テレビのニュース、SNS、動画サイトで大きな話題を呼んでいるのが、ながらスマホのチャリや電動キックボードがノーブレーキでクルマに突っ込む映像だ。いったい何がどうなっているのか? 専門家などに話を聞いてきた。
* * *
■衛策の切り札は"ドラレコ"
11月1日から改正道交法の施行によりチャリに関する法律が変わった。簡単に言うと、運転中の"ながらスマホ"や酒気帯び運転などが罰則の対象となり違反者は懲役刑や罰金刑が科せられる。今回の改正道交法の施行により違反者の数は減ったのか。
「減らない減らない。さっきもスマホをイジりながら信号を守らず、交差点に突っ込んできた自転車がいてね。電動キックボードとかモペットなんかもそうだけど、私らがいくら集中して運転してたって、四方八方から急に飛び出してくるからね。もうミサイルだよ、ミサイル!」(都内のタクシー運転手)
実際、信号無視や車道を逆走する"二輪ミサイル"にヒヤリとした経験を持つドライバーは多く、誰もが怒り心頭! どうにかならないのか。
「違反者の一掃は一朝一夕の話ではありません」
こう話すのは自動車評論家の国沢光宏氏だ。確かにテレビのニュースなどでも連日のようにクルマの前を蛇行運転やら逆あおり運転する電動キックボードやモペットの映像が取り上げられている。
「違反者を限りなくゼロにするには、まず警察が取り締まりを継続して続けられるかどうか。そして新ルールの周知をどこまで徹底できるか」
現状、ドライバーに二輪ミサイルを防ぐ手立てはない。だが、自衛策はあるという。
「ご存じの方も多いと思いますが、先日、10歳の児童が運転する自転車が赤信号で交差点に進入し、クルマとぶつかった事故の裁判がありました。結果は、自転車側の過失が100%になり、児童側に13万円の賠償金を命じる判決が出ました(児童側は上告中)。今回の判決はドラレコの映像が決め手になったようです」
つまり、自分の潔白を示す上で、ドラレコに残る証拠映像は最大の切り札になりうる。
「私はドラレコの装着を推奨します。できればクルマの前後にドラレコを装着したいところですが、予算が厳しいようなら、まず前だけでも装着したほうがいい。購入するなら限りなく1万円に近いドラレコを選んでほしい」
一方で、秋から冬にかけての薄暮時は、年間で最も多く交通死亡事故が発生するので、注意が必要だという。
「"魔の時間帯"は、秋から冬にかけて日没が早くなる時間帯のこと。特に注意が必要なのは17~18時の間で、この時間はクルマの事故が多く発生するといわれています」
事故を回避するためにはどうすればいいのか。
「視界の確保が重要になります。実は窓ガラスが汚れたクルマが非常に多い。窓ガラスが汚れていると視界が奪われ、判断が遅れてしまう。逆に視界が確保されていると、危険をいち早く察知できるメリットがあります。小まめにクルマの窓ガラスは掃除しましょう。ちょうど忘年会シーズン真っ盛りですから、酔った二輪ミサイルが街に増加するはず。事故やトラブルのリスクを下げるためにも、できることをやりましょう」
■チャリの死亡事故は9割超がノーヘル
警察庁の統計によると、昨年のチャリの事故死は前年比7人増となる346人だった。事故死の9割超がヘルメットを着けていなかったという。ちなみに前年を上回ったのは2015年以来となる。
モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が言う。
「自転車、電動キックボード、モペットなどは手軽な乗り物という油断を生みがちですが、むき出しで乗る二輪車の場合、転倒の際に路面や縁石での強打、自動車などとの衝突で車輪に巻き込まれたり、車体にカラダを強打することも。最悪、頭蓋骨骨折、脳挫傷などで死に至るケースも」
実はバイクや自転車の転倒時の損傷部位は「頭部」が圧倒的多数を占めているという。
「昔はバイクもノーヘルOKでした。実際、原チャリは最後までノーヘルが認められていた。しかし、令和の今、この手の話をすると、『そんな無謀な!』とか『昭和すぎる!』と誰もが思うはずです。同じことなのです。僕は自転車も電動キックボードもヘルメットの着用を義務づけていいと思っています」
ノーヘルの二輪ミサイルが自爆するのは自業自得だが、勝手にクルマにぶつかってきて死亡する可能性も......。ヘルメットの義務化も納得だ。
二輪ミサイルの最大の問題点は違法な闇系モペットの存在。実はインターネットで海外製のモペットが安価で簡単に手に入るのだ。しかし、この手の闇系モデルは日本の保安基準を満たしていない違法車が多い。専門家によれば、闇系モデルの購入者はナンバーもつけず、バックミラーやウインカーもないまま、ノーヘルで公道を爆走しているという。言うまでもないが、任意保険や自賠責保険にも入っていない可能性が高い。つまり、愛車が闇系モペットにぶつけられたら泣き寝入りもありうる。加えてナンバーもないため事故現場からトンズラされたらおしまいなのだ。青木氏はこう語る。
「そもそも自転車、電動キックボード、モペットは事故で人をケガさせてしまう恐れがあります。国は自転車も登録制(ナンバー付き)にし、保険(自賠責保険加入など)の義務化などを検討していく必要があるのでは」
即効性のある二輪ミサイルの撲滅法はないものか。前出の国沢氏はこう言う。
「警察が本腰を入れて取り締まりを続けられるかどうか」
二輪ミサイルは法を破り、他人の命を奪いかねない危険運転をしている自覚を持て!