昨年11月19日に日本発売となったフォルクスワーゲンの新型ティグアン。19年からフォルクスワーゲンの中で最も売れているドル箱カーだ
世界で売れに売れているフォルクスワーゲンのSUVが、ティグアン。つーわけで、最新モデルを徹底チェック! 今回公道に引っ張り出したのはディーゼルの四輪駆動車。ロングセラーの秘密や実力にじっくりと迫ってみた!!
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■EVシフト失敗で大リストラ
ドイツ自動車最大手のフォルクスワーゲンは、トヨタと新車販売台数で世界トップの座を競ってきた名門中の名門。ところが、苦境に陥っていることが昨年明らかになった。
1937年の創業以来初となる国内工場の閉鎖と、従業員3万5000人以上の削減を検討。実際、今年2月28日には傘下の高級車ブランド、アウディのEVを生産していたベルギー・ブリュッセルの工場を閉鎖。これにより従業員約3000人が失職するとか......。
これまでドイツ経済を支えてきた巨大企業に影を落としたのは、2015年に発覚した排ガス不正。これを境にフォルクスワーゲンはEVシフトにかじを切り、経営資源を注いでいった。
当初は世界最大市場の中国で売り上げを伸ばしていたが、一昨年から潮目が徐々に変わる。BYDを筆頭とする中国勢と米テスラが攻勢を強めたからだ。
この熾烈な販売バトルにフォルクスワーゲンは大苦戦。そして、〝痛恨の一撃〟となったのが世界的なEV販売の急ブレーキ。つまり今、ドイツの名門メーカーは正念場を迎えているのだ。
そんなフォルクスワーゲンの再起を担い、反転攻勢の嚆矢の役目を期待されるのが、今回試乗したティグアン。車名は虎(Tiger)とイグアナ(Iguana)をフュージョンさせた造語だという。
「ティグアンという車名は虎とイグアナの力強さを表現しています。初代のデビューは08年。今回の新型は3代目となります。本国では23年11月にフルモデルチェンジを受けており、1年遅れになりましたが、昨年11月に日本市場に上陸しました。お客さまの反応は上々です」(販売店関係者)
ちなみにティグアンは、全世界で累計760万台以上を販売してきたフォルクスワーゲンの超ドル箱。世界的な激戦区であるミドルクラスSUVに籍を置く、文字どおりの世界戦略車だ。
フォルクスワーゲン ティグアンTDI 4モーション Rライン 価格:653万2000円 フォルクスワーゲン自慢のベストセラーモデル。今回のフルモデルチェンジで顔面もブラッシュアップされている
ティグアンのボディサイズは全長4540㎜×全幅1860㎜×全高1655㎜。車重1750㎏
取材車両を眺める。専門家は、先代よりも力強さが増したSUVらしいデザインに仕上がっていると語っていた。確かに質実剛健という感じだ。後席に座ってみる。頭上、足元共に大人が座っても快適。シートの硬さも絶妙。
「試乗車のエンジンは2リットルの4気筒ディーゼルターボで、四輪駆動車になります。骨格は従来の進化版を採用しています」(フォルクスワーゲンジャパン関係者)
WLTCモード燃費で15.1㎞/リットル。燃料はガソリンと比べると2割程度安い軽油
コックピットに滑り込む。試乗車は24万2000円のレザーシートパッケージのオプションが装着されていたが、その分を差し引いても、レベチの上質感。完全にひとクラス上という感じだ。
特に目を引いたのがインパネ中央部にドーンと鎮座する15インチタッチスクリーン。デカっ! 問答無用のデカさだが、それゆえに表示される内容も把握しやすく、何よりも扱いやすい。ちなみにこのデカタッチスクリーンからドライビングモードの切り替えができる。
ボタンに触れ、エンジンを始動させる。メーターは10.25インチのデジタルタイプ。運転席と助手席の間にある収納スペースなどの機能が集約された内装部分に目をやると、シフトレバーがないじゃないか! 慌てる週プレ自動車班にフォルクスワーゲンジャパン関係者が笑顔で言う。
「シフトレバーは右側のステアリングコラムにあります」
あった! この位置は新鮮に感じたが......冷静に考えてみたら最新のEVはけっこうステアリングコラムにシフトレバーがついていたりする。逆に言えば、EVの開発で得た知見を活用しているわけだ。
今回のフルモデルチェンジで室内も刷新。専門家らに聞くと、「先代モデルよりも上質になっている」と口をそろえていた
荷室の容量は652リットル。後席を倒すと荷室容量は1650リットルに。日常使いに不満ナシ
いざ発進して驚いた。一瞬、ガソリンエンジンかディーゼルエンジンかわからなかった。ディーゼル特有のトラック的な重たい感じが一切なかったからだ。実にスムーズかつしなやかに前へ出る。ただ、気になる点も。他社製の最新モデルと違い、ディーゼルならではの「カラカラ」という音が若干耳に届くことだ。
乗り心地は背の高いSUVとは思えぬしっとりさを実現している。挙動も非常に落ち着いた印象だ。ぶっちゃけ、遠くへ遊びに行きたくなるクルマであった。このドル箱SUVでフォルクスワーゲンの大逆襲なるか!?