渡辺陽一郎わたなべ・よういちろう
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
日産のスポーツブランド、ニスモが手を入れたノートオーラニスモの評判がすこぶるいい。いったいどんな改良が施されたのだろうか? 試乗したカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が特濃解説する。
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――日産ノートの販売が好調らしいですね?
渡辺 ノートは国内における日産の最多販売車種で、今年1~8月の月平均は約8600台です。常に販売ランキングの上位に入っています。そして、ノートの販売の45%を占めているのが、実は上級車のノートオーラなのです。
――ノート、ノートオーラは全車が日産独自のハイブリッドシステムであるe-POWERを搭載しています。
渡辺 電動車なので値は張りますが、走りも室内もひとクラス上の上質さを誇ります。
――今回試乗したのはノートオーラに設定されたニスモです。今年7月にマイチェンを受けたモデルです。外観は男心を刺激するド派手な感じに仕上がっていますね?
渡辺 ノートオーラニスモは国内販売が低迷するスポーツモデルですが、ノートオーラ全体の18%を占めています。
――人気のワケは?
渡辺 商品力のバランスが絶妙です。専用のエアロパーツを装着し、タイヤはミシュランのパイロットスポーツ4。内装もメーターやシート生地までスポーティに仕上げており、サスペンションにも手が入っています。
――専用パーツ鬼盛り! 当然、値は張る?
渡辺 それが意外に割安で、2WDは機能やデザインを上級化しながら、ベースのノートオーラGからの価格アップは29万2600円の307万2300円です。
――今回の試乗車は?
渡辺 新設定された電動4WDモデルに試乗しました。ニスモ版は電動4WDの動力性能を向上させています。
――実際に運転してみてどうでした?
渡辺 すべてのノートに共通する特徴ではありますが、e-POWERはモーター駆動なので、走りは静かで滑らか。しかも、アクセル操作に対してクルマが機敏に反応する。また、ノートオーラニスモは一般のガソリンエンジンに置き換えると、おおよそ2.5リットルくらいの排気量になるので、動力性能に余裕がある。
――スゴっ! 2WDのノートオーラニスモとの違いは?
渡辺 後輪側に駆動力を高めたモーターを装着しているので、カーブを曲がるときなどは、走行状態に応じて、体感的には前輪よりも後輪の駆動力が高まり、クルマの進行方向を積極的に内側へ向けるので、走りが超楽しい。
――要は高い旋回性によりコーナーを自由自在に駆け抜けられると。ちなみに高速道路での走りはいかがです?
渡辺 高速道路や速度域の高い緩やかな峠道では、モーター駆動ならではの静かで滑らかな走りをリラックスしながら味わえます。
――安定感があると。ノートオーラニスモに欠点はある?
渡辺 WLTCモード燃費ですね。4WDは公表されておらず、2WDは23.3㎞/リットルです。ちなみにベースグレードのノートオーラGの燃費は27.2㎞/リットルです。つまり2WDの場合、ニスモは燃料代が約17%増える計算になる。
――なるほど。
渡辺 また、2WDは前述のとおりノートオーラGと比べたときの価格アップは29万2600円なので割安ですが、試乗した4WDは2WDよりも40万1500円高い。もちろん、運転が楽しいクルマに仕上がっているので価格設定自体は妥当だと思います。
――価格差が約40万円もあると、ジックリ運転して価値を見極める必要がありそうですね。現状の納期は?
渡辺 販売店によると納期は約3ヵ月です。数年後に売却するときの査定額も、注目度の高い車種とあって満足できるでしょう。
――ふむふむ。
渡辺 ノートやノートオーラの購入を検討する際は、ノートオーラニスモも試乗したほうがいいと思います。ノートオーラニスモの走る楽しさは、ベース車の優れた素性によって成り立っているのがよくわかるからです。
――要するにノート、ノートオーラの走りが抜群にいいから、ニスモの改良がキラリと光るわけですね?
渡辺 そのとおりです。
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員