現在、ひとつのターニングポイントに立っているといえるドンキ。今後どうなっていく? 現在、ひとつのターニングポイントに立っているといえるドンキ。今後どうなっていく?

創業以来24年間、独自すぎる企業戦略で成長を続けてきた“業界の異端児”ドン・キホーテ。売り上げが拡大し、客層が広がっていくことは、すなわち「普通になっていく」ことでもある。異端児ならではのジレンマと、ドン・キホーテはどう向き合っていくのか。

■時代の流れとともにドンキも変わっていく

1989年、東京・府中に第1号店を出店した当時の年間売上高は約5億円。それから24期連続で増収増益を続け、2013年6月期の年間売上高はグループ全体で約5684億円。2000年代にはスーパーの長崎屋やホームセンターのドイトなどを相次いで買収するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長してきたドンキだが、見方によっては現在、ひとつのターニングポイントに立っている。

古くからのファンにとって、ドンキとは「少し猥雑(わいざつ)で、でも自分にとってはとても楽しい店」というイメージだろう。しかし、実は近年できた“キレイめ”な新店舗には、例えばアダルトコーナーが設置されていないケースも多い(特に駅前系の店舗など)。

現在の企業規模や時代の流れからいって、「誰にでも受け入れられる店」になるという選択肢が基本路線となるのは当然のことかもしれない。しかし、その方向性の業態としては、近年出店ペースを上げているファミリー層向けの「MEGAドン・キホーテ」もある。だんだんと「猥雑さ」が受け入れられづらくなっている時代のなかで、グループの中心であるディスカウントの「ドンキ」は、今後どうなっていくのか?

オチマーケティングオフィス代表の生地(おち)雅之氏はこう分析する。

「一般論として、マーケットが大きいのはファミリー層、シニア層。目の前に広がるブルーオーシャンを見逃すことはできないと思います。ひとつの可能性として、旧来のファン向けにドンキの名前を付随させた別ブランドを立ち上げるという手法も考えられます。店の数が少なくても、ファンは集まるので売り上げは高いはずです」

カリスマトップが率いる企業は後継者を育成できない?

安田会長はまだ64歳で、今も現役バリバリの会長として君臨しているが、この問題は「ポスト安田体制」になった後も必ずついて回るだろう。そのとき、ドンキは現在のようなスピード感を保てているだろうか?

「カリスマトップが率いる企業はなかなか後継者を育成できない、という定説がありますが、より本質的にいえば、トップと部下との関係性が問題なのです。社長の総量を100とすると、たとえ部長が80でも、その80の中に『社長にはない20』が含まれていればいい。そういう組織なら、トップが抜けても新たな方向に広がっていくものなんです。

しかし、その逆の場合は問題です。下向きの円錐のように、トップの社長がすべてを把握し、部長の80も課長の60も、すべてが『社長の100』の枠の中に納まっているような企業は、先の広がりが期待できません」(生地氏)

長年、権限委譲という文化を徹底させてきたドンキの「ポスト安田体制」とはどんなものになるのか。そこにドンキらしい「楽しい驚き」があることを期待したい。

(取材・文・撮影/近兼拓史  撮影/五十嵐和博)