ニッポンの"働くクルマ"のひとつが、軽商用バンである。一方で近年、脚光を浴びているのが個人向けの軽商用モデル。つーわけで、話題を集める2台をピックアップ! 強みはどこ? 弱点はあるの? 徹底取材してきた!!
* * *
■4ナンバー軽は、荷室は広いが後席は狭い
マジでセカンドカーが欲しい! そんな男たちの間で注目を浴び続けているのが、4ナンバーの軽商用車である。では、一般的な軽と何がどう違うのか。まず車検が挙げられる。軽乗用車は購入して最初に受ける車検は3年後だが、4ナンバーの軽商用車は2年後となる。
なぜか。大前提として商用車は〝働くクルマ〟。当然、年間の走行距離も長く、クルマの疲労もハンパないので、早めのメンテナンスを受ける必要がある。というわけで、2年車検なのだ。
お次の違いは荷室の広さ。軽商用車は後席の面積より荷室を広く確保する必要がある。なので、軽乗用車に比べて軽商用車の後部座席は狭い。だが、後席を床下に収納すれば、軽乗用車では考えられない巨大な空間がドーン! 車中泊にアウトドア、リモートワークもこなせてしまう。
しかも、軽乗用車の軽自動車税は年額1万800円だが、4ナンバーの軽商用車は、半額以下の5000円! この維持費の安さが、男たちがセカンドカー候補として注目する理由のひとつ。さらに商用車なのでガンガン使い倒せるのも大きな魅力のようだ。
そんな4ナンバー軽の中で話題なのが10月10日に発売されたホンダの軽商用EV、N-VAN e:。どんなクルマかというと、日本市場の軽新車販売ランキングで9年連続トップに君臨する〝絶対王者〟N-BOXをベースに開発された軽商用N-VANのEVバージョンである。
開発責任者を務めたホンダの坂元隆樹氏はこう語る。
「積載時や登坂でも安心できるスムーズな加速や、商用車と思えないような静粛性。使いやすく快適な乗り心地を実現しています。ベースとなるN-VANの空間価値をそのままに、EV化を進めてまいりました。航続距離はWLTCモードで245㎞と、競合他社に対して競争力のある性能を実現しています」
試乗すると、EVなので当たり前だがチョー静か! 早朝や深夜にエンジン音を気にせず住宅街を走れるクルマである。走りは低速から力強く滑らか。静粛性も高く、乗り心地はソフト。さらに運転席以外を床に格納すれば、車中泊もこなせ、バイクやチャリだって載せられる。
ただし、N-VAN e:はEVなので、高速道路を利用するような長距離ドライブ時には必ず「充電時間」と「充電回数」がつきまとう......。
■スペーシアベースは商用とは思えぬ乗り心地
一方、4ナンバー軽ですでに高い人気を誇るのが、2022年8月に登場したスズキのスペーシアベース。現行スペーシアは23年11月にフルチェンを受けて3代目へ移行したが、このスペーシアベースは2代目スペーシアの骨格をベースに開発されたモデルである。
軽乗用のスーパーハイトワゴンであるスペーシアを4ナンバー化しているので、乗り心地は軽商用と思えぬレベチのしっとりさを実現し、静粛性も高い。おまけにコックピットには2代目と同等の快適装備が満載である。
特に最高なのがスペーシア ベースの荷室。後席を畳むなどのアレンジ次第で、広々としたデスクスペースが爆誕! 実際に座ってみると、簡単な机仕事なら余裕でこなせる。つまり、軽乗用車の快適性を備えながら、軽商用車の積載性や広い荷室を手にしたクルマなのだ。
スズキ関係者もうなずく。
「スペーシアベースは、〝一般向けの商用車〟です」
では、どんなユーザーが購入しているのだろうか。
「スペーシアベースは趣味のお供としてご購入いただく方が多いです。具体的にはソロキャンプ、アウトドア、プチ車中泊などの趣味をお持ちの中年男性ですね」(関東のスズキ販売店)
ちなみにスペーシアベースはデビューから2年しか経過していないため、しばらくフルチェンはないようだが、前述のとおりベースが2代目なので、3代目スペーシアを見てしまうと、アチコチに〝ひと世代前感〟が......。
購入の際はどちらのクルマもシッカリ試乗すべし!