渡辺陽一郎わたなべ・よういちろう
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
今年5月にマイチェンを受けたスズキの軽SUVハスラー。けっこうな話題になっているけど、ぶっちゃけどうなのよ? つーわけで、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が使い勝手なども徹底チェックした!!
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――今回試乗したのはスズキの軽SUVハスラーですが、売れ行きはいかがです?
渡辺 今年上半期の軽新車販売ランキングでは、ホンダのN-BOX、スズキのスペーシアに続いて3位に入り前年同期の1.4倍も売れました。現行モデルの登場は2020年1月ですが販売はすこぶる好調です!
――スゲェー。
渡辺 つけ加えると、14年に発売された初代ハスラーも売れに売れていました。
――人気のワケは?
渡辺 今の軽自動車はスライドドア装着車が多い。逆に言えばスライドドアが不要なユーザーからすると、選択肢は限られてしまう。
――ほお。
渡辺 事実、販売店からも、「ハスラー指名のお客さまは、ワゴンRやムーヴからの乗り替えが多い」と言います。この2車もハスラーと同じくスライドドアを装着しない軽ですが、発売はワゴンRが17年、ムーヴは14年と古い。
――ハスラーの見た目も人気の要因のひとつとか?
渡辺 丸形ヘッドランプを備えたハスラーのフロントマスクは、スズキ自慢のSUVジムニーを彷彿させるデザインに仕上がっています。当然、この外観も魅力のひとつに挙げられます。
――なるほど。
渡辺 さらにハスラーは実用面もスゴい。前後席共に頭上と足元が広く、身長170㎝の大人4人が乗車したとき、後席に座る乗員の膝先には握りコブシ3つ半の余裕がある。収納設備も豊富です。
――ふむふむ。
渡辺 後席の背もたれを前側に倒すと、座面も下がってボックス状の広い荷室になり前後スライドも可能です。これらはすべて左右独立式なので、全高が1700㎜以下の軽ではシートアレンジがワゴンRと並んで最も充実しているんですよ。
――へぇー!
渡辺 しかも、ハスラーの荷室は水洗いが可能です。なので、汚れたアウトドアグッズも気兼ねなく積めます。最低地上高は180㎜を確保しているので、悪路のデコボコや駐車場と車道の大きな段差も余裕で乗り越える。これらがハスラー人気の秘密ですね。
――今回試乗したのは今年5月にマイチェンを受けたモデルです。
渡辺 現行モデルでは22年5月に続く2度目の改良になりますね。
――実際に試乗した印象は?
渡辺 水平基調の外観は視界が良く、ボディの四隅も非常にわかりやすい。最小回転半径も4.6mと小回り性能が抜群で運転しやすい。また、ボディが軽く運転感覚も軽快で、乗り心地もいい。
――ハスラーで気になった点はありますか?
渡辺 ノーマルエンジンですね。実用回転域の駆動力が不足気味で、上り坂だとエンジン音が耳障り。購入するなら、ターボ車も試乗しましょう。
――でも、値が張るのでは?
渡辺 ターボは走りに余裕があり燃費も10%程度しか悪化しません。価格にしても割安で、ノーマルエンジンの約8万円の上乗せとなります。
――ハスラーの売れ行きは?
渡辺 8月も好調でした。6376台をマークして軽の新車販売で4位です。
――納期はいかがです?
渡辺 販売店によると納期は2~3ヵ月です。
――リセールバリューは?
渡辺 数年後に売却する際の価値は、人気の軽自動車ですから平均水準以上です。ただし売却時には、中古車市場に現行ハスラーが豊富に流通しているため、極端な高値にはならないでしょうね。
――ライバル車はどれ?
渡辺 性格が最も近い車種はダイハツのタフトです。後席はスライドしませんが、その代わり装備を充実させており、最も安価な132万円のXにも、ガラスルーフのスカイフィールトップ、LEDヘッドランプ、電動パーキングブレーキなどを標準装着しました。購入時はハスラー、タフトを乗り比べるべし!
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員