとする内装にはステッチ(縫い目)も入ります。いわゆる新興国向けの安価な商品ではない。

コックピットに滑り込むと、その質感の高さと洗練度に仰天。「インド製のクルマ」という先入観は一気に吹き飛ぶ コックピットに滑り込むと、その質感の高さと洗練度に仰天。「インド製のクルマ」という先入観は一気に吹き飛ぶ

シートは革とファブリックを用いている。ブラックとボルドーの2トーン配色となる シートは革とファブリックを用いている。ブラックとボルドーの2トーン配色となる

――居住性は?

渡辺 全長を4m以下に抑えながら車内は十分広い。身長170㎝の大人4人が乗車して、後席に座る乗員の膝先には、握りコブシふたつぶんの余裕がある。カローラクロスなど、全長4.5m前後のSUVに相当する広さです。

――室内が広い理由は?

渡辺 開発者によると、インドでは4人乗車のニーズが多く、後席の広さと座り心地が重要になるそうです。ちなみにホンダのWR-Vもインド製のコンパクトSUVですが、やはり後席が広い。

詳細は不明だが、1.5リットルエンジンにマイルドハイブリッドを搭載し、6速ATと組み合わせる 詳細は不明だが、1.5リットルエンジンにマイルドハイブリッドを搭載し、6速ATと組み合わせる

――走りはどんな感じ?

渡辺 パワーユニットは、1.5リットルエンジンを使ったマイルドハイブリッドです。4気筒なので3気筒のような粗いエンジンノイズも発生しません。車両重量が1070㎏と軽く、SUVとしては重心が低いため、スポーティなハッチバックに近い感覚で運転できるのが特徴です。

SUVながら峠道を少しスポーティに走っても全然不安がない。スズキ車らしく走りがいい SUVながら峠道を少しスポーティに走っても全然不安がない。スズキ車らしく走りがいい

――乗り心地はどうですか?

渡辺 タイヤが路上を跳ねるような粗さは感じませんが、細かなデコボコを伝えやすく、段差の通過で少し突き上げがある。試乗する際は要チェックです。

――お値段を予想すると?

渡辺 試乗する前は、ライバル車はトヨタのライズだと考えていました。全長が4m以下と短いからです。しかし内外装の造り、ボディサイズの割に広い後席、乗り心地などから判断すると、機能や質感はヤリスクロスを上回っており、その上に位置するトヨタのカローラクロスに近い。なので、おそらく価格は249万円ぐらいかと。

スズキによると、「円安の関係で200万円以下で販売するのは難しい」とのこと。だからといって250万円を超えたら、どんなに優れた商品でも堅調に売るのは困難です。従って249万円程度を予想します。

――ライバル車はどれ?

渡辺 WR-Vで装備を充実させたZ+は価格が約249万円、ヤリスクロスのノーマルガソリンエンジンを搭載するZは約243万円です。これらの車種がライバル車になるかと。

――日本でも売れますかね?

渡辺 フロンクスの日本市場の評価と売れ行きは価格次第だと思います!

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