山本シンヤやまもと・しんや
自動車研究家。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ワールド・カー・アワード選考委員。YouTubeチャンネル『自動車研究家 山本シンヤの「現地現物」』を運営。
トヨタの高級ブランドであるレクサスからLMの3列モデルが登場し、話題を呼んでいる。つうわけで、自動車研究家の山本シンヤ氏が公道試乗をカマし、徹底チェック。その実力などを特盛り解説する!!
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山本 今回試乗したのは、5月9日に追加発売されたレクサスLMの3列6座仕様のバージョンL。昨年10月に登場したLMは、2列4座(4人乗り)仕様のエグゼクティブのみの設定でした。
――LMの6人乗りモデルはファンから熱視線を浴びていますが、お値段はいかほど?
山本 価格は1500万円。4人乗りの2000万円と比べればだいぶお安い(笑)。
――ただ、LMのベースはトヨタ自慢の高級ミニバン、アルファード/ヴェルファイア(以下、アルヴェル)です。
山本 アルファードの最上級グレード(エグゼクティブラウンジ)が850万円ですから、650万円も高い。
――LMにそれだけの価値があるんスか?
山本 口が悪い人はレクサスLMのことを〝レクサス版のアルヴェル〟と言います。多くの人が勘違いしているのですが、クルマの基本となるプラットフォーム(TNGA GA-K)は共通ですが、ボディ構造、パワートレーン、フットワークの考え方など中身は〝ほぼ別物〟です。
レクサスはLBXからLSまでニーズに合わせて多種多様なモデルを用意している。ただし、レクサスである以上は同じ乗り味、走り味が求められます。
その実現のため、現在のレクサスはブランドの〝味磨き〟という活動に力を入れています。各モデルのチーフエンジニアに加え、各領域のリーダーが一堂に会し、開発中のありとあらゆる技術を持ち寄って議論している。
――どんな話をしているの?
山本 例えばレクサスのモデルと欧州車のモデルの剛性を計測すると、レクサスのほうが3倍以上も高い数値を示すそうです。でも、実際に乗り比べると、欧州車のほうが明らかに剛性は高いと感じる。当然、彼らは「何かが違うし、何かが足りない」と考えた。
そこで従来とはまったく異なる方法、指標で計測を行なってみると、明らかに足りない部分が見えてきた。つまり、車体を構成する上での〝黄金レシピ〟を見つけわけです。
――どこが足りなかった?
山本 具体的にはフロントの先端、リアの後端、センタートンネル、バルクヘッド接合部の4ヵ所の剛性に着目したところ、走りがガラッと変わったと。この味つけをレクサスの全モデルに施し、〝味磨き〟活動のメンバーで試乗したら過去最高の統一感と乗り味に仕上がったそうです。
つまり、コンパクトだろうがミニバンだろうがSUVだろうが、「このクルマはレクサスだ!」と即感じられると。
――へぇー。
山本 思想は何も変わっていませんし、従来のレクサスもトヨタとの違いは感じられましたが、その伸びしろが段違い。
僕も実際に手を入れたLSに特別試乗させてもらいましたが、路面の凹凸を優しく包み込む極上の乗り心地で、クルマがひと回り小さく軽くなったかのような一体感のある走りに仕上がっていた。試乗後、レクサスの開発者に、「明日からでも発売したほうがいい!」と迫ったほど(笑)。
――でも、量産車に反映されるのは、まだ先ですよね?
山本 この補剛は車体に大きく手を加える必要がありますが、レクサスは今できることを愚直に反映している。実は今回試乗したLMにもその補剛の一部が施されている。試乗すると、ミニバン特有の腰高感があまりなく、コーナリング時の一連のクルマの動きはほかのレクサス車と変わらない。
ちなみにドライブモードをスポーツにすると、ミニバンらしからぬ一体感の高い走りも可能です。正直、乗り心地の良さと静粛性はフラッグシップのLSを超えるレベル。後席は、「移動空間なのに、自宅で原稿を書くよりもいい環境かも!?」と思ったほど。
――パワートレーンは?
山本 2.4リットルターボ+1モーターのパラレル式に加えて、リアにeアクスル(電動車両の駆動装置)を組み合わせたハイブリッドです。
システム出力は349馬力。約2.5tという超重量級ボディを感じさせない余裕の動力性能と小気味よいフィーリングを実現しています。
唯一の欠点は高効率エンジン特有の雑味を感じるサウンド。音量はかなり抑えられていますが、室内は静粛性が高いので気になる。
――内装は?
山本 全体的なシルエットはアルヴェルを感じさせないと言えば嘘になりますが、いわゆる〝オラオラ系〟とは異なるお上品さを感じます。
インテリアは最新レクサス最良の仕上がり。特等席となる2列目はアームレストやオットマンはもちろん、マッサージ機能まで内蔵。空調やマークレビンソン製の21スピーカーのオーディオ、アンビエント照明はスマホのような着脱タッチ式コントローラーで操作可能。
――極上ファーストクラス!
山本 豪華さや特別感は4人乗り仕様に負けますが、使い勝手は6人乗りの圧勝です。
――もはやLMは、レクサスのフラッグシップであるLSを脅かす存在なのでは?
山本 ある意味そうかもしれませんね。僕は次期LSはその存在価値を含めて、〝ゲームチェンジ〟を行なう必要があると思っています。
自動車研究家。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ワールド・カー・アワード選考委員。YouTubeチャンネル『自動車研究家 山本シンヤの「現地現物」』を運営。