堂本光一Koichi Domoto
1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした1987年頃からF1のファンに。主演ミュージカル『Endless SHOCK』の最終公演が、東京・帝国劇場で上演中。「KinKi Kids Concert 2024-2025 DOMOTO」が、2024年12月31日と25年1月1日に京セラドーム大阪、25年1月12日と13日に東京ドームで開催決定
公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】
今週末の第15戦オランダGPから2024年シーズンの後半戦がスタートする。マックス・フェルスタッペンは母国オランダでポール・トゥ・ウインを3年連続で達成しているが、今回はマクラーレンやメルセデスのドライバーたちが大きく立ちはだかりそうだ。
夏休み前の数レースはライバルを相手に苦戦を強いられた王者フェルスタッペンは、母国への凱旋レースで悪い流れを断ち切ることができるのか?
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今年の3月にバーレーンでスタートした2024年シーズン。開幕戦ではマックス・フェルスタッペン選手が圧勝し、2位にはセルジオ・ペレス選手が入り、レッドブルはワンツー・フィニッシュを決めました。
その後、レッドブルとフェルスタッペン選手は開幕からの5戦で4勝と圧倒的な強さを見せつけました。僕は正直言って、「ああ、今年もレッドブルとフェルスタッペンがこのまま独走してチャンピオンになるんだな。今シーズンは優勝争いを除外して、2位以下の戦いを見て楽しむしかないかな」と思っていました。
ところがシーズン序盤を過ぎたあたりから徐々に風向きが変わって、レッドブルの対抗馬としてまずフェラーリが名乗りを上げてきて、その後、マクラーレンが大躍進し、夏休み前の数戦ではメルセデスも優勝争いに加わってきました。
レッドブル圧勝ムードはいつの間にか吹き飛んで、サーキットごとに目まぐるしく勢力図が変わってきました。結果的にシーズン前半の14戦を終えて、7人のウイナーが誕生しています。シーズン序盤の頃は、まさかこんなにも大混戦になるなんて予想もしていませんでした。
チャンピオン争いはレッドブルとフェルスタッペン選手が首位の座をキープしていますが、ランキング2位のマクラーレンとランド・ノリス選手はポイント差を急速に詰めてきています。後半戦でドライバーとコンストラクターの両選手権で順位がひっくり返る可能性は十分にあると思います。
後半戦はマクラーレン、メルセデス、フェラーリの3チームが王者レッドブルに挑むという構図になると思いますが、打倒レッドブルの最有力候補はやっぱりマクラーレンでしょう。シーズン前半のマクラーレンは勝負所でチームの戦略ミスなどがあり、勝ち慣れしていないと言われていましたが、彼らはこれまでチャレンジャーという立場でした。
第6戦のマイアミGPでノリス選手がキャリア初優勝を飾ると、マクラーレンはチームとして優勝争いの常連になってきました。その後、第13戦のハンガリーGPではオスカー・ピアストリ選手も自身初の優勝を挙げるなど、ようやくレッドブルと互角に勝負できる立場になったともいえます。
それまではフェルスタッペン選手が先を走っていたので、マクラーレンはいかに表彰台争いに食い込むのかという戦い方をずっとしてきたわけです。それが今、ようやく勝つために、タイトルを獲得するためにどうするのかという戦い方に変わってきたところです。
マクラーレンが最後にタイトルを獲得したのは2008年です。当時デビュー2年目のルイス・ハミルトン選手がドライバーズ・チャンピオンに輝きましたが、それから10年以上もタイトルから遠ざかり優勝争いの経験がほとんどありません。
前半戦の戦いを通してマクラーレンは試行錯誤を繰り返し、いろいろと学習してきたはずなので、後半戦のレッドブル勢との対決は非常に楽しみです。特にノリス選手は前半戦、フェルスタッペン選手と何度も激しい優勝争いを演じましたが、さらにスリリングなバトルを見せてくれることを期待しています。
後半戦はオランダGP(決勝8月25日)とイタリアGP(決勝9月1日)の2連戦でスタートします。フェルスタッペン選手は母国のオランダで3連勝中ですが、今年はマクラーレン、メルセデス、フェラーリの合計6人のドライバーがライバルとして立ちはだかります。母国GP、4連覇を達成するのは簡単ではないと思います。
ただレッドブルのマシンは決して遅いわけではありません。周りのチームが速くなり、シーズン序盤戦のような圧倒的なアドバンテージがなくなったのは確かです。しかもスイートスポットが非常に狭くて、神経質な挙動をするマシンになっていますが、優勝を狙えないというレベルではないと思います。
ただしフェルスタッペン選手がドライブしたときに限る、という状況ですが......。レッドブルはかなり特殊なマシンになっていて、ペレス選手が遅いというのではなく、フェルスタッペン選手だから乗りこなせているように見えます。
過去にも、乗りづらいマシンでも速いとか、マシンをポテンシャル以上に引き出してくるドライバーがいました。古い話ですが、1992年にホンダが撤退したあとに非力なフォード・エンジンを搭載したマクラーレンで何度も勝利したアイルトン・セナ選手(1993年)や、低迷するフェラーリに1996年に移籍して競争力の低いマシンで優勝したミハエル・シューマッハ選手などがそうでした。
なかなかそういうドライバーは出てきませんが、今シーズンのフェルスタッペン選手は過去の偉大なチャンピオンと同じレベルのドライビングをやってのけているんだと思います。とはいえ、ライバルのマクラーレンやメルセデスのドライバーはふたりそろって速いので、このままではレッドブルとフェルスタッペン選手はどんどん厳しい戦いになっていくはず。タイトル争いを盛り上げるためにも、ペレス選手には頑張ってほしい。
後半戦はタイトル争いだけでなく、ビザ・キャッシュアップRB(VCARB)の角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手の活躍も楽しみです。参戦4年目となった角田選手は今シーズンの前半戦で7度の入賞を飾り、22ポイントを獲得。ドライバーズランキング12位という結果を残しています。昨年の角田選手はシーズンを通して6度入賞し17ポイントを獲得しています。つまり今シーズンの前半戦だけで、すでに昨シーズンを上回る結果を残しているのです。
角田選手とは開幕前に対談をさせていただいたとき、本人は「今年のVCARBのマシンは良さそうなので本当に楽しみ」と語っていました。今、角田選手自身は前半戦の結果に満足しているかどうかはわかりませんが、大半のレースでマシンのポテンシャルをフルに引き出し、チームメイトのダニエル・リカルド選手を上回るパフォーマンスを披露してくれました。
角田選手は「上位グループはともかく、中団勢のトップでゴールできれば優勝と同じこと」と話していますが、第3戦のオーストラリア(7位)と第5戦のマイアミGP(7位)では中団勢のトップでゴールしています。百点満点の前半戦だったと思いますし、多くのファンが角田選手の走りにワクワクさせてもらっています。僕もそのひとりで、F1中継をテレビ観戦する際に角田選手のラップタイムを追いかけながら応援していますが、毎戦すごく楽しませてもらっています。
今シーズンも中団グループのバトルは熾烈です。ハースは好調ですし、シーズンが進むにつれてウイリアムズやアルピーヌも速くなってきました。角田選手がコンスタントに入賞するのは簡単ではないとわかっています。でもレッドブルのような優勝争いをするトップチームのシートを獲得するためには、前半戦のようなパフォーマンスを続けることだけでなく、さらにもう一歩、飛び抜けた結果が必要になってくると思います。
シーズン中には何度かトップグループに波乱があって、中団勢の選手が上位入賞するチャンスが来るときがあります。後半戦、角田選手がそういうチャンスをつかみ取ってくれることを期待して、引き続き応援しています!
今季限りでフェラーリを離れるカルロス・サインツ。移籍先として2026年からアウディとして参戦するザウバーや、アルピーヌなどの名前があがっていたが、最終的にウイリアムズと契約したことが発表された。
「近年、優勝争いから遠ざかっているウイリアムズのポテンシャルを考えると、3度の優勝経験があるサインツ選手ほどのドライバーにとってはちょっともったいない気はしますが、フェラーリやマクラーレンとともにF1を代表する名門チームであることは間違いありません。最近は後方集団で戦うことが多いですが、やっと上昇気流に乗りつつあるように見えます。同じイギリスのプライベーター、マクラーレンも一時期は下位に低迷していましたが、今は優勝争いをするまでに這い上がってきました。ウイリアムズのようなプライベーターが元気だとレースは面白くなるので、サインツ選手とともに再びトップグループに戻ってきてほしいですね」
スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/AKM ヘア&メイク/大平真輝)
1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした1987年頃からF1のファンに。主演ミュージカル『Endless SHOCK』の最終公演が、東京・帝国劇場で上演中。「KinKi Kids Concert 2024-2025 DOMOTO」が、2024年12月31日と25年1月1日に京セラドーム大阪、25年1月12日と13日に東京ドームで開催決定
公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】