第1位【水素と電気の二刀流】ホンダ「CR-V e:FCEV」ホンダの歴史あるSUV。ちなみに初代は1995年登場。今回、充電できる水素燃料電池車に変身して2年ぶりに国内市場に復活 第1位【水素と電気の二刀流】ホンダ「CR-V e:FCEV」ホンダの歴史あるSUV。ちなみに初代は1995年登場。今回、充電できる水素燃料電池車に変身して2年ぶりに国内市場に復活

今年取材した話題のモデルの中から、珠玉にも程がある「やりすぎカー」を選び、勝手に表彰! 選考委員長は日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員で、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏。それでは、2024年を代表するクルマを一挙大紹介!

■脱炭素カーが上位を独占!

渡辺 2024年の1位はホンダ6代目CR-V e:FCEVに決定しました!

――7月19日に発売(リース専売)したSUVですね。ズバリ、受賞の理由は?

渡辺 CR-V e:FCEVはホンダの最新技術をギガ盛り投入し、水素燃料電池車にPHEV(プラグインハイブリッド)的な充電機能を組み合わせました。簡単に言うと、水素と電気の二刀流を実現したわけです。

――そもそもの話ですが、なぜホンダは水素と電気の二刀流カーを爆誕させた?

渡辺 現在、水素を充填する水素ステーションは全国に約160ヵ所ありますが、ガソリンスタンドの約2万7400ヵ所と比べると圧倒的に少ない。しかも営業時間が短いなど、使い勝手が悪い。

そこで威力を発揮するのが充電機能。フル充電ならWLTCモードで約61㎞を走れるので、仮に水素を使い果たしても、充電を繰り返しながら水素ステーションまでたどり着ける。ちなみに水素の航続距離は約621㎞(WLTCモード)。

――電気と水素を合計すると700㎞近く走れるんですね。ちなみにCR-V e:FCEVのお値段は?

渡辺 ホンダの国内の新車の頂点となる809万4900円です。現状ではCR-V e:FCEVはホンダの脱炭素カーのフラッグシップSUVですから値は張ります。

――でも、国内市場の年間販売の目標台数は70台です。

渡辺 水素ステーションのインフラが整っていませんからね。まぁ、ホンダの脱炭素カーのアイコン的なクルマです。

――いずれにせよ、最新技術マシマシのCR-V e:FCEVはやりすぎだと! お次はどんなクルマ?

渡辺 2位はスズキ・ワゴンRのCBG(圧縮バイオメタンガス)車。牛の糞尿から製造したカーボンニュートラル燃料を使って走ります。

第2位【牛の糞尿で走るクルマ】スズキ「ワゴンR CBG車」今年10月に開催されたジャパンモビリティショービズウィーク2024に出展されて話題を呼んだスズキの意欲作。写真はインド仕様 第2位【牛の糞尿で走るクルマ】スズキ「ワゴンR CBG車」今年10月に開催されたジャパンモビリティショービズウィーク2024に出展されて話題を呼んだスズキの意欲作。写真はインド仕様

――牛の糞尿!

渡辺 スズキがクルマをたくさん販売しているインドは、3億頭超といわれる世界トップ級の牛大国。実は牛の糞尿にはメタンガスが含まれているのですが、その地球温暖化の促進効果は二酸化炭素の28倍という話も。

そこで、牛の糞尿からバイオメタンガスを発生させ、精製してクルマの燃料に使うことで、メタンガスの大量放出を防ごうと。

――とはいえ、内燃機関のエンジンを搭載して燃焼させれば、結局は二酸化炭素が発生するのでは?

渡辺 牛のエサになる牧草は、二酸化炭素を吸収する光合成で育つ。そんな牛の糞尿からバイオメタンガスを造るので相殺となり、二酸化炭素を排出したことにはなりません。無用の長物だった牛の糞尿を有効活用し、さらにガスの放出も抑制。脱炭素カーの本質をとらえた秀作です。

――3位のマツダは藻で走るクルマ!?

渡辺 CX-80 バイオフューエルです。藻を培養して分離回収し、バイオ燃料を精製します。藻は植物ではありませんが、育つ段階で二酸化炭素を吸収します。従って藻から精製した燃料を使えば、燃焼させても二酸化炭素を排出したことになりません。

第3位【藻で走るクルマ】マツダ「CX-80バイオフューエル」こちらもジャパンモビリティショービズウィーク2024に出展されたマツダの試作車。バイオ燃料は軽油と混ぜての使用も可能とか 第3位【藻で走るクルマ】マツダ「CX-80バイオフューエル」こちらもジャパンモビリティショービズウィーク2024に出展されたマツダの試作車。バイオ燃料は軽油と混ぜての使用も可能とか

――実用化のメドは?

渡辺 マツダの開発者によると、2tの藻から精製される燃料は約200㏄です。当然、大量の藻が必要になります。ただし、これから開発が進めば効率も向上するはずです。つけ加えると、藻から精製したバイオ燃料を軽油に混ぜて燃焼させることも可能です。

――つまり、このバイオ燃料は柔軟性があるんですね。

渡辺 マツダの開発者は、日本国内で燃料を生み出せる地産地消の価値も強調していました。日本の燃料は輸入に頼っていますが、藻は太陽光と二酸化炭素があれば育ちます。二酸化炭素を吸収する藻を使った燃料精製は価値が高い。マツダのやりすぎバイオ燃料の今後に注目ですよ!

■噂の"顔面カー"もランクイン!

――4位はポルシェ911 GT3 RSです。

渡辺 理屈抜きに、鬼のリアウイングがやりすぎ!

第4位【ソソり立つリアウイング】ポルシェ「911 GT3 RS」ポルシェが自らの手で魔改造し、エキサイティングにも程がある見た目に。まさに911の最終形態。ちなみに公道を走れる市販車だ 第4位【ソソり立つリアウイング】ポルシェ「911 GT3 RS」ポルシェが自らの手で魔改造し、エキサイティングにも程がある見た目に。まさに911の最終形態。ちなみに公道を走れる市販車だ

――祭りのやぐらに匹敵するインパクトです。

渡辺 もちろん、リアウイングだけでなく、走りもやりすぎです。水平対向6気筒4Lツインターボガソリンエンジンにモーターも組み合わせ、最高出力は541馬力、最大トルクは610Nm、最高速度は時速312キロ! 停車状態から3.2秒で時速100キロに到達します。

――ヤバっ!

渡辺 ちなみに1963年に登場した最初のポルシェ911は、5ナンバーサイズのボディに水平対向6気筒2Lエンジンを搭載し、最高出力は130馬力でした。

――5位は、今年上半期のやりすぎカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたEVコンセプトカーです。

渡辺 ド派手なガルウイングドアは誰がどう見てもやりすぎ。ちなみにホンダゼロシリーズのフラッグシップとなるサルーンは、2026年に米国を皮切りに市販化予定です。どんな走りのクルマに仕上げてくるか楽しみです。

第5位【新感覚ガルウイングEV】ホンダ「ホンダゼロシリーズサルーン」今年1月に米ラスベガスで開催されたCES2024に出展。3月には東京・青山にあるホンダ本社でメディアに披露。個性大爆発系EV 第5位【新感覚ガルウイングEV】ホンダ「ホンダゼロシリーズサルーン」今年1月に米ラスベガスで開催されたCES2024に出展。3月には東京・青山にあるホンダ本社でメディアに披露。個性大爆発系EV

――続いて6位は?

渡辺 いい意味で一線を越えた、野獣フェースのピックアップトラック・三菱トライトンです。この顔面の破壊力は文句ナシのやりすぎ!

第6位【限界突破の野獣フェース】三菱「トライトン」12年ぶりにニッポン市場に復帰した三菱のトライトン。今回登場した新型は6代目。累計販売台数は560万台超。三菱の世界戦略車だ 第6位【限界突破の野獣フェース】三菱「トライトン」12年ぶりにニッポン市場に復帰した三菱のトライトン。今回登場した新型は6代目。累計販売台数は560万台超。三菱の世界戦略車だ

――7位はフィアットです。

渡辺 新型EVの600e(セイチェントイー)を選びました。トライトンとは対照的なあざとかわいい顔立ちがやりすぎ。実は正面から見ると、こちらを軽くにらんでいるような雰囲気も。実に小悪魔的なクルマです。

もともとこの顔立ちは1957年に誕生したクラシックなフィアット500(チンクエチェント)がルーツ。60年以上の歳月を経て、独特のデザインに進化したクルマともいえます。

第7位【EV界のあざとかわいい】フィアット「600e」9月10日に日本で発売されたフィアット600e(セイチェントイー)。日本市場にフィアットの新型車が登場するのは1年半ぶり 第7位【EV界のあざとかわいい】フィアット「600e」9月10日に日本で発売されたフィアット600e(セイチェントイー)。日本市場にフィアットの新型車が登場するのは1年半ぶり

■ホンダとスズキのシン・軽がスゴい!

――8位はホンダの軽です。

渡辺 今年9月、日本市場に"絶対王者"として君臨するホンダの軽スーパーハイトワゴン・N-BOXに追加されたN-BOXジョイを選びました。

第8位【全車チェック柄シートの癒やし系ゆるふわSUV】ホンダ「N-BOXジョイ」沸騰する軽スーパーハイトワゴンSUV市場にホンダが投入したN-BOXジョイ。公園などでまったりアウトドアを楽しむクルマだ 第8位【全車チェック柄シートの癒やし系ゆるふわSUV】ホンダ「N-BOXジョイ」沸騰する軽スーパーハイトワゴンSUV市場にホンダが投入したN-BOXジョイ。公園などでまったりアウトドアを楽しむクルマだ

――ゴッリゴリのSUVモデルではなく、癒やし系ゆるふわSUVです。

渡辺 しかも、シートの生地や荷室の素材は全車チェック柄! 後席を倒すと荷室というよりチェック柄のカーペットを敷いた小部屋にいる気分が味わえます。

――9位も軽です。

渡辺 スズキのスーパーキャリイの特別仕様車Xリミテッドです。実はこのXリミテッド、若い女性スタッフふたりがデザインしました。まず彼女たちはキャリイの使われ方を調べたそうです。

第9位【シン・軽トラ】スズキ「スーパーキャリイ Xリミテッド」昨年追加された特別仕様車。今年4月に早くも改良を受けた。仕事だけでなく、遊びや趣味にガシガシ使える軽トラに仕上がっている 第9位【シン・軽トラ】スズキ「スーパーキャリイ Xリミテッド」昨年追加された特別仕様車。今年4月に早くも改良を受けた。仕事だけでなく、遊びや趣味にガシガシ使える軽トラに仕上がっている

――そこで何を得た?

渡辺 軽トラは働くクルマの顔だけでなく、日常の足としても重宝されていることがわかったそうです。そこで、フロントマスクやドアパネルを部分的にブラックに仕上げ、ホイールもブラック塗装するなど、見た目を磨き込んだ。

――その結果、Xリミテッドは、外観のカッコ良さが人気を呼んだわけですね。

渡辺 つけ加えると、Xリミテッドは、アウトドアの相棒として指名買いされることも多いとか。

――10位のやりすぎカーは4位に続き、再びポルシェ!

渡辺 タイカンに決定です。

第10位【大谷翔平で話題をかっさらった】ポルシェ「タイカン」EVモデルだが、ポルシェの哲学がシッカリぶち込まれている。走れば当然だが、シートに座っただけでポルシェ感を味わえる 第10位【大谷翔平で話題をかっさらった】ポルシェ「タイカン」EVモデルだが、ポルシェの哲学がシッカリぶち込まれている。走れば当然だが、シートに座っただけでポルシェ感を味わえる

――ドジャースの大谷翔平が、背番号「17」を譲ってくれた同僚の妻にプレゼントし、世界的な注目カーになりました。ズバリ、タイカンはどこがやりすぎ?

渡辺 ポルシェ初のEVで、ボディは4ドアです。エコカーのEVですが、そのパワーはすさまじい。現行型GTSの最高出力は700馬力で、時速100キロ到達タイムは3.3秒。最速仕様は1034馬力で時速100キロ到達は2.3秒。もはやなんのためのEVなのかと思う鬼スペックで......完全なやりすぎカー!