「2025年のF1は昨年以上の混戦になりそう。前回も言いましたが、早くF1が始まってほしい」と話す堂本光一 「2025年のF1は昨年以上の混戦になりそう。前回も言いましたが、早くF1が始まってほしい」と話す堂本光一

連載【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】RACE21

史上最多の24戦が開催された2024年シーズンは、実に4チーム、7人のウイナーが誕生し、近年稀に見る大接戦となった。来たる2025年シーズンも、マシンのレギュレーションに大きな変化はなく、チャンピオン争いはさらなる激戦が予想されている。

加えて、5人の新人ドライバーの参戦や、7度の世界チャンピオンに輝くルイス・ハミルトンが長年在籍したメルセデスからフェラーリに移籍するなど、見どころも多い。「来年の開幕戦が待ちきれない」と語る堂本光一に、2025年シーズンを展望してもらった!

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■王者レッドブル失速の原因

2024年シーズンの終盤は各チームのマシンの性能差が縮まったことで接戦が続きましたが、2025年はマシンのレギュレーション変更がほとんどありません。メルセデスやフェラーリ、レッドブルなどのワークス系のトップチームは新レギュレーションが導入される2026年に向けたマシン開発に力を注いでいくはずなので、さらに混戦に拍車がかかると思っています。

2025年シーズンは本当に目が離せなくなるんじゃないかと、今からワクワクしています。でも、これだけ上位から下位まで接戦になっているのですから、わざわざレギュレーションを変えなくてもいいのに......と思ってしまいますよね。

まったく新しいマシンとパワーユニット(PU)が投入される2026年になると、すべてがリセットされ、またどこかのチームが飛び出してしまうかもしれません。そこがちょっと残念な気がしますね。

2024年シーズンに話を戻すと、接戦となった一番の要因は前年に圧倒的な強さを発揮したレッドブルの競争力が落ちたことだと感じています。23年シーズンは22戦中21勝と異次元の速さを見せつけたレッドブル。今年も、シーズン前半戦は強さを発揮しましたが、そこから伸びなかった。

逆にほかのチームがマシンのアップデートを重ねていくうちにどんどん速さを増し、後続集団に完全に飲み込まれてしまった印象です。

レッドブルが競争力を落とした要因は、彼らが今シーズンからトライしてきた"ゼロポッド"にあるような気がしてなりません。マシンの両脇にあるサイドポッドを極端に小さくした"ゼロポッド"を採用したレッドブルですが、ドライバーたちはすごく神経質な挙動に悩まされていました。

■レッドブルは新車のコンセプトを見直すのか

"ゼロポッド"という革新的なコンセプトを取り入れたマシンを初めて持ち込んだのは、2022年シーズンのメルセデスでした。しかし彼らもマシンの不安定な挙動に苦しみ低迷しました。結局、23年のシーズン半ばに、メルセデスは"ゼロポッド"のマシン開発を断念します。以降、メルセデスは23年型のレッドブルを模倣した、オーソドックスなデザインのマシンを投入し、そこから徐々に競争力を取り戻してきています。

僕は専門家ではないので見た目だけでしか言えませんが、2024年シーズンは斬新なデザインのマシンよりも、23年型のレッドブルのコンセプトをコピーして正常進化させたマシンが強かった。コンストラクターズ・タイトルを最後まで争ったマクラーレンやフェラーリがまさにそうです。

特にフェラーリは、シーズン序盤は大きくえぐられた形の独自のサイドポッドを採用し、カッコいいなと思っていましたが、結局はほかのチームと同じようなデザインになっていきました。フェラーリらしい独自性はなくなりましたが、その分、安定感が増して速くなっていったのです。

現行のレギュレーションの下では、22戦21勝を達成した2023年型のレッドブルのマシンが"正解"だったのか......。でも、レッドブルはさらなる進化を目指して"ゼロポッド"のマシンを導入し、裏目に出てしまったのかもしれません。

2024年開幕当初は、レッドブルが他チームのさらに一歩先に行ってしまい、誰も手がつけられなくなるかも......と僕も思っていましたが、逆の結果に終わりました。もちろんレッドブルが苦しんだのはマシン開発がうまくいかなかったことだけが原因ではないと思います。そんな彼らが25年シーズンに向けてどんなコンセプトのマシンを投入してくるのか? 現行のマシンを正常進化させてくるのか、それともガラっとコンセプトを一新させてくるのか? そこは25年シーズンの楽しみのひとつです。

■真っ赤なスーツに身を包んだハミルトンに期待

今シーズン、フェラーリとハースからスポット参戦したオリバー・ベアマン選手(19歳)、ウイリアムズからデビューしたフランコ・コラピント選手(22歳)はいきなり出場したレースで、ともに素晴らしい速さを見せつけました。

2025年シーズンは5人の新人ドライバーのデビューが決まっています。メルセデスの秘蔵っ子と言われる18歳のキミ・アントネッリを始め、25年シーズンにフル参戦する若い力がどれだけ活躍するのかは大きな見どころですが、僕はベテラン勢にも頑張ってほしいと思っています。特にメルセデスからフェラーリに移籍するルイス・ハミルトン選手は注目です。

2024年シーズンのフェラーリは惜しくもコンストラクターズ選手権でタイトルに手が届きませんでしたが、7度の世界チャンピオンに輝いたハミルトン選手の豊富な経験は大きな武器になると思います

角田裕毅(左)と談笑するハミルトン。12シーズンにわたって所属したメルセデスを離れ、フェラーリに移籍する。「赤いレーシングスーツを着て、フェラーリのマシンに乗るハミルトン選手の姿を早く見たい」とフェラーリ・ファンの光一は期待を寄せる 角田裕毅(左)と談笑するハミルトン。12シーズンにわたって所属したメルセデスを離れ、フェラーリに移籍する。「赤いレーシングスーツを着て、フェラーリのマシンに乗るハミルトン選手の姿を早く見たい」とフェラーリ・ファンの光一は期待を寄せる

コンビを組むシャルル・ルクレール選手にとっても、39歳になった現在でも衰え知らずで、貪欲に勝利を目指すハミルトン選手の存在はいい刺激になるはず。25年シーズンのフェラーリはいろんな意味でバランスの取れたドライバーズラインナップだと思うので、ぜひタイトル獲得を目指してほしい。

でも2025年シーズン、ハミルトン選手とルクレール選手のふたりが優勝争いをするようになったら、フェラーリはどっちをナンバーワン・ドライバーにするんでしょうか? それも気になるポイントですが、ハミルトン選手にとってはある意味、正念場のシーズンになると思います。

もしルクレール選手に一方的に差をつけられたら、「もう年だし、ハミルトンもやっぱり衰えてしまったな」という烙印を押されてしまいます。2024年シーズンに2勝し、評価の高かったカルロス・サインツ選手を放出してまで、フェラーリはハミルトン選手を獲得したのですから、しっかりと力を示してほしいですね。

フェラーリを離れたサインツ選手が移籍する古豪ウイリアムズにも期待しています。2024年シーズン、マクラーレンが26年振りにコンストラクターズ・チャンピオンに輝きましたが、同じメルセデスのカスタマーのウイリアムズだってタイトル獲得のチャンスがないわけではありません。

2024年シーズンのウイリアムズはいいレースを何度か見せてくれたので、優勝経験のあるサインツ選手の加入でチーム力がさらに向上すれば、面白い存在になるはずですし、中団グループはもっと接戦になっていきます。

最初にも話したように、2025年シーズンはこれまで以上に混戦状態になると予想しています。ここ数年はフェルスタッペン選手の一強時代が続き、その前はハミルトン選手やセバスチャン・ベッテル選手がライバルを圧倒するという時代がありました。

2025年シーズンはマクラーレンのランド・ノリス選手がタイトル争いの中心になると思いますが、かつてのフェルスタッペン選手やハミルトン選手のような飛びぬけた存在はいません。誰が勝つのか、まったく予測不能なシーズンになりそうなので、もう楽しみしかありません。前回も言いましたが、早くF1が始まってほしいと思っています。

■舞台に立ち続けた2024年

最後に自分自身の2024年を振り返ってみると、ずっと舞台に立っていましたね。1月4日からの博多座(福岡)でのミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』で始まり、1月下旬から2月の初旬にかけては大阪フェスティバルホールで公演を行ない、その後は『Endless SHOCK』です。4月に帝国劇場(東京)でスタートして、7月から8月にかけて梅田芸術劇場(大阪)、9月に博多座(福岡)を周り、11月にもう一度、帝劇に戻り、最後の公演を行ないました。

『チャーリーとチョコレート工場』と『SHOCK』を合わせて、今年の公演数は全部で170を超えていました。あらためて数字を見ると、よく頑張りましたね。

『SHOCK』はフィジカル的にキツい舞台なので、梅田芸術劇場での公演のときは正直ちょっと辛かった。そこを抜けて、博多座、最後の帝劇となると、いろんな痛みや疲れを抱えていながらも、それらと友達になりながら舞台に立っていました。

2024年は『SHOCK』のラストイヤーだったので、そこにすべてを捧げて、最後までやり切りました。大千秋楽でも話しましたが、思い残すことは何もありません。『SHOCK』シリーズがスタートしたのは2000年で、ちょうど角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手が生まれ年です。ミレニアムベイビーの角田選手が生まれた頃から舞台をやっていると考えたら、俺、スゴイですね(笑)。

スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/AKM ヘア&メイク/大平真輝)

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堂本光一

堂本光一Koichi Domoto

1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした1987年頃からF1のファンに。「KinKi Kids Concert 2024-2025 DOMOTO」が、2024年12月31日と25年1月1日に京セラドーム大阪、25年1月12日と13日に東京ドームで開催決定。
公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】

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